魔法少女は食人鬼
誤字脱字があったらごめんなさい。報告してもらえると嬉しいです!
早速リモコンと、バッグの中に入っているとわかっているペンケースを入れ替える。
「おお!」
リモコンが消えて代わりに俺のペンケースが出てきた。
バッグの中を見るとリモコンが入っていた。
この能力、やはり便利だ。
盗人の極致だけはある。もう万引き犯よりもタチが悪い。
「なんかスキルって言うぐらいだからなんか、攻撃手段もあればかっこいいんだけどなぁ」
でも、いいんだ。日差しを隠していた雲が少し流れたような、そんな瞬間。
俺の人生に革命が起きたんだ。スキルというよくわからない、だが夢と本物の希望に溢れた力。
「これなら俺、頑張っていける気がする」
よしっ!風呂入ってご飯食べてスキルについてもう少し調べるか!
✕✕✕
「なぁ説明書さん、どうやったら他のスキルをゲットできるの?」
『条件をクリアすることで得ることが可能です』
「どんな条件があるの?」
『次は杉下恵と手をつなぐ、です』
・・・・・・。
「えぇ!?なんで手を繋ぐの!?」
少し声が大きくなってしまった。下に聞こえてしまっただろうか。
『それがスキルを得る条件です。理由などありません』
理由がないって、はぁー。今日はたまたまお近づきになったけど、普段はまともに喋らないのに手を繋ぐなんてさらに無理ゲーだよ。
「くそ、どうすればいいんだ」
先行きが見えてすぐに道を塞ぐなよぉ!
✕✕✕
徹夜まではしなかったが、布団に入って作戦を練っていた。
別に時間制限があるわけじゃない。ならチャンスがあれば手を繋げばいい。マイムマイムとかで隣にならないかなぁー。
俺が考えてきた作戦は三つ。
それを今日披露してみせよう。
「あ、渚君!」
通学路を歩きながら俺が頭の中でシュミレーションしていると、電柱のそばで恵ちゃんが立っていた。
ぴょこぴょこと歩いてきて俺の横についた。
「お、おおおはよう恵ちゃん!」
よし!人間関係の基本である挨拶は言えたぁああああ!
「おはよう渚君!僕渚君を待ってたんだっ!一緒に行こう!」
え、俺の事待ってた?今そう言ったよね?呪ってたわけではないんだよね?
「お、おう!」
なんとか返事できた。
ふう、今日もいい一日だぜ!
って油断しちゃダメだ!
なんか心なしか恵ちゃんの俺に対する好感度が高い気がする。気のせいだったらビニール袋の中に顔を入れて窒息死したいけど、いやしたくないけど、俺の気のせいかな?
「ねぇねぇ渚君。昨日のお礼で僕ね、クッキーを作ってきたんだ!」
そう言って手に持っていたバッグから、可愛いデコレーションがされた袋を取り出した。
「あんまり料理とか得意じゃないんだけど、よかったら食べてくだしゃい!」
恵ちゃん可愛い。もうめぐかわいい。
噛んだことにも気づいてないのか。ああ、そんなに一生懸命俺のことを思ってくれていると勘違いすると、手汗がすごくなる。
待って、俺多分カッパより手汗かいているよ今。吹いても吹いても取れない。
「あ、ありがとう」
「ど、どういたしまして。あ、あの、食べるのは帰ってからにしてね!」
彼女の可愛い手から俺の手へ譲渡される。その時にわずかに手がちょこっと触れた。
これって、手を繋いだことにはなりませんか説明書さん!
『ならないです。童貞臭いんでやめてください』
おい、童貞関係なくないか?てかいつからそんなに口が悪くなったの?
『変わりませんが、何か?』
えぇ、なんで怒ってるの。
「じゃ、じゃあ渚君いこ!」
「あ、ああ!」
なんか青春楽しんじゃってます!
✕✕✕
学校の前まで一緒に歩いていたら当然周りの人間に見られる。視線でいじめられたわけではないが、おそらく彼女のことを好きな人達の目線はきついものがあった。
「恵ちゃん、俺ちょっと寄るところがあるから先に教室に行っておいて」
「え?わかった!今日も頑張ろうね!」
「おう!」
彼女との会話も違和感なくできるようになった。
俺は別に用事はこれと言ってなかったのだが、教室の中でまであの視線を浴びるのは少し嫌だった。
なんとなく飲み物が欲しいなと思い、自動販売機に向かう。
「なーぎさっ!久しぶりだな!」
「連絡は取り合っているだろ。おはよう鏡花。今日から復帰か?体の調子は大丈夫か?」
本堂鏡花、女の子みたいな名前だが、れっきとした男。金髪で長い髪を後ろに持っていき、オールバック気味にしている。
俺の唯一無二の親友だ。クラスも二年連続同じで、新学期で顔を合わせるのは今日が初めてだ。
「悪い、心配させた!ちょっと風邪ひいてたんだけどよ、お前一人で寂しかっただろ?」
「当たり前だろぉおおお!お前友達の作り方教えろよぉおおお!」
「あ、ごめん。ガチ泣きしないで」
鏡花がガチで引いていた。てか俺を可哀想な奴みたいな目で見ていた。
「それより渚、お前どうして杉下さんと一緒に登校してたんだよ」
鏡花が俺の耳元で小さな声で聞いてきた。
「実は昨日少し話す機会があってさ」
昨日のことで言えることは少ない。この程度で納得してほしいなぁ。
「そうか、お前ついてるなぁ。オレも杉下さんと話したいなぁ」
鏡花はイケメンなのに、チャラチャラした雰囲気と話し方が女の子をあまり寄せ付けない。でも陰での人気はそこそこある。前に鏡花のことが好きみたいな女の子がいるって聞いたし。
俺はコーラを買って、鏡花と一緒に教室に向かった。
✕✕✕
今日から昼ご飯は鏡花と一緒に食べる。場所は食堂だ。
「今日はカレーライスにしようかな」
「オレはうどんかなー」
食券を買って、俺達は空いている席を探す。
「んー、空いている所がないなー」
「窓際空いてるぜ?あそこにしよう」
「オッケー」
学校で喋りながら呼吸するのが久しぶりすぎて呼吸の仕方を忘れそうだ。
窓際の席は、中庭が見えて日差しが気持ちいい。夏は暑いんだけどね。
「うん、ここのカレーライス安くて美味しいなぁ」
「うどんも美味しいぞ?そうだ、オレちょっと面白い噂聞いたんだよ」
「ん?何?」
「実はな、この街に人を食べる魔法少女がいるらしいぞ?」
「っ!」
魔法少女、という単語に俺は思わずドキリとした。
人を食べる魔法少女、普段の俺なら全然信じないのだが、魔法少女と言っていた女の子を知っているから、簡単に否定できない。
「そ、そうなんだ、人を食べる魔法少女なんて信じられないなー」
「だよなぁ。でも、人を食うかはわからないけど魔法少女みたいな姿を見たことがある人が、ちらほらいるらしいぞ?」
「コスプレなんじゃない?痛々しい人ってたまにいるじゃん?」
「まあ、そうだよなーオレも信じてはいないんだけどさ!」
人を食べるのか、でも彼女は人なんか食べない。俺は信じてる。
✕✕✕
「渚悪い!オレちょっと用事があるから、先に帰るな!」
「おう!じゃあまた明日!」
帰りのホームルームが終わった後、鏡花は走って帰ってしまった。
朝、恵ちゃんと話してから、学校では一度も話せてない。
過信してはいけない。俺が動かなければ彼女とは話せないし、彼女から俺の所に来るなんてありえないんだ。
彼女は今日も早く帰ってしまったようだ。すでに教室からいなくなっていた。
昼に聞いたあの噂を思い出してしまう。人食いを行う魔法少女、彼女が人を食わないと俺は信じているが、どうしても頭の片隅によぎってしまう。
今日もやることないし、早めに帰ろう。
玄関を早々と抜けていつもの帰り道を歩く。
「そうだ、恵ちゃんから貰ったクッキーがあったや」
バックから取り出して、綺麗なハート型のクッキーをいただく。
今日の夕方の空模様は綺麗だなぁ。
「美味しいな」
簡単な感想しか言えないけど、本当に美味しい。
もう一度空を見ると、今度はいきなり暗くなった。
「え?」
「グチャグチャリ」
「っ!」
コスプレをした女の子が、青色の髪の一部が赤く染まっている。
臭い、血の匂いがこちらまで漂ってきた。
おかしい、周りはいつの間にか静かで人の気配を感じない。家の中にすら人間がいないような、そんな雰囲気。
この世界に俺とコスプレをした女の子しかいないようだ。
「あれれぇー?固有結界の中に入ってきちゃったんですかぁ?」
綺麗で整っている女の子の目なのに、怖い、怖い、怖い。
女性のお腹をグチャグチャと漁っている。内蔵を引っ張り出して美味しそうに食べている。
流れ出てくる血を絞り出して俺でいうコーラのように飲んでいる。
「かはっ!はぁはぁ」
呼吸することを忘れていた。何かに縛られていたかのようだ。
「逃げないんですかぁ?心が強いんですねぇ?」
「はは!」
「何を笑っているんですか?」
思わず笑ってしまった。
人食い魔法少女。それが恵ちゃんじゃなかったんだ、これを喜ばなくてどうする?
だが、彼女の怒りをもしかしたら買ってしまったかもしれない。
「うっ」
彼女の殺気みたいなものを感じた。殺気なんて感じたことないのに。
吐きそうだ。誰なんだよあの死体。なんで殺したんだよ。なんで食べるんだよ。
「あなたが、最近人を食べるって噂の、魔法少女ですか?」
「そうだね、私は人を美味しくいただくよ?」
そうか、そいつは気持ち悪い。
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