【三題噺】 通りの駄菓子屋
三題噺です。
お題は以下の通りです
《金平糖・お姉ちゃん・サッカー部》
私が住んでいる通りに、六〇歳のおばあちゃんが営む駄菓子屋があった。
その駄菓子屋は何十種類もののお菓子や玩具が売られていた。
色んなフレーバーのスナック棒、硬貨型のチョコレート、酸っぱい昆布、煙草にそっくりなココアチョコレートなどなど。 だが、その中で一際、異彩を放ったお菓子があった。
それは《金平糖》である。
そう言うと「金平糖? それはよく見かけるでしょ」と思われるだろう。
しかしその駄菓子屋で売られている金平糖は特別だった。何故ならその駄菓子屋の手作りだからである。薄い桃色の色がついた砂糖の小球体でほのかに桜の香りがしていた。その上、通常の金平糖だと時間が経つとベタベタとするが、その駄菓子屋の金平糖はベタベタしなかった。
その金平糖と駄菓子屋のおばあちゃんにはよくお世話になったものである。
私が中学のサッカー部に所属していた時、よく帰りに寄っていた。おばあちゃんはよく私が駄菓子屋に足を踏み入れると声をかけてくれていた。
「あんりゃ~安大君。部活帰りかい?」
「あ、うん。疲れたよ」
「そうかいそうかい。そりゃ~大変だったね。いつものかい?」
「うん」
私がよく買っていた物、《金平糖とレモンティー》これがこの駄菓子屋の常連が言う《いつもの》だった。
おばあちゃんはレモンティーと金平糖を駄菓子屋専用の紙袋に包み、私に手渡し、私からいつもの代金を受け取った。
私はおばあちゃんに礼を言う。
「ありがとう。おばあちゃん。部活後の糖分はこれじゃないとね。ここの金平糖、宝石みたいにキラキラと輝いてるし」
「褒めてくれるのかい? ありがとう。でもね……」
おばあちゃんは他人に老人扱いされたくない様で、よく駄菓子屋に来る子供達に行っていた言葉があったそれが……
【あたしは、おばあちゃんじゃなく、お姉ちゃん!】
私はよく忘れがちでそのやり取りばっかりだった。
「そうだった。そうだった。おねえちゃんだった」
私は笑った。
おばあちゃんは私に威張った顔で一言とんでもない事を言う。
「今度、安大君の出る試合、応援しに行こうじゃないかえ。チアガールの格好して……」
私はおばあちゃんの行動をとめた。
「ちょっと勘弁して~おばあちゃん」
「これ! おばあちゃんじゃないの。お・ね・え・ちゃ・ん」
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あれから十数年。私が駄菓子屋のあったこの通りを歩くと感じてしまう。
「過去に戻って、おばあちゃんの金平糖を食べたい」と。
しかし、あの元気なおばあちゃんの駄菓子屋はない。勿論、その駄菓子屋の金平糖を口にする事もおばあちゃんの笑顔を見る事も一生できなくなってしまったのである。
【進んでいく時間を恨んだのはこれが初めてだった】
終
このお話はフィクションです。
下手くそです。超展開はご了承下さい。
三題噺の中で、今回は《お姉ちゃん・サッカー部》の使い所に迷いました。
その上で、初めて一人称(?)の短編を書いたわけで、書いている間冷や汗が止まりませんでした。