7、幸せは7歩目に
有実へ
おまえが、この手紙読んでる頃、俺は隣にいないと思う。ていうか、絶対いないと思うけどな。
こんな手紙、ホントは書く気、なかったんだぜ?マジで。
でもさ、なんか残したいなぁって思ったらさ。手紙が良いなって思ってよ。んで、今この手紙を書いてんだよ。笑うなよ、『雑な字』とか言って。……自分的にはかなり上手いと思ってんだからさ。←ジシンカジョーだな
そんな事、どうでもいいけどさ、有実。一人になったからって落ち込んでんじゃねぇぞ。もし、落ち込んだ気持ちでこれ読んでるんなら、すぐさまこれは捨てろ、良いな?そんなやつに、読んでもらいたかねぇから。
それと、この手紙、俺から渡せなくてゴメンな。それだけは勘弁してくれ。俺が手渡し出来たらよかったんだけどさ、いざ渡すとなると照れくさくってさ。しかもさ、これ読んで泣かれてたら、かなり焦るしさ。だから、それは許してくれよ。
それはそれとして、どこかそこらへんに置いといて、本題に入るぞ。
お前、俺が死んだからって、塞ぎ込んでねぇか?暗くなってねぇか?……もしそうなってるんなら、いつもみたいに、無邪気に笑えよ。お前の辛気くせぇ顔なんて、キモくて見てらんねぇからさ。……笑えよ、いいな?約束だぞ?
手紙なんて、幼稚園でセンセーに向けて書いて以来、久しぶりに書いたからさ、ヘンな所あっても、ツッコムなよ?……久しぶりに書くって、かなり緊張するんだからな。そんな気持ちを踏みにじるなよ。……頼むからさ。
今のお前は、幸せに笑ってられてるか?誰かにイジメられてたり、不登校になってたりしてねぇか?俺が死んだら、その事が気がかりで、お前の所まで出てくるかもよ?……なぁんてな(笑
でも、本当に大丈夫か?まだ死ぬって決まった訳じゃねぇのに、何でこんなに悲しいのかな?……てか、この、胸の中のモヤモヤ湿っぽい感じ、これ、悲しいっつうのかな?
お前にもあるか、こんな感じのやつ。だったら、悲しいじゃなくて、寂しいなのかもな。
俺、正直言って、死ぬのはあんまし怖くねぇんだよな。お前を独りにしちまうのが、怖ぇわ。……今、ベタな事書いたなって、自分でも思ったけどさ、本当にそうなんだよ。死ぬ事より、大切なお前を一人にする事の方が怖い。……それに、悲しいんだ。
お前、独りぼっちは嫌いなタチだろ?だからさ、周りに友達がいたとしても、自分一人で考え込みそうなんだよな。独りぼっちが嫌いなはずなのに、自分から独りぼっちになってどうすんだよ。お前の周りにはさ、いっぱい友達がいんだから、何か不安な事があったりしたら、ちゃんと打ち明けろよ?一人で考えるなよ、助けてもらえよ、友達に。
最後になるけどさ、俺の事、別に忘れても良いからな。お前が俺の事を忘れて幸せになれるんなら、そっちの方がいいからよ。笑えよ、幸せになれよ、有実。なんか今、ジジ臭い事言った気がするけど、笑ってごまかしてくれな。
有実、お前は俺みたいに病気で死んだりすんなよ。海みたいにおおらかな人で、安らかな最期、迎えてくれよ、俺の代わりにさ。海みたいに誰にでも優しく、寛大な人であれよ、有実。……俺は、お前のそういう所が好きだったんだからさ。それだけは、曲げないでくれよ。
今、この腕にお前を抱いて、「俺は、今までお前を幸せに出来てたか」って聞けたら、どんなに良いんだろうな。「お前は俺といて、幸せだったか」って聞けたら、どんなに良いんだろう。なんか、今更になって泣けてきたよ。俺は本当にお前を残して、死ぬかも知れねぇもんな。お前を置いて、先に逝ったとしても、お前は俺の事を許してくれるか?こんな頼りない俺を、心のどこかで想い続けてくれるか?
……何言ってんだろな、身勝手な事言ってよ。この手紙だけでも、何回お前に約束したんだ?頼んだんだ?なっさけねぇや。男のくせに、お前に頼ってよ。この重荷、背負わなくて良いから、お前は自由に生きろ。お前を幸せにしてくれる、唯一の人と幸せになって、俺にできなかった、幸せな家庭を築いてくれな。最後のお願いだ。
最後って言ったのに、まだこんなにちんたらちんたら書いてゴメンな。これが、本当に最後だから。よく聞けよ。……てか、よく読めよ。
この世に生まれてきてくれて有難う、有実。お前のおかげで、俺は幸せだったぜ。毎日が、かなり楽しかった。かなり幸せだった。夢みたいなほどにさ。
有実。お前は、幸せだったか、もう聞けないけど、今まで本当に有難う。俺みたいなのと付き合ってくれて有難う。優しさを俺にくれて有難う。俺にとって、お前が海だった気がする。
心から有難う、大好きな有実。
一輝




