③まだまだ、でした。
「――と思ったんだけどね。朝ご飯食べてる時に、静かだなあ~と思って見たら、ガラガラを口に突っ込んで取れなくなって、窒息しそうになってたの。顔を真っ赤にしてバタバタしてるから、ビックリしたよお。必死で取り出したら、大泣きするし」
ランチタイムに香奈と一緒にパスタを食べに来ていた。美羽は話しながら、アイスティーを一口飲んだ。
「窒息って……ロボットでしょ? スイッチが切れるとか?」
「うん、作動しなくなるんだって。そうしたら業者の人が来て、レンタルを継続するかどうかを判断するんだって。問題ないってなったら、また起動してもらえるの」
「へえ~、そんなシステムになってるんだ。細か~い」
「掲示板では、3回スイッチが切れた人が強制的にレンタルを打ち切られて、認可証をもらえなかったって嘆いてた。なんか、3年ぐらい待たないともう一度レンタルできないんだって」
「本物の赤ちゃんだったら、3回死んでたってことだから?」
「そう。その人は、みんなから責められてた。『なんで3回もスイッチが切れるような状況になるのか不思議。そういう人は親にならないほうがいい』って攻撃されて。その人は『まだ18歳だから、何をどうすればいいのか分かんない』って言ってたけど、それなら分かるようになるまで待てばいいって話だしね。そういう意味では、レンタルベイビーをやるのっていいのかもしんない」
「18でレンタルベイビーをやろうって思うなんて、それだけで偉いなって思うけど……」
「でも、遊び半分でやる人も結構いるみたいだよ。事前の講習会の段階で、そういう人を判別して、登録させないようにしようって話も出てるみたい」
「……なんか、やっちゃいけないことがどんどん増えていってる感じ」
香奈は複雑な表情になった。
「そうだけどね。でも、ある程度の制限は必要かも」
美羽はミートソースパスタをフォークに巻きつけて、口に運べずにいた。香奈はキノコのクリームパスタを頬張りながら、美羽の様子に気付いた。
「もしかして、食欲ないの?」
「うん。今回はそれほど疲れないだろうって思ってたんだけど。朝もそれほど食べれなかったんだよね」
「大丈夫? 倒れないようにね。今月は研修もあるんだし」
「そうなんだよね。新しいパーマを覚えなくちゃいけないんだよねえ。研修のこと、すっかり忘れてた」
「店長に相談したら?」
「うん、相談したら、新人の指導はしなくていいから、研修はなるべく受けてほしいって言われた」
「そっか。来月からメニューに加えたいって言ってるしね」
香奈が「デザートだったら食べられるんじゃない?」と薦めたので、自家製プリンを頼むことにした。
香奈に自分の分のパスタを「食べる?」と差し出すと、「もったいない」と半分ぐらい食べてくれた。香奈は細身だが、意外と食べるのだ。
「そうだ、今日から離乳食に挑戦しようと思って」
「へえ、そういうのもできるんだ」
「ちゃんとセットの中に離乳食も入ってるんだよ。最初は一口与えればいいだけだから、簡単なんだけどね」




