説明されました
曰く、この世界は乙女ゲームらしい
曰く、淳にぃは攻略対象者らしい
曰く、前世は中の人だったらしい
曰く、ヒロインは私のクラスメイトらしい
曰く、攻略されたくないらしい
曰く、世界から干渉されてしまう可能性があるから私に頼んだらしい
それを聞いた私の一言は「へぇー」だった。淳にぃは土下座しながら話していたので私の反応を見るために顔を上げたようだが私があまりにも興味なさそうだったからか泣きそうである。
「やっぱり引いたんだー!!」
「引いてない、引いてない。むしろ興味津々」
「棒読みで言われても・・・」
「じゃあ、言わせてもらうけど。淳にぃ、病院行ったら?」
「柚のバカヤローーー」
なんでこの人が次期生徒会長なんだろう。年下の女の子に泣かされるか、普通。
別に私は淳にぃの話を信じていないわけじゃない。半々ってところだろう。淳にぃは私にあまり嘘をつかないし、こんな自分が自滅しそうな内容を私に話すわけがない。私にボロクソに言われることを目に見えてるからだ。これが冗談だと思っていたらもっと言ってたと思うけど。
「淳にぃ、淳にぃ」
私は膝を曲げて、四つん這い状態になりメソメソと土下座をやめて膝を抱え込んでいる淳にぃの肩を叩いた。彼は顔を上げると私の顔が目の前にあったからか驚いている。
失礼だな。確かに私は淳にぃみたいに綺麗な顔じゃないけどさっと少し心の中で拗ねる。
「淳にぃが言ってること別に信じてないわけじゃないんだよ?でも、やっぱりそんなことあまり信じられるような話じゃないから・・・」
「・・・信じてくれたら俺を助けてくれるのか?」
「淳にぃの話が本当だって証拠があったらね」
もしあるのならば信じて、助けを請う淳にぃのために助けてあげよう。淳にぃは大切な家族みたいなものだからね。まあ、単になかったら助けないってことなんだけどね・・・。
淳にぃの綺麗な目を真っ直ぐと見つめる。こっちが吸い込まされそうなほどの強い目。これだけでも十分な証拠だな。
「証拠は、ヒロインの名前は虹野アリサ。お前のクラスメイトであり、まだ登校していない。明日、初めて彼女は登校してくる」
虹野アリサ・・・。そういえばいた気がする。入学式から2週間経っているのに一度も登校していないクラスメイトが。担任が言うに、彼女は入院していてもうすぐ退院するだろうってこと。でも、淳にぃは生徒会の人間だ。そういう特異な生徒が登校する日を知っていても不思議じゃない。
私が生徒会のところについて説明すると「そうだよなー」って首をかしげる。私は四つん這いから近くにあるクッションを取り出してそこに座る。
「そういえば、淳にぃは他の攻略対象者については知らないの?」
「ん?ああ、そうだな。詳しく知ってるのは前世の俺が声をしていた『青木 淳也』とあともう一人ぐらいだな。あとはそんなに詳しくは知らないんだが・・・あっ!!」
「どうしたの?」
淳にぃは急に黙り込んでブツブツ言ってる。淳にぃが前世の記憶持ちかぁ。いつからだったんだろう?いつだったか淳にぃがものすごく荒れてた時期があったな。淳にぃのお母さんが話してたっけ。たぶんその時だと思うけど。
「証明できぞるぞ!柚!」
「え?急にどうしたの?」
淳にぃは私に説明した。攻略者の名前は知らないから言えないらしいが、攻略対象者の人数は全部で7人。攻略対象者はそれぞれ名前に色が入っててそれぞれタイプが違うらしい。まずヒロインと攻略対象者は必ず一回は出会う。しかも登校初日でだ。
すごいなヒロイン。イケメンに一日に7人も出会うのか。まるでイケメンホイホイだな。
話がそれてしまったが、淳にぃは自分以外のもう一人の攻略対象者とヒロインの出会いを教えてくれた。
「つまり、私がヒロインのあとを追ってそのシーンを見て来いと」
「ああ、それが一番証拠になるだろう」
確かにそうだけど・・・私はそのシーン見たくないんだけどなぁ。内容がちょっとなー。けど、これが唯一の証拠っぽいし。だったら淳にぃの出会いのシーンでいいじゃないかと思うけど、それは淳にぃが嫌らしい。
「淳にぃはどうしてその人の出会いシーンを知ってるの?」
淳にぃは苦いものでも思い出したのか自然と淳にぃにまとわりついている空気が暗い。なんだなんだと思っていれば淳にぃは「うー」とか「あー」とか口に出していた。
そうかそうか、私は理解したぞ。淳にぃはもしかして前世ではその攻略対象者が好きだったんだね。男の声をしているから前世も男だったと思うけど前世の淳にぃは男が好きだったんだね。
「柚・・・、今変なこと思っただろう」
「いや、別に。淳にぃの前世はその人が好きだったのかなって思って」
「それはない!!やめろそんな考えを抱くのは!!俺の前世はホモじゃねぇ!!」
「え!?じゃあ今は・・・」
「違う!!」
なんだ、つまんないの。私は例え淳にぃがそうだったとしても嫌わないのに。けど少し距離を置くけどね。
「・・・姉貴だ」
「は?」
「姉貴がそのキャラが好きでな」
淳にぃにお姉さんはいない。一人っ子だ。社長子息であり、後継者。私は淳にぃの父である青木社長の友人である父の娘。青木社長であるおじさん(偉い人だと思って青木社長って呼んだら悲しい顔でおじさんって呼んでと泣きつかれた)は奥さんとラブラブ。家族大好きな素敵なおじ様だ。だから家は普通の一軒家と同じで屋敷ではない。大きい家は家族との距離が遠く感じるそうで、使用人とかもいない。毎日奥さんの手料理が食べたいんだって。
ラブラブすぎる。
「淳にぃの前世でのお姉さん?」
「そう、俺の前世の姉貴。そして大の乙女ゲーム好きで俺に『声優になれば』と言った・・・無理やりさせた人」
淳にぃの前世のお姉さんはどうやら淳にぃに自分の乙女ゲームの話をし、無理やり乙女ゲームのセリフを言わせた人らしい。それにお姉さんは「あんたなら声優になれる!!むしろなれ」と言ったらしい。淳にぃは初めやる気無かったらしいが徐々に楽しくなったっと少し恥ずかしそうに話してくれた。淳にぃの話に私はある一人を思い出す。
「まるで蜜柑姉さんみたいな人だね」
「いや、まさにあいつだ。俺はあいつの前世は姉貴だと思っている」
黒川 蜜柑。私の8歳年上の姉。今はバリッバリのキャリアウーマンであり、青木の会社で働いている。もちろんコネなんかではなく我が姉は実力で就職した私の憧れな姉だ。今は家から出て、アパートからから出勤している。そして淳にぃは蜜柑姉さんに頭が上がらない。むしろ、下僕と化している。私といるときもヘタれだが、蜜柑姉さんの場合はすごい。ファンが泣くぞ。
ちなみに蜜柑姉さんは自分の名前を気に入っており、蜜柑が大好きである。なので名前についていじられると相手は精神と肉体をボロボロにされる。
「蜜柑姉さんかぁ、次はいつ帰ってくるのかな?」
「俺は極力会いたくない」
「そんなこと言ってると追い出されるよ」
「やめてくれ。本当にそうなりそうだから怖い」
「電話しよう」
「じ、自分の部屋に帰る」
淳にぃは慌てて立ち上がりドアまで長い脚で早歩きで歩く。ドアを開け、廊下に出る。ドアが閉まる前に淳にぃは振り返る。
「とにかく、明日も言うけど見てくれよ」
「バレなかったらいいんだけどね。もし本当にそうだったら信じて助けてあげるよ」
私は苦笑いしながら淳にぃを見送り、宣言通りに蜜柑姉さんに電話をかけた。
電話
柚「もしもし、姉さん?もしかして仕事中だった?」
蜜「ううん。休憩中よ、どうしたの?」
柚「いやー、ちょと姉さんが恋しくなっちゃって」
蜜「あら、そうなの(キャーー、何この子超カワイイィィィ)。そういえばアイツはまだあなたの部屋に入ったりするの?」
柚「淳にぃ?普通に入ってるけど」
蜜「へー(次会ったらフルボッコ)」
蜜柑はシスコン。クーデレです




