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It's fine day



It's a fine day.

People open windows.

They leave their houses.

Just for a short while.

They walk by the grass.

And they look at the grass.

They look at the sky.


It's going to be a fine night tonight.

It's going to be a fine day tomorrow...



ある晴れた穏やかな午後の日、金色に輝く広い草原に幼き我が子の手を引いた女性が美しい声で歌を口ずさんでいた。



『お母さん、そのお歌は何のお歌なの?』


『このお歌はね、神様に捧げるお歌なのよ、お母さんはこのお歌が大好きなの、坊やはこのお歌が嫌い?』


『ううん、僕もそのお歌大好き! だっていつも僕が寝れない時にお母さんが聞かせてくれるお歌なんだもん!』


『そうね、坊や、あなたは神様が唯一お母さん達に許してくれた大切な贈り物なのよ、とても愛しているわ、私の坊や……』



Lalalalala,lulululu...



その澄み切った歌声はいつまでも、心地良い風と共に少年を包み込み見守り続けたという……。





……ジリリリリ、ジリリリリ……



「……はい、もしもし?」


「ジョセフか? 俺だ、ジャンだ」


「……ジャン? 何だよ、こんな夜中に……」



酷い土砂降りの音が部屋中にも響き渡る真夜中、俺は親友のジャンに呼び出され家の前まで来ていたヤツの車に駆け足で近寄り、雨から逃げる様に助手席に飛び乗った。

熟睡しているところをたたき起こされたもんだから頭が痛くて堪らない。俺は濡れたコートをグシャグシャに丸め込むと後部座席に投げ込み、不機嫌な面をしてタバコを取り出してライターで火をつけた。



「オイオイ、俺がタバコ吸わないの知ってるだろ? 車の中は禁煙だぞ!」


「うるせえな、こんな夜中に叩き起こしておいて文句言ってんじゃねえよ! いつもいつも自分の健康ばかりに気を使いやがって、気持ち悪いヤツだな」


「小さい頃から母さんに健康には人一倍気をつける様に言われ続けてきたんだよ、タバコなんてもっての他だ、頼むから吸うなら降りた後にしてくれよ」


「……また『母さん』かよ、いい加減下らねえ……」



ジャンは学校で知り合った頃からヤケに健康に気を使っている若干オツムの弱い変わり者だ。タバコや食べ物にケチをつけては、いつも『母さんが、母さんが』と言い出すマザコン野郎。その度毎回付き合わされる友人の俺はいい迷惑だ。それくらいで死ぬ訳でもないのによ……。

そんなジャンが突然こんな時間に俺を呼び出した理由も、もちろん母親絡みの件だった。ジャンは数年前から進学の為に、田舎の実家の親元から離れて都会で生活を始めている。それからというもの、寂しさのあまり毎日電話で家族と連絡を取っていたらしいのだが……。



「……一週間前から、急に電話に出でくれなくなったんだ、手紙を送っても返事が返ってこないし、母さんはこの頃病気がちで寝たきりの生活らしいから何か心配だし……」


「でも、親父さんはまだ元気でピンピンしてんだろ? 電話や手紙に気づかなかっただけだったんじゃないのか? 何もそれくらいの事でこんな雨の中俺まで連れて様子を見に行く事も無いだろう?」


「それだけだったらいくら俺だってこんな行動起こさないよ! 心配で寝れなくなってたら、さっき突然父さんから電話がかかって来たんだよ!」


「何だよ、無事なんじゃないか? だったらいちいち見に行く必要も……」



俺が落胆して座席にうなだれると、ジャンは大真面目な顔をして激しく首を横に振った。その目には余裕が無く、今にも泣きそうな顔をしている。



「それがおかしいんだよ! しばらく黙ったまま何も言わないと思ったら、いきなり『お前達にはすまない事をした、母さんと共に旅立つのを許してくれ』って言い出してそのまま電話を切っちまって、その後何度も電話をかけても繋がらないんだよ!」


「……旅立つって、おいおい何だよそれ? 何かヤバい言い回しじゃないか? 凄く嫌な予感がするぞ……?」


「もう何が起こっているのか全然わかんないんだよ! 心配で心配で、父さん、母さん、無事でいてくれ……!」




俺達が乗る車は土砂降りの続く都会の街を抜け、寂れてぬかるんだ田舎道を走って抜けていった。そしまましばらく走って行くと、暗闇の中の広い草原の丘の上に一軒の古い家が見えてきた。どうやら、この家がジャンの生家らしい。



「さあ、着いたぞ! ジョセフ、早く降りて俺について来てくれ!」


「この雨の中をかよ? 冗談きついぜ、お前……?」



俺達は雨を凌ぐ為にコートを頭まで被り、水たまりの浮かぶ泥道を走って家の玄関まで向かった。周り一面は真っ暗で、唯一の灯りは空に響き渡る落雷の光だけだった。ジャンの実家の窓にも明かりが灯っていなくて、俺は何やら事件の予感を感じて一抹の不安を覚えた。



「……なあ、ジャン? 俺達が調べる前にまずは警察を呼んで待ってみるのも一つの手だぞ? もしかしたら強盗か何かが先に侵入してるかもしれないし、用心に越した事ないと思うぜ?」


「何言ってんだよジョセフ! 自分の家に帰ってきたのに何で用心なんてしなきゃいけないんだよ! それに、その万事の為に俺はお前を一緒に連れて来たんだからな、ちゃんとしっかりしてくれよ!?」


「俺は用心棒か!? ふざけんなよ、お前……!」



嫌がる俺のコートを無理矢理引っ張りながら家の玄関に辿り着いたジャンは、常に身につけていたキーホルダーから合い鍵を取り出した。



……ガチャガチャ、ガチャ……



どうやらカギはちゃんと閉まっていた様だ。誰かに侵入された気配もない。とりあえず俺は一安心した。俺達はカギを開けびしょ濡れのコートを玄関に置いて家の中へと入って行った。



「父さん、母さん、大丈夫かい!? 聞こえたら返事をして!?」



ジャンが叫んでも、真っ暗で何も見えない部屋の中からは誰の返事も返ってこなかった。中を照らすランプを探しに部屋の中に入った俺達は、家内に立ち込める鼻のねじ曲がりそうな不快な異臭に気づいた。



「うわっ、何だよこの臭い!?」


「……この腐ったような臭い、まさか!?」



何とか手探りでランプを見つけ持っていたライターで火を灯し、家の一番奥のキッチンに入った俺達は目の前の光景に一瞬自分の目を疑った。

真ん中に置かれたテーブルの上には息絶えた細身の中年女性が静かに横たわり、その上に椅子に座ったまま頭を突っ伏して倒れている初老の男性の首元は刃物の様なもので真横に切り裂かれ、まだ鮮血が床に滴り落ちていた。



「……お、おい、これってまさか……?」


「……父さん、母さん……!?」


「……う、うわぁ! し、死んでる、死んでるぞ、これ!?」


「父さん、母さん!! うわぁぁぁぁぁ!!」



目の前の突然の惨事に驚いた俺は一瞬パニックになりかけたが、それ以上に錯乱して泣き叫ぶジャンを抑える為に何とか我を取り戻し、すぐに家にある電話を取って警察に通報した。

一番近い場所にいる警官でもここまでは三十分くらいはかかるとの事。その間に、俺は両親の死に様を見て落ち着きを失っているジャンを何とか宥めようと必死になった。



「……何で、何でだよ!? 何で父さんと母さんがこんな目に……!?」


「ジャン、とりあえず落ち着けって! もうすぐ警察も来て調べてくれるし、なっ!?」


「……神様、こんなのあんまりだ、あんまりだよ、父さん、母さん……」



床に崩れ落ち泣きじゃくるジャンの肩をを支えながら、俺はもう一度死んでいるヤツの両親の姿を見た。辺りには父親の首から噴き出したと思しき血が撒き散らされていたが、どうやら母親からは出血している様子は見られなかった。

さっきのジャンの話の通り病魔に蝕まれていたのか、体はすっかり痩せこけていて顔色はすでに真っ白になっていた。もしかして、母親の死因は病死なのだろうか?

じゃあ、父親はその愛する妻の後を追って自らの首を切って自殺したのだろうか? 室内を何者かに荒らされた形跡も無いし、それならジャンに電話をしてきた父親の最期の言葉も辻褄が合う……。



「……何だ、これ?」



テーブルに置かれていた物を眺めていると、父親の首を切った時に使ったらしい血の付いたナイフと年季の入ったボロい時代遅れのラジカセが一台置いてあった。

俺は死体に触れないように恐る恐る手を伸ばしてそのラジカセを取り上げると、中に入っていたカセットテープを巻き戻して再生のボタンを押した。



It's a fine day.

People open windows.

They leave their houses.

Just for a short while.

They walk by the grass.

And they look at the grass.

They look at the sky.


It's going to be a fine night tonight.

It's going to be a fine day tomorrow...



「……綺麗な歌声だな、誰の歌だろう……?」


「……このラジカセ、それに、この歌……!」



流れてきたのは女性の美しい声で歌われた俺が聞いた事もない歌だった。しかし、ジャンはその歌声に聞き覚えがあるみたいで、突然立ち上がると俺からラジカセを奪ってスピーカーに耳を寄せた。



「……間違いない、昔の、あの時の母さんの歌だ……」


「……お前の母親の歌? それが何で、こんなカセットテープにわざわざ録音されているんだ?」


「……俺が小さい頃、寝つけない時いつも母さんが耳元でこの歌を歌ってくれたんだ、母さんの具合が悪くて寝込んだ時は、父さんがこのラジカセで歌を流して添い寝してくれたんだ……」



ジャンは溢れ出る涙を堪える様に目をつぶり、ウットリとその歌声に聞き惚れていた。確かにその歌声はとても透き通っていて暖かく、横で聞いていた俺も少し心に安らぎを感じていた。



「……母さん、大好きだった母さん……」



この夫婦は昔からこんな人里離れた田舎に住み、更に人目から避ける様に細々と生活を続けていたらしい。そんな二人の間に生まれたジャンには遊び相手がいなくて、いつも母親と一緒だったそうだ。

ジャンが俺みたいな友達を作って街に遊びに繰り出す様になったのは学校に通い出してからの事。それまでは、ずっと家の中で父親や母親の後を追って遊んでいたと本人から聞いた。



「……家の裏にはどうしても入っちゃダメだって言われた場所があって、イタズラ心で近づいてはいつも父さんに怒られていたっけ、そして、怒られて泣きじゃくる俺をいつも母さんは優しく抱き締めてくれて、この歌を聞かせてくれたんだ……」


「……ジャン……」


「……母さんは俺の顔を見て、いつも『普通の子みたいな暮らしが出来なくてごめんなさい』って泣いていたんだよ、俺はこの二人の子供に生まれてこれて十分幸せだったのに、いつかは立派な人間になって二人に親孝行するのが夢だったのに、何で、何でこんな事に……?」



再びジャンはその場に泣き崩れ、愛しい母親の歌声が聞こえてくるラジカセを強く抱き締めた。さすがに俺もその姿があまりに不憫で、ついつい涙腺が熱くなった。何でこんな酷い事になってしまったのか、神はいつも残酷な鉄槌を俺達に振りかざす……。



……ガタガタッ……



「……何だ!?」



俺達とジャンの両親の亡骸以外、誰もいないはずの天井から何か物音が聞こえてきた。確かこの家には天井に屋根裏部屋があって、そこを倉庫代わりに使っていたとジャンが話していたが……。



「……確かこの家って、お前の両親以外誰も住んでいなかったよな……?」


「……誰か隠れてる……!」


「……えっ? 何だって!?」


「間違いない! 父さんと母さんをこんな目に合わせたヤツが、屋根裏部屋に隠れているんだ! 許さない、絶対に許さない!!」



ジャンはテーブルに置いてあった血の付いたナイフを手に取ると、怒りに任せて廊下の天井にある隠し階段を下ろして屋根裏部屋に向かった。



「オイ! お前、そんな物持って何するつもりだ!? 仮にお前の言う通り誰かが潜んでいたとしても、それが両親を殺した犯人とは限らないだろ!? 死因も他殺がどうかもわからないのに、警察が来る前に勝手な事するなよ!?」


「どけよジョセフ! お前は自分の家族が死んだ訳じゃないからそんな事が言えるんだ! 俺のこの気持ち、お前になんてわかるもんか! 邪魔するんだったら、お前も巻き添えにしてやるぞ!!」



その時のジャンの形相は今まで見た事が無いぐらいに怒りで変貌し、俺はその場に尻込みして止める事が出来なかった。ジャンはこちらを振り返る事無くランプで足元を照らし、階段を上っていった。



「……うわっ! 何だよこの臭い、さっきより……!」



その時、俺は部屋中に立ち込める異臭が死体のあるキッチンとは別の場所から漂ってきているのに気づいた。確かに、あの夫婦の死体は腐っている形跡は無く、まだ死んで間もないくらいだった。



「……じゃあ、この臭いはどこから……?」



次の瞬間、俺はさっきジャンが喋っていた話の内容を思い出した。父親から近寄る事を許されなかった家の裏のある場所、それが気になった俺は外に飛び出して玄関の裏側に回った。



「……もしかして、これか……?」



家の裏には狭い階段があって、下の地下室へと通じていた。入り口にある鉄の扉はすでに錆びきっていて、ドアノブは外れ指が入るくらい開いていた。



「……うげぇ! 何だこの臭い!」



中に入ると、まるで肉か卵が腐った様な酷い悪臭が立ち込め、足を伸ばした床はグチャグチャに湿っていた。

俺は口と鼻を押さえながらどうにか燃えそうな布を手に取り丸めて火を付けると、真っ暗な部屋に向けて辺りを照らした。


そこで俺は、決して見てはならない禁断の世界を垣間見てしまった。



「う、うわぁぁぁぁぁ!!」



その地下室の中には、ブルーシートにくるまれた『何か』が四体転がっていた。一体それが何なのかはハッキリとわからない。しかし、それが決して公には出来ないものだとすぐに悟った。

ブルーシートの隙間から覗く人の顔の様なもの。でもそれは、人間のそれとはまるで違う形と並び方をしていた。その中には腕や足が人間の正しい形とは異なる姿になっているものや、何の動物かわからない虫の様な形をしているものなどもあった。



「……神よ、何て事だ……! そうだ、ジャン! 大変だ、ジャンが!!」



恐怖と絶望の中、火の付いた布を持ったまま地下室を逃げ出した俺は、そのまま家の中に入ってジャンを捜した。もしこんな事がジャンに知れたら、きっとヤツは狂い出して何をしだすかわからない……。



「ジャン! まだそこにいたのか! すぐにこの家から離れよう! 後は全部警察に任せて……!」


「……あ、あ、ああ……」




ジャンは屋根裏部屋への階段を上りきった場所で、部屋の中をランプで照らしたままその場に立ち尽くしていた。その視線は部屋の中一点を見つめ、顔色は青ざめて膝はガタガタと震えていた。



「……嘘だ、嘘だよ! こんなの嘘だ、嘘だぁ!!」


「……オイ、お前、何を見てるんだ? 一体、部屋の中に何があったんだよ!? おい、ジャン!?」


「俺は、俺は、うわぁぁぁぁぁ!!」



突然、頭を抱えて狂乱したジャンは階段から転げ落ちると、手にしていたランプを振りまして俺が持っていた火の付いた布を弾き飛ばした。その火は廊下の床に燃え移り、ジャンのランプも壁に当たって飛び散りその火はジャンの服に燃え移った。



「熱い、熱い!! うぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「ジャン、火が!! どこへ行くんだ!? ジャン……!!」



火だるまになったジャンは、熱さにもがき苦しみながら両親が眠っているキッチンに向かって行った。俺は何とかジャンを助けようと後を追おうとしたが、周りを火に囲まれて先に進む事が出来なかった。



「ジャン! ジャャャャャン!!」



あっという間に火の手は家中に広まり、俺はそこから逃げ出すだけで精一杯だった。何とか命からがら外に出て後ろを振り返ると、炎はすでに屋根の上まで達していた。



「ギャギィギィギィィギィィィィィ!!」



燃え盛る家の中から、まるで獣の様な身の毛のよだつ叫び声が聞こえてきた。これが、あの優しくて気弱だったジャンの声なのだろうか? 俺にはとてもそうとは思えなかった……。



「オイ、君! 君が通報した本人なのか!? 人が死んでいると聞いているのに、何で火事が起こっているんだ!? 一体、何があったんだ!?」



やっと駆けつけてきた警官が、呆然と立ち尽くす俺の肩を掴んで訪ねてきた。もう一人やってきた警官が必死で消火活動をしようと試みたが、もうすでに手の施し様の無い状態になってしまっていた。



「……友達が、友達が、まだ中に……」


「駄目だ! 俺達だけじゃどうにもならない! すぐに応援を呼んでくれ!!」


「本署、聞こえるか!? 火事だ、火事が発生している! 大至急、大至急消防隊をこちらに……!!」



俺は、何も出来なかった。土砂降りの雨を霧に変えながら燃え崩れていく家を見て、自分が見てしまったものを忘れようとするだけで精一杯だった。この悪夢の様な現実が、どうか跡形も無く燃え尽き、浄化されるを願って……。


「……神よ、我を我らを許したまえ……」





「……君の証言通り、出火場所は廊下とその隣りの部屋だという事が捜査の結果で解明されたよ、どうやら君の言葉に嘘は無いようだな」



あの後、俺は殺人と放火の容疑でしばらくの間警察に拘束された。しかし、現地の物証や残された遺体の損傷具合から証拠不十分でその疑いは晴れ、何とか釈放される事が許された。



「……君を疑った事は私から謝らせてもらうが、これも警察の仕事なもんでね、しかし、友達はとても残念な事になってしまったね……」


「……はい……」


「それと、友達のご両親は血の繋がった兄妹同士の関係だった事も捜査の上でわかったよ、禁断の愛で結ばれた二人は、その過ちによってこの世に産まれてきてしまった『彼ら』を地下室に隠して必死に周囲の目から守っていたのだろう、もちろん、この事実は君と私達警察だけの極秘事項にするけどね」


「……お願いします、ジャンの為にも、この事は誰にも言わないで下さい……」



真っ黒に焼け落ちた家の屋根の下から、ジャンは変わり果てた姿で発見された。その傍らには被い重なる様に倒れていたになっていた両親の亡骸も見つかり、彼らは近くの村人達の手でその家の跡地に手厚く葬られたそうだ。家族仲良く一つの墓に、あの地下室で謎の焼死体として発見された『ジャンの兄弟達』と共に……。



「……しかし、君の証言とは食い違う点が一つだけあるんだがね……」


「……えっ? それって、何ですか!?」


「君は確か、地下室で四体の遺体を見つけたと言ったね? しかし、あの現場で見つかった遺体は全部で八体、君の友達とそのご両親を足しても一人多いんだよ」


「……そんな、そんなバカな!? 俺は確かにあの時四体の……!」


「他に誰か人がいた記憶は無いか? 例えば倉庫とか、天井裏とか……?


「……! 天井裏……!!」



もしかして、あの時ジャンが屋根裏部屋で見て驚愕して狂ったのは、あの時俺が燃え盛る家の中から聞こえた獣の様な恐ろしい叫び声は、まさか……?



「……『何か』がそこにいた? そして、生きていた……?」



俺とジャンの確かな思い出を語ってくれるものは、昔に撮った数枚の写真となぜかあの場に一つだげ無事に焼け残ったあの古いラジカセだけになった。俺は今、せめてもの償いとしてそのラジカセのカセットテープの歌を流しながら、一家が眠る墓の前で神に祈っている。

どうか彼らが愛情の果てに行ってしまった過ちを許し、安らかに天に召される事を。そして、今日の様な穏やかな晴天がいつまでも続く事を……。



It's a fine day.

People open windows.

They leave their houses.

Just for a short while.

They walk by the grass.

And they look at the grass.

They look at the sky.


It's going to be a fine night tonight.

It's going to be a fine day tomorrow...



ー完ー

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