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レンタルベイビー・クライシス  作者: 凪
第3章 ペアレンティング・クライシス 
25/59

④離乳食デビュー、失敗⤵

 ――なんて言ったけど、ぜんっぜん簡単じゃなかった。

 美羽はベビーチェアや床に飛び散ったおかゆを拭きながら、げんなりしていた。空は手足をバタバタさせながら大泣きしている。

 おかゆと言っても、水っぽいおかゆのように仕立ててある作り物だ。一食ずつ、レトルトパックに入っている。それをレンジで人肌に温め、フーフーしてから空の口に運ぶと、顔をそむけ、スプーンを振り払い、食べようとしない。口に含んだと思っても吐き出すから、よだれかけもベタベタだ。

 おかゆはこぼれても害がない素材で出来ていて、使い捨てになっている。あまりにもリアルなのでちょっとなめてみると、嫌な味がしたので、慌てて口をゆすいだ。

 ――嫌がるとは聞いてたけど。ここまで激しく嫌がるなんて……。

 結局、諦めてミルクにすると、すごい勢いで飲み干す。

 ――1日に1回は離乳食を食べさせることになってるけど。どうしよ。ミルクだけじゃダメなのかなあ。

 ミルクをあげている最中に、流が「ただいま」と帰って来た。

「お帰り」

「離乳食、どうだった?」

「ダメ。ぜんっぜん食べようとしなかった。口に入れても吐き出しちゃうし、スプーンを叩き落とすし、諦めてミルクにした」

「ふうん。まあ、最初はうまくいかない設定になってるのかもね」

 流はテーブルに「これ、中華を買ってきた」と白い箱を並べだした。

「美羽、ここの五目あんかけ焼きそば、好きでしょ?」

「ありがと~、久しぶりに食べる」

 夕飯を食べている最中も、ベビーチェアをテーブルのそばに置き、空の手元には何も置かないようにしていた。

「ギョーザ、おいしいぞ。食べてみる?」

 流が空にギョーザを食べさせるようなジェスチャーをする。空がギョーザをつかもうとしたので、「おっと」と慌てて引っ込めた。

「何でも握ろうとするから、気を付けてね」

「すげえ、ここまで動くようになると人間っぽい感じがするよな」

 美羽がお風呂に入っている間は、流が空を面倒を見てくれたので、のんびり入れた。バスローブを羽織ってリビングに入ると、流が空をペンギンのぬいぐるみであやしている。空はキャッキャッと笑い声をあげている。

「かわいいでしょ」

「うん。こういう反応があると、構ってあげたいって気になるな」

 ようやく流も子育てに参加する気になったようだ。

 前回、Cランクになった後、流はランクアップするための講習会に渋々参加した。その1回きりの講習会でさえ出るのを嫌がっていたのを、美羽が説き伏せたのだ。

 講習会では実習であれこれやらされたらしく、「抱っこひもの使い方も教わったから、たぶんできると思う」と帰って来て報告していた。

 やらされ感しかないという感じだったが、空と接しているうちに自分からやってみたいと思えるようになったのかもしれない。

 ――流も成長したってことかな。

 笑顔で空をあやしている様子を見て、美羽は微笑ましく感じた。

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