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それはある日突然に

「っテェ・・・」

組み手で散々投げられたりしたせいで今になって筋肉痛だ。

今日は学校も休みでマルの散歩もとっくに終わっている。

散歩も終わって暇を持て余してるオレは久々に一人気ままに出歩いている。

いつもはそんな暇が無いだけに今はどうしていいのか迷う。

そうは言っても暇は暇。気ままに歩けばいい。

それで来たのは駅前。

「そういえば正月明けで学校始まってから色々騒ぎがあってこっちの方に来るのは久々だな」

前に来たのは・・・花火大会を見に行ったあの時ぐらいだろうか?

そんな思い出に浸るなんて感傷的な事・・・らしくないな。

「中学時代に比べたらオレも随分丸くなったよな・・・」

とは言っても夏の終わりに怪我するような事もしている。

あれで義一ビビらせたしな・・・。

「丸くなっているとは言っても牙が無いわけじゃないんだよな」

そんな事を言いながら駅付近のファストフード店に入る。

ハンバーガーとポテト、それに飲み物を頼んで席に着く。

「もう少しすれば2年か・・・。後輩・・・が出来るって言うのはいいんだが・・・なぁ」

食べながら思い出すのは不安要素である<あいつ>の存在。

追ってこないと言う確証は無い。

オレが好き・・・友達としての好きならば分かる。

が、<あいつ>の好きはそういう好きでは無かった。

「ライクならよかったのにな・・・」

そうであれば、オレもそれなりの付き合いは出来た。

実際、<あいつ>はオレにとっては弟分。それ以上って事は無い。

「態度的にはマルみたいなもんで可愛いんだけどな」

子犬みたいに甘えてくるとかは可愛いもんだ。

が、それがどうしてキスしたいだとかになったかは分からない。

「こんな事思い出してると案外出会ったりしてな・・・ハハッ・・・」

弟分のところまではいい思い出だ。

キスしたいとか始まった頃の思い出は正直思い出して辛くなった。

ハンバーガーを一気に食べて飲み物で流し込む。

それからちょっと塩気が強いポテトで辛くなった思いを流す。

食べ終わってトレーや包み紙を片付け店を後にする。

外に出ると少し風が出ていた。

「風が冷たいな・・・」

そうは言いつつも散歩を続ける。

オレに恋人が居れば何が変わったとか考えた事もあった。

まぁ結論は変わらないか喧嘩三昧の毎日に巻き込むだろうって事だった。

それでも、普通に女の恋人だったらの話だが。

<あいつ>が恋人だったらって事は考えた事も無い。

普通に考えてあり得ない。


無駄な事を考えながら歩いていたらいつの間にか中学時代に通っていた道路に来ていた。

「こっちまで来ちまったか・・・」

<あいつ>はまだこの通路を通ってオレが卒業した中学に通っている・・・はずだ。

こっちまで来るつもりは無かった。

来れば<あいつ>に会う確率が高くなって・・・また言い寄られるって分かってるからだ。

けれど、こっちに来た。

「・・・折角来たんだ。少しは見ていくか」

1年足らず前の話だ。そんなに街並みだとかは変わってないはずだ。

そう思って歩くと意外と変わってる事に気付く。

(ここ、潰れたのか・・・。いい駄菓子屋だったのにな)

感傷に浸る。浸る気が無くても過去を思い出すって事はそういう事なんだろう。

駄菓子屋が潰れたりした事を残念に思いつつも街を見て回る。

「先輩? お久しぶりです!!」

歩いてて声をかけてきたのは<あいつ>の友達だった奴。

「あぁ・・・元気だったか?」

オレは立ち止まって色々聞いた。

元気だったか。それに対しては元気だったって答えが返ってくる。

学校は何か変わったか。それに対してはちょっと劣化が激しくなって来年辺りに立替工事が入るって答えが返ってくる。

「<あいつ>はどうしてる?」

ここ最近頻繁に思い出すから気になっていた。

<あいつ>が今何をしているかとか。

「あー・・・えっと・・・元気には元気ですよ。先輩が卒業してこの街に来なくなって最初は泣いて探してましたけど」

やっぱり探していたか。ただ、口ぶりから今は探していないんだと思った。

「とは言っても学校終わってから毎日フラフラと何処かへ行くんで壊れたと思ってますけど・・・」

オレを探している・・・んだろうな。あるいは何か壊れて犯罪に走ったか?

そうなると悠の事もあったし心配だ。オレが居なくなったあるいは原因でおかしくなったならばだが。

「<あいつ>が今何処に居るか分かるか?」

探そうとしているオレもバカだ。何を気にしているんだ?

縁を切ったはずなのに・・・。

とは言っても<あいつ>の友達は首を横に振る。知らないらしい。

オレはその子にそれじゃと言って歩く。探すにしても焦る必要は無い。

必要は無い・・・にしてもさすがに犯罪に走られてはオレは悲しい。

悠は不良グループのリーダーになって人に迷惑をかけていた。

<あいつ>は何をして人様に迷惑をかけるつもりだろうか・・・。

オレも多少は人に迷惑をかけている。それでも犯罪になるような迷惑はかけていない。

昔の喧嘩なら確かに迷惑をかけた覚えはある。今は違うはずだが。

<あいつ>もオレを探しているならこの街を歩いていればいずれ遇うだろう。

立ち寄りそうな場所も寄って行けば確立は上がるはずだ。

会いたくないと言えば確かにそうだが・・・少しは気になる。


昔通っていたゲーセンだとかバッティングセンター、それに喧嘩をした場所。

それらを中心に回っていく。訪れるとその場所での過去の事が幻影のようにその場所に現れては消える。

が、<あいつ>は居ない。

それもそうだ。1年近くまったく来ていないし<あいつ>とも関わっていない。

<あいつ>の行動パターンが変わっていたとしてもなんら不思議は無いはずだ。

オレを忘れようとして必死にオレと訪れた場所を避けていても不思議じゃない。

そんなに必死になって忘れようとしているのだとしたらば、だけども。

普通に友達くらいならばそんなに必死になって忘れようなんてしないだろう。

しかし、<あいつ>の場合はオレに特別な感情があった。

恋愛事情って言うのはオレにはイマイチだが・・・たまに聞く話だと失恋だとかは必死に忘れようとするとは聞いた。

それが当てはまるほど乙女みたいな感じじゃなかったから少なくとも忘れようとして必死になって違う場所にって言うのは偶然だとは思うが・・・。

「オレ以外に好きな奴が出来たってならそれはそれでいいんだが・・・」

好きな奴が出来てそいつと一緒に出かけていると言うならオレも安心だ。

が、さっきの友達の話を聞く限り<あいつ>は一人だ。

一人で何処を彷徨っているかは知らん。ただ、間違った道へ行くのだけは・・・勘弁だな。

そんな事を考えつつも最後に訪れたのはオレが一人でよく来ていたでっかい御神木がある神社跡。

「さすがにここは<あいつ>も知らないはずだから居ないだろうが・・・」

ここに来る時にはオレは一人。<あいつ>も悠もオレがここに来ている事は知らないはずだ。

「アニキ・・・?」

後ろから声がした。振り返ると<あいつ>が居る。

「アニキー」

そう言いながら泣き顔で飛びついてくる。情けない顔だ。

「毎日ここに来たらアニキが来るんじゃないかと思ってたッス」

(それで毎日フラフラと・・・)

健気と言うかバカと言うか・・・。引き剥がしながら呆れる。

「オマエは面倒な奴だな。オレがここに来ない確立の方が高いだろうが」

オレは頭にゲンコツを軽く一発お見舞いする。

「昔、アニキがよくここに来ていたからもしかしたらって・・・」

ん? オレがここに来ているのは学校じゃ誰も知らなかったはずだ。

それにここに来る時には見つかってもいいようにわざと人混みに紛れたりしていたはずだ・・・。

なんでこいつが知ってるんだ・・・?

「賢・・・オマエ、付けてたのか?」

オレの問いに対して頷く。

「あのな・・・ストーカーとか犯罪だろうがッ」

余計に呆れた。弟分であるこいつ・・・天上 賢を甘く見ていたかも知れない。

賢の頭をグーでグリグリと攻撃しつつ少しホッとしているオレが居た。

こいつは振られてもオレを慕うらしい。妄信と言うべきくらいにオレを信用してオレを慕っている。

それが勘違いでオレが好きと言うなら随分な妄信だ。

「で、アニキは何処の高校に通ってるんすか?」

やっぱりこうなるか・・・。会えば確実にこうなると分かっていても探したあたりオレはバカだ。

「あー・・・秘密だ。秘密」

教えたら絶対に来るだろう。そしたら生徒会長にますます目をつけられる。

「いいッス。アニキの後つけて調べるッス」

・・・ストーカーする気満々なのか。

ガッカリすると同時にまた厄介なのを引き寄せてしまった・・・ようだ。


過去にもあった似た様な事があったのに・・・どうもオレとこいつの歴史と言うのは繰り返すらしい。

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