ボーイミーツガールはスキルの味
誤字脱字があったらすみません。報告していただけると嬉しいです。
暗闇の中を走り抜けるが、相手は俺のことが見えているのか、電撃が飛んでくる。
俺は、跳躍してなんとか避ける。電撃が当たった所は、えぐれて焦げている。
「まだ逃げますの?もう死んでもよろしいのでは?」
「うるせぇなぁ。糞魔法少女が」
俺はまだ諦めない。
✕✕✕
二千十八年、四月。長谷川渚である俺は、独りぼっちで周りに認知されない陰キャになっていた。
別に俺自身、誰とも喋らなかったとかじゃない。これにはちゃんとした理由がある。
一週間ほど、風邪を引いていたんだ。マイコプラズマ肺炎。お陰で出席停止になり、俺は新学期早々友達関係ができつつある教室に放り込まれた。
結果、ちょっと喋りかけたけど、仲良くなることは難しかった。
一年生の頃は友達が少しいた。でも二年生になってから同じクラスで友達のやつが一人しかいないのだが、そいつはここ二日休んでいる。
放課後になった。今日も誰とも喋らず、昼ご飯は適当に食堂に行って食べ、後ろの方の席で皆を眺めていた。
学校が楽しいか?と聞かれれば楽しくはない。なんなら辛いものがある。
俺は運動神経はそこそこいいと思っている。筋トレとかは毎日してるし、体力もあると思う。勉強はやらないタイプ。テスト前にやって少し良くなるのがいつもの流れだ。
放課後何しようかな。部活に入っていない俺は暇だ。二年生は大半が部活に入っていて、帰宅部はあまり多くない。
「帰るか」
別に無理しなくていいんだ。友達なんて無理して作るものじゃない。
帰り道、俺の学校以外の学生がちらほら通るのが見かける。友達と帰っている者達もいれば一人で帰っている者もいる。心がわずかに休まる。
そうして心を休めていると、目の前に可愛い女の子がいた。
その子の名前を俺は知っている。学校で人気のある女の子、二年生の杉下恵だ。恵ちゃんは学校全体でも三本の指に入る校内の代表、アイドルみたいなものだ。ショートヘアでメイクはほぼしていないらしい。それなのに大きな目と長いまつげが魅力的で、おっぱいが丁度いい大きさだ。
俺は彼女とクラスが二年連続一緒だ。だから知っているが、彼女は俺と同じく部活にも、生徒会にも入っていない。
神は二物を与えずと言うが、彼女の顔はとても可愛い、胸がそこそこある、頭も一桁だし運動神経もよかったはず。神は女の子には甘いらしい。
彼女は俺よりも早く帰っていたのか。俺は帰りのホームルームが終わってから間髪入れずに帰っているつもりだったのだが、彼女は本気で早く帰りたいタイプなのだろうか?
帰る道は一緒のようだ。彼女を少し観察していると、彼女とすれ違う人の何人かは彼女を二度見することがわかった。
なんかストーカーみたいだけど、道が一緒なら仕方ない。俺は彼女と同じくらいのペースで間隔をあけて歩いた。
すると、彼女に向かってボールが飛んできた。
あ、危ないかな?と思ったが彼女は足で上手くサッカーボールをトラップし、蹴ってきた子供達の方へちょうど届くような緩やかなパスをした。
恵ちゃん、運動神経いいなぁ、と思っていると、横からバイクがものすごいスピードで曲がってきた。
「危ねぇ!」
俺はバイクが曲がってきた瞬間からなんとなく体が予想していた。一歩目が格段に早く、気づいたら彼女を抱きしめて思いっきり飛んだ。
彼女を傷つけないように俺が下に来るように体を入れ倒れた。
「んむ!?」
「ん!?」
倒れた瞬間、たまたま、本当に偶然、彼女と唇が思いっきり触れた。
チューをしてしまった。勢いがすごくて歯が当たった。
『ユニークスキル、【盗賊の極意】を取得しました。能力説明を開示します。【盗賊の極意】派生スキル、【盗人の極致】を取得しました』
「え?」
何これ、情報量が多すぎて何かわかんない。待って、頭の中に何かが響いた。ユニークスキル?ユニークスキルってユニークスキル?ああわかんない!
そうだ、俺彼女とキスしてた!?
「ごごごごめん!」
「こ、こちらこそすみません!危ない所をありがとうございます!って渚君!?渚君だったの!?」
ああ、俺のこと知ってくれてたー。
なんか口元にキスの味が、うん、ないけど。感触は未だに覚えている。
「恵ちゃんごめんね!?なんかこう、俺なんかが」
「いいの全然!大丈夫だよ」
本当に大丈夫なのかな?顔赤くして声小さくなったけど。
恵ちゃんが自分の唇に指を当てている様はなんだがエロさを覚える。
「すみませーん!大丈夫ですかー!」
バイクに乗っていた人が来たようだ。
✕✕✕
バイクの女性は丁寧に謝ってきたので、今回は許すということで話が終わった。
俺は、恵ちゃんを家まで送る使命、もといラッキーを得た。
隣に恵ちゃんがいる、緊張しないわけがない。
話さない時間が長く続く。でも、そんな時間ですら心地よい。
「恵ちゃんって、なんで部活入らなかったの?」
「えぇ!?」
そんな驚かなくても、と思ったが俺もかなり時間が空いて質問したから驚いてしまうのも無理がないか。
「えーとね、その、助けてくれた渚君だから正直に言うけど・・・・・・」
何故か少し間ができた。そんなに言いたくないなら言わなくても、別に一生懸命話を振ろうとして考えた結果だから真面目に受けなくてもいいのに。
「ぼ、僕、魔法少女なの!」
「へぇー!そうなんだ!」
えぇ?どうなんだ?
待って待って、今日は思考が追いつかない日だ。
これは冗談?ではないのか?見てみろこの綺麗で純粋な眼を。これで嘘をついていて、俺を騙そうとしているなら喜んで騙される。
ここは彼女に無理矢理でも話を合わせよう。
「すごいね魔法少女なんて!俺初めて見たよ!」
「・・・・・・え、驚かないの?」
「うん!だって恵ちゃんは嘘つかないでしょ?」
嘘です、めっちゃ驚きました。
でも、君を疑うなんてできない。君は一年の一番最初に話しかけてくれた恩人だから。
「渚君ありがとう!僕全然信じてもらえないと思ったからさ!あ、でも皆に言ったら、めっ、だよ?」
可愛いよぉおおおお!!
その指食べちゃっていいですか!?
「喋んない!もう口が裂けても喋らない!」
「えへへ、誰かにこの秘密喋れて少し楽になったなぁ」
「どうして?」
他にも仲間の魔法少女はいないのかな?
「それはね、内緒だよ」
その可憐な姿から、少し悲しみの表情が見えた。何があるのかは俺にはわからないが、これ以上は聞けなかった。
✕✕✕
「ただいまー」
彼女を送る間に不良に絡まれるという自体にはならなかった。
「さて、本題はまだ残っているんだ」
そう、頭の中に響いた声。ユニークスキルを取得しましたという声だ。あれは一体なんだったんだ?
『それは私の声です』
「おぉい!」
びっくりしたぁ。なんだこれ。
『私は最初の説明担当の天使です。ユニークスキルなどの説明をさせてもらいます』
「は、はぁ」
説明担当ね。なんで声が聞こえるのだろう。不思議だなぁ。
『まずユニークスキルとは、この世にあるスキルの中でもあなたしか持ちえないスキルです。そして今回あなたが目覚めたのは【盗賊の極意】、これは盗賊の極意ならではのスキルを派生して取得できる能力です。盗賊の極意単体でのスキル性能は、常時盗賊派生スキル取得の簡略化、及び全ての生物からのエネルギーを僅かに奪います』
俺は、そんな夢みたいなスキルをゲットしたのか?本当なのか?そうなら今すぐ使いたい。早く使用したい。
でも【盗賊の極意】はゲームで言うパッシブスキルみたいだ。ずっと使用されているのだろう。
「他に何かあるのか?」
『他には先ほど取得された、【盗人の極致】です。これは目視できる範囲で、手のひらサイズで同じぐらいの大きさの物の位置を入れ替えることが可能です。また、入れ替えた後、任意の人は数秒の間、入れ替えた後の物を入れ替える前の物として認識します』
これはいい!これさえあればリモコンを手に持ってこれる!
「触れてなくてもいいの?」
『目視していれば大丈夫です。また、目視していなくても近くにあるとわかっているならば使用が可能です』
便利だ。かなり便利、早速使いたい。
「【盗人の極致】」
俺は性能を調べるために早速実験を開始した。
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