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ロケット

作者: ひつじ

最初に投稿したやつの元になったネタの一つです。

暗い高校生の思い出です。

 高校生の時とても好きになった子がいる。文化祭前にある部の手伝いを頼まれた。彼女はその部にいた後輩。一つ下の女の子。

 可愛かった。もちろん自分主観の話。他の人がどう思っていたかなんてわからないけど、とてもとても可愛かった。いうところのストライクゾーンのド真ん中。好きとは違う感情だったかもしれない。愛玩動物を可愛いと思うのと似ているような。

 その子は私のことなんて全く気にもかけない。それどころか煩わしく思っていたようだ。明るく社交的な子ではなかったので、勇気を振り絞り話しかけても楽しく会話が弾むなんてことはない。仲の良い同級生と二人でいる時は笑顔を見せる。その笑みを見ることを楽しみに、それだけを楽しみに学校に通い、放課後を待ち望んだ。たとえこちらに向けられるそれでなくとも。遠くから見ているだけであっても。

 ある日その笑顔がまっすぐこちらに向けられた。それは私自身にだけにそそがれたものではないが今この瞬間は私へだけの満面の笑み。

 身体に力が入らない。目が潤む。指が震える。緊張し過ぎていつも通りのことができない。でも、求められた任務は果たさなければならない。私はその部の集合写真を撮ることを任されていた。


 この上ない無防備な笑顔。口角を持ち上げ微笑む少し薄い唇。そうしてできる大きなエクボ。さらさらと秋の風に靡くセミロングの内巻き髪。こちらに向けられた丸く大きな双眸。ファインダー越しの視線を受け止めきれず2歩後ろへ下がる。そして震える指でこの光景を切り取った。この瞬間を切り撮った。


 数日後プリントしたその写真を、そこに映っている全員に配ることになっていた。その日は学園祭が終わり手伝いとして部室に顔を出す最後の日。彼女にも写真を渡し「ありがとう」とお礼を言われたのが最後の会話になった。その後も適当な理由をつけ部室へ行くこともできたのだけれどそれも、私は手伝いのおまけ。それと行けない訳が他にもあった。彼女とはそれ以来話す機会もなく、学年が違うため学校内で見かけることもほとんどないまま私は卒業した。


 私の手元に一つだけ残った彼女との思い出の集合写真。一緒に映っているわけではない集合写真。彼女が小さく写る集合写真。

 焼き増しした写真から彼女だけを切り抜きキーホルダーのロケットに入れた。もちろんピタリと収まる。計算通りのサイズに自分でもちょっと驚いた。


読んで頂き、ありがとうございました。

前に描いた「この写真、撮ったの誰?」の中では、主人公を救ってくれる最後の一筋の光ように書きましたが、現実はこんな感じでした。

本当に暗い高校生ですね。自己嫌悪に陥ります。

思い出は思い出。変えられない過去です。

でも、勝手に描く小説の中ではどうにでもなります。

あっちも暇があれば読んでください。

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