御月様のはじまり
高校3年の夏、18歳を迎えた私は夏の蒸し暑さの中、塾からの帰り道を1人歩いていた。
「本当にあっつい!」
夜道ということもあり人通りは少なく、車もあまり走っていなかった。
そんな時だった。今思えば、あまりにも不自然だし、謎が多いと思えるが、蒸し暑い空気の中急に風が吹き出したかと思えば目の前には1匹のうさぎがいた。
そのうさぎはキラキラと星を散りばめたように光っていて、不思議にも目が青色だった。一瞬、目が合ってような気がして、すぐさまうさぎは道路の向こう側へと渡ろうとした。
「あ!ちょっと!」
私に驚いたのか、うさぎは逃げるように赤になった横断歩道を渡った。
「危ない!!」
うさぎが飛び出した瞬間、車が走ってきた。夜道だからよく見えないのかもしれない。私は反射的にうさぎに向かって飛び込んだ。
バコンッと嫌な音がする。
その後のことはあまり覚えていない。
ただ、私の腕の中のうさぎが怪我をしていないかだけが心配だった。
何か声が聞こえる。
あと救急車のサイレンの音、それから、眩しい光が瞼を突き抜ける。
私は目も開ける力も声を出す力もなく、ああ私はこれから死ぬのかな、と思った。
(お、おかあさん、おとうさん!)
心の中で叫ぶももう意識が遠のいていく。
(まだ、まだ、死にたくない!怖い!)
次に気がついたのは、真っ白な空間だった。
「…どこ?ここ」
まるでぷかぷか浮いているような感覚で、辺り一面真っ白な世界だった。
(うさぎは、どうなったんだろう。私死んじゃったのかな、もしかしてここは天国なのかな)
不意に涙がこみ上げる。
私は一人っ子で両親と3人暮らし、私が居なくなったら両親はとても悲しむだろうな。
ちよちゃんも泣いちゃうかな。
今日、やっぱり一緒に帰ればよかった。
幼馴染のちよちゃんは1番の親友で、とても仲が良かった。将来も同じ大学行こうって話をしたくらいで、いつも塾の帰りは一緒に帰っていた。
ただ、今日は課題とななんとかで、先に帰っててと言われ先に帰ってしまった。
私はその事をひどく後悔した。
でも、うさぎを助けたことに関してはあまり悔いはなかった。
突然眩い光の粒が私を包み込んだ。
また、私は意識を失った、