EP-01 Eternal Friends
大幅に内容を修正して再投稿です。
ぜひ、よろしくお願い致します。
EP-01 Eternal Friends
※1
僕には、病気で死んでしまった友達がいた。
出会ってから3年。
不治の病によって、この世を去った。
死因は、『結核症と同時に発症した喘息』。
咳をするたびに血を吐いてしまう病気。
不治の病といわれた結核症と同時に喘息の発作を起こし、苦しみながら息を引き取った。
ときどき薬を飲んでいたようだが、二つの症状が同時に発症したことで、その弱い体は耐えられなくなってしまったのだ。
それも、もう8年前のことだが……。
あの日のことを、僕は一度だって忘れたことはない。
あの一瞬が、短くて……長かった……。
永遠にも感じられる一瞬。
もし、あの時の僕に何かできていたなら……。
零れ落ちる無数の涙。
僕は何もできなかった。
もし生きていたならば、もう17歳か……。
僕は悔しかった。
そばにいながら何もできなかったことが。
せっかく出会うことが出来たのに。
同じ夢を持つ仲間に出会えたというのに。
今でもあの日の約束が頭をよぎっていく。
『いつか、一緒に世界の……』
君はあの時、何を言おうとしたの?
いや、本当はわかってるよ。
わかってる……。
「もし、生まれ変わってまた会えたなら、その時に、詫びさせてほしい」
絶対に、忘れないから。
もし、二度とで会えなくても、この世にもういなくても、僕たちは、友達だ。
いや、違う。
僕たちは……。
僕は拳を強く握りしめた。
※2
雨上がりの帰り道。
八年前は、いつも左にあの子がいた。
水無月 唯。
唯はもういなくなった。
けど、唯との約束はまだ生きている。
僕の中に、あの日の約束が生きてる。
もう、果たせなくなった約束。
それでも、果たせなくても構わない。
約束は、交わした事にこそ意味があるから。
※3
家に帰り、自室へと向かう。
すると突然、インターホンのボタンが押された。
モニターに映るのは、赤い服の男。
赤い彗星?
なんか見覚えある仮面つけてるし……。
一瞬目を疑ったが……。
身長は、170㎝程度、と言ったところか……。
何の疑いも持たず、ドアノブに手を掛ける。
「はい」
玄関の扉を開けると……。
次の瞬間、地面に赤黒い花が咲いた。
痛……っ!!
何が……。
腹部に何かを突き刺したかのような痛みが襲ってきた。
「ぐ……ふっ……!!」
恐る恐る心臓付近を見下ろすと……。
眩しいほどに銀色に輝くナイフが突き刺さっているではないか。
僕はそのまま地面に倒れる。
力が抜けてい……く……。
そん……な……。
意識が……朦ろ……う……と……。
「謀ったな……シャア……ッッッ!」
次の瞬間目の前が真っ暗……ではなく、真っ白になった。
気がつくと、何もない真っ白で無機質な部屋の中にいた。
いや、部屋なのかすらもわからない空間にいた。
出口がないのだ。
「ここは……」
死んだのか?
いや、心臓にナイフ刺されて死なない方がおかしいか。
「しかし、何もないな……」
こんなところでどうしろって……。
まさかとは思うが、この○ばみたいに駄女神さまとか出てくるんじゃないよね……?
そんなことは……ない……よ、ね……?
いや、まさかね。
この空間をいろいろと見まわしてみたが、特に何もなかった。
この空間は一体何なんだろう。
死んだらこう言うところに連れてこられるのか?
もしそうだとすれば、唯もそうだったのか?
ここに来たのか?
もし仮にそうだとしたら、ここは一体何のためにあるのか?
まさか……。
死人は皆こういう空間で死神、あるいは天使の迎えを待つのか?
……。
なんだろう、あれ?
今まで何もなかった壁に、質問と、赤い[Yes.]と書かれたパネルと、青で[No.]と書かれたパネルが浮かび上がってきたのだ。
『あなたは、命を賭けてでも果たしたい約束はありますか?』
[Yes.] [No.]
僕は迷わず、[Yes.]のパネルをタッチする。
すると、一瞬にして、目の前に赤い扉が現れた。
今まで、質問と回答のパネルがあった場所に、赤い扉が現れたのだ。
ここに、なにかが……ある。
僕はその赤い扉を押し開けた。
目の前に広がるのは、広大な空。
蒼く、澄んだ空。
……ん?
ここに、飛び込めってこと?
……えぇっ!?
いやいやいや、無理だろ!!
タダでさえ、高所恐怖症なのに?
こんなとこに?
飛び込めって言うのか?!
「うぅ……。Noにしとくんだった……。」
そんなことを言っていると、突然背後から「ズシン」という音とともに、地響きがした。
なんだか背後に、嫌な気配がして、恐る恐る振り返る……。
「なんっ……じゃこりゃァアアアアァアアアアアアァアアッッ!!!」
今までいた、真っ白な空間が崩壊を始めている。
壁は崩れ、床は抜け……。
あっという間に、白い空間を壊していく。
「あぁ、わかったよ……。飛び込めばいいんだろッッッッ!!!」
恐怖の余り、唾を飲む。
僕は恐怖を胸に抱いたまま、飛び降りる。
ここ、高度何万メートルだよ……?
あまりの恐怖に、目の前が真っ暗になった。
※4
う……。
全身が痛む。
あの空間から飛び降りて、どのくらいたっただろうか。
間接のいたるところがバキバキと唸っている。
まさか、地面にたたきつけられた?
ンなアホな。
だとしたら、もう一度あの空間にいてもおかしくはないような……。
うーん。
謎だな。
考えてもわからない。
そもそも、ここは……どこ?
この真っ暗なところは…?
うーん。
どこなんだろう、ここ。
はてさて、どうしたもんかねぇ……。
もしかして、今度こそ死んだ?
いや、まさかね。
「そう。そのまさかだよ」
突然の背後からの声に、僕は飛び上がった。
「とか、言ったら、君はどうなっちゃうんだろうね、桜月 水都くん?」
「どうして僕の名前を知っている?」
振り返ると、ショートヘアの少女がいた。
髪はスミレ色。
「どうして?決まってるじゃない」
今の今まで遠くにいた少女が、何故か真後ろにいた。
「君に、カードゲームで革命を起こしてもらうためさ」
「カードゲームで、革命を…起こす…だと?!」
アニメとかでよくあるやつか。
昨日読んでた小説、ノー○ームノーラ○フ。
あんな感じだろう。
ただ、1人なだけで。
『 』と何も変わらない気がする。
「君にこれをあげるよ。世界を変えるための切り札を」
謎の少女から手渡された、四枚のカード。
描かれているのは、黒い鱗を纏った竜騎士。
見ただけで分かる。
これはただものではない。
しかも、エンペラー・オブ・ヴァンガードのカード。
名前は……。
「終焉竜騎士 エピオン……。」
「そう、エピオンこそが、世界を変える。君は、彼、いや、彼の竜騎士に選ばれたんだよ。異世界から来た、カードゲーマー」
たしかに僕は生前カードゲーマーだった。
カードゲーム、『エンペラー・オブ・ヴァンガード』。
デッキのカードを導いて、勝利を手にする、戦略カードゲーム。
魔法、科学、機械、ドラゴン、皇帝。
様々なカードを使用してデッキを勝利へと導く。
僕は全国大会に行ったこともある。
その時は準優勝だったっけ。
「君の、全国二位のカードゲーマーとしての力、見せてみてよ。」
少女が渡してきたのは、カードの束。
つまり、デッキだ。
「そのデッキはカードが46枚入ってる。デッキとは基本50枚」
「つまり、エピオンを入れろってことか」
「物分かりがよくて助かるよ。エピオンを使いこなして見せてよね?終末皇帝さん」
終末皇帝……か。
懐かしいな。
僕のデッキの切り札、『闇皇帝 ジ・オメガ』。
全てを終わらせる皇帝。
勝率89.2%は伊達ではない。
その強さゆえに、終末皇帝と呼ばれるようになったんだっけ……。
「二つ名まで知られているとは……ね」
「全部知ってるよ。君のことなら」
「な……」
なんだろう。
なんか今、背筋がゾクってした。
「そばにいながら、何もできなかった自分が悔しかった…か。なら、今度はその子を守って見せてよ。君が行こうとしてる世界に、その子はいる」
「い、今、なんて……?」
「君が今から行こうとしているところは、君が悔しくて泣いて、何もできなかった、ただ、そばにいることしかできなかったあの子がいる…って言ったんだ」
唯も死んだからここにいるってこと?
「君と一緒に世界中を見てまわりたかったって言ってたよ……。だからさ、早くいってあげなよ」
今まで何もなかった壁に、蒼い扉が描かれていく。
「君は、誰?」
「いずれわかるさ。近いうちに、また会いに行くさ」
蒼い扉が開かれていく。
謎の少女につき飛ばされ、扉のほうへ体が押し出される。
……。
名前くらい、教えてくれたっていいじゃないか。
後ろを振り返ったが、もうあの扉はなかった。
異空間……?
亜空間……?
それとも、異世界……?
あの子は、異世界で、カードゲームをしろって言うのか?
どうやって?
とりあえずデッキをズボンのポケットにしまう。
プレイマットもなく、お金もない。
それにしても、どうして、僕や唯のことを知ってたんだ……?
謎……また一つ増えたな……。
※5
今日もいい天気だなぁ。
私がこの世界にきてもう8年かぁ。
水都君、怒ってるかな……。
約束、守れなくて。
あの日……。
言ってくれたよね。
『ずっと友達だ』って。
嬉しかったなぁ。
あんなふうに言ってくれたの、水都君だけだもんね。
でも……。
もう会えないんだもんね……。
私、死んじゃったもんね……。
異世界に転生したって、結核症は消えないし……。
私、やっぱり駄目な子なのかな……。
ゼロがいなきゃ何もできないなんて……。
壁にもたれて考えてみても、何も起こらない。
弱い自分が嫌いだ。
一人じゃ何もできない自分が、嫌いだ。
でも、そうは言っても、生きてることには必ず意味がある。
私の生きる意味って何だろう……。
考えても答えが出ないまま、黒く、冷たい雨が降り出した。
※6
突然の雨に、濡れてしまった。
このままでは風邪をひいてしまう。
今日は帰ろうかな。
今日も何もなかったなぁ……。
その時、唯の体を這い上がってくるナニかがあった。
う、まずいかも……。
喉を駆け上ってくる生暖かいこの感じは……。
結核……!
左腕手で口を押える。
「けほっこほっ…」
咳が出る。
それだけではない。
左手に赤黒く、鉄臭い液体が付着した。
早く……帰らなきゃ……。
息が……苦しい……。
ただでさえ苦しいのに、風邪をひいたら余計に苦しくなってしまう。
そうしたら、あの時と何も変わらない。
私が死んだ、あの日と同じ。
「いつか、一緒に、世界の……」
最後の言葉、途中で死んじゃったんだっけ……。
とりあえず帰ろう。
私はその場を後にした。
前から走ってくる、『彼』に気がつかないまま、歩き出した。
※7
終焉竜騎士 エピオン……か。
スキルは……鎖で覆われて見えない……。
さすがに終焉の名を持つだけのことはある。
スキルまではそう簡単に教えちゃくれないってか。
舐められたもんだねぇ、終末皇帝と呼ばれたこの僕が。
上空に黒い雲が広がってくる。
「一雨来るか?」
無意識にそう呟いてしまう。
そして、静けさの中、黒く冷たい雨が降り出した。
降って来やがった……。
屋根の下に急がなきゃ、風邪をひく。
やばい奴だろ、それって。
こんな異世界で風邪ひいて……。
薬があるかどうかもわかんないのに……。
余計なリスクを背負う必要はない。
僕はただ、屋根を求めて走り続けた。
ただ、真っ直ぐ目の前へ。
この先に屋根があるのかどうかはわからないが、走ってみるだけの価値はある。
僕はただ、走り続けた。
走って、走って、ただ走り続けた。
変わらない景色の中を、延々と。
もうどのくらい走っただろうか。
かなり走っていた気がする。
雨が降りやむ気配はなく、前へ走っても何もない。
「どうなってんだ、ここは?!」
やはり、無意識のうちに文句を言ってしまう。
文句を言う余裕があるならただ走れ!
自分に言い聞かせながら走り続けた。
役10メートル程前から、『彼女』が歩いて来るとは知らずに。
※8
僕はただ走り続けた。
止まらずに。
体中がバキバキと唸っている気がしてならなかったが、今はそんなことを考えている場合ではない。
くそ、流石に元引き篭もり、体が……!
走れ、もっと、早く!
自分に言い聞かせたはいいが、体が言うことを聞かない。
スピードが上がらない。
嘘だろ?
これが現在のトップスピードだっていうのか?
んな馬鹿な……?!
僕は生前もっと速く走れたはずだ!
運動こそ出来なかったが、シャトルランやマラソンで補って、体育の成績は4だった。
なのに何故?
「これが……今の限界か……。」
こんなんでどうすんだ……俺……。
せいぜい秒速0.45メートルってところか…。
生前とは比べ物にならないな。
僕が高校生になりたての時点で、秒速0.6メートルくらいで走れたはずだ。
なのに、何故これ以上加速できない?
右足が悲鳴をあげているのを感じる。
でも止まるわけにはいかない。
右足がなんだ!
風邪ひいて寝込むのと、足痛めて何もできないのだったら、まだ足を痛めて何もできない方がましだ!
右足が重い。
右膝が唸っている。
右膝が痛い。
ついに右膝にガタが来た。
右足が動かない。
でも、まだ左足がある。
「だからって、止まれねぇ!」
右足が地に着く。
さて、どうしたもんか。
右足に限界が来て、最早立てなくなってしまった。
「う、くぅ……」
今の僕には、何もすることが出来なかった。
この状況を打破できなかった。
ただ、膝まずいた状態で、何かが起こるのを待つことしかできなかった。
※8
ただ、膝まずいた状態で、何かが起こるのを待つことしかできなかった。
「う……ぅう。」
どんなに頑張っても右足が元に戻る気配はない。
容赦なく降り続く雨は、降りやむ気配もない。
あぁ、このまま何もできずに風邪をひくのか……。
それだけじゃない。
誰も来ないまま放置され、寒さに震えながら死んでいくのか……。
こんな異世界にまで来て、何もしないまま死ぬのか……。
………。
いや、そうじゃないだろ……。
この程度で死ぬような僕なら、終焉の竜騎士に選ばれるはずがない!
なるんだ、もう一度、終末の皇帝に……!!
僕が、ここで、あと一度でも!!!
だから、こんなところで止まらない!
止まれない!
「動けよ、動いてくれ!」
僕は動かない右膝を殴る。
「こんなところで終わるのかよ、俺は!」
「違う、そうじゃないだろ……。だから……見せてみろよ、お前の力……!」
自分に言い聞かせ、奮い立たせる。
無造作にポケットに手を突っ込む。
その時、僕の中の何かが壊れた気がした。
力がみなぎる。
溢れる力が止まらない。
これって……。
ポケットからデッキを取り出し、確認する。
バーストリザレクト……。
このカードが……僕を……。
助けてくれたんだね。
ありがとう。
バーストリザレクション。
自分を奮い立たせることで発動する回復魔法カード。
エンペラー・オブ・ヴァンガードでは、場に出せるユニットが三枚まで。
そのうち一枚でも盟約カード(自分の分身、相棒と呼ぶ人もいる)が場に出ていれば、
手札を三枚以上(盟約カードも含まれる好きな枚数)捨てることで発動する。
自分のライフを+5する最強クラスの回復魔法だ。
ライフポイントが20のうち5ポイント分も回復できるのだから、
最強クラスである。
ほかの回復魔法は、せいぜいライフポイントを+1、良くてプラス3ポイント程度である。
コストが低いだけあって、ほかの回復魔法のが使いやすい。
ただ、何故能力が発動したのかは誰にもわからない。
まぁ、膝も治ったし、行くとしようか。
屋根のある場所へ。
あれ?
前から誰か来るな……。
距離は約2.5メートル。
隠れようにも隠れる場所がない。
「ついてないねぇ、最近」
一言だけ呟き、僕は走り出す。
ただ、真っ直ぐ前へ。
走って進む。
ただ前だけを見て。
さっきまで降っていた黒く冷たい雨がやみ、太陽が現れる。
「晴れてきた……か……」
僕は直前まで迫ってきた人間を見て目を疑った。
茶髪で、ロングヘアーの女の子。
白いシンプルな服に、デニムのホットパンツ。
そして……。
赤黒い何かが付着した左手。
首に巻いたピンク色のタオル。
まさか……こんな形で……ね……。
むこうの女の子、水無月 唯は、やはりこちらを見て驚きが隠せないようだ。
何もない平原に、風が吹く。
唯の首に巻かれていたピンク色のタオルが風にさらわれて、僕のところまで飛んできた。
僕は当然キャッチする。
唯が口を開く。
「あ、え……と……」
困惑した表情を浮かべている。
8年ぶりに再会したのだ。
この世界で。
「ほら、大事なものなんだろ」
僕は唯にタオルを渡す。
「あ、ありがとう……」
僕は唯に話しかけようとしたが、うまく言葉が出てこない。
「これは、小さいとき、大切な……友達に貰ったんだ……」
何この感じ。
「そう……」
僕たちは、何をどうすればいいのかわからずに立ちすくんでいた。
いかがでしたでしょうか?
二話分連続だとさすがに長かったですね、はい。
そして終わり方よ……。
何故ガンダムSEEDのキラとアスランのやり取りみたいになるのやら……。
誤字脱字等々ございましたら指摘して頂けると幸いです。
今後も是非本作をよろしくお願い致します。




