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1月騒動・生徒会サイド

12月25日、僕、九 一二三と岩城 時雨は家族ぐるみで別宅で過ごしていた。

もちろん、風習としては西洋のように家族以外とは過ごす事は無く出歩く事も無い。

ここは普段住んでる場所から少し南西の別宅。雪はそんなに酷くなく埋もれる程でも無い。

ただ、ニュースでは気になる放送が流れていた。

『───街は本日午後より雪が降り出すでしょう。またしばらく雪が続き───』

アレはあの街から出る事は無い。つまりこの雪でしばらく動けないだろう。

啓作君の家にでも上がりこんでいれば大丈夫ではあると思う。

「ねーねーひふみん。とくまきー大丈夫かな?」

隣で座ってる時雨がアレを心配しているようですがここはあえて答えずにニュースを見続ける。

この個室では僕と時雨しか居ないので何かしようと思えば簡単に出来る。

ただし、お互い武術の腕がある関係で迂闊に手を出せば反撃を食らう事も知っている。

だから、近くに居ても触る事はまず無い。

それでもこんな関係でも、許婚たる時雨の傍に居るだけでいい。

アレはアレで心配だけどもアレは自分の力で乗り越えなければ僕の下に付く資格は無い。

それに・・・一度は離れる事になるのだからこれくらいで根を上げられては楽しみ甲斐が無い。

とは言っても時雨の言う事も確か。どうするべきか・・・。

「とくまきーなら大丈夫・・・だよね」

その問いかけに間を少しおいて頷く。不安要素はあれど確かめる方法は無いのだから仕方ない。

「僕らは僕らでしばらく時間があります。少しはここでの生活を楽しみましょう」

いつもと言うよりぎこちなく姿ではあるけれど時雨と二人なのだからそれを楽しみたい。

「だったらひふみん、敬語止めて?」

あぁそうだ、こういう時くらい敬語は止めてもいいだろう。

「・・・時雨は僕よりアレの方が気になる?」

愛しの時雨ってわけでは無いがアレばかり気にされるとさすがに嫉妬する。

「う~ん・・・。トクマキーは一応後輩だからね。そういう意味では無事かな~とかは思うよ?」

「それって好きとか関係なく?」

やっぱり嫉妬は簡単には拭えない。

「うん、トクマキーの嫌いな部分も含めて心配はあるよ?」

それを聞いて少しは嫉妬が拭えただろうか。

僕はアレに対して絶対の興味がある。それだけにその興味の部分に愛しの時雨が奪われると言うのは耐えられない。

弱い・・・と言うわけではなくこれがある種の正常と言うのは知っている。

ただ、狂おしくも僕は時雨を好きなんだと自覚させられる事に苛立ちを覚えるだけだ。

こういう時に本音を言えば僕はキスをしたい。

そう、独占しておきたいと言う意味で。

「それだけ・・・だよね?」

僕は時雨の顎に手を伸ばして触れて強引にキスをしようと構える。

ただ、それをした場合に限って時雨は嫌な顔をするのを知っている。

だから、理性で抑えて僕はキスをしない。

僕は駆け引きがうまいなんて言われているのを噂で聞く。

けど、実際には愛したものに対して嫉妬しやすく、臆病で心配性。

そうやって僕は常に自分の周りを固めていないと落ち着かない・・・らしい。

「うん、それだけだよ? ボクにとっては愛しているのはひふみんと家族だけ」

時雨の言葉に嘘は無い。けれどそれすら疑ってしまうのが自分が時折醜い。

「・・・僕は時雨を失うのが怖い」

正直なところ何度も失いかけているのだから当然。

それでも仕事は仕事と割り切っていたはず。

だけど、この時ばかりは本音が出てしまう。

「ボクだってひふみん失うのはイヤだよ。でも、だからって進まないのは───」

「分かってる!! 進まないのは違う。それは当然。だけどっ、だけど僕は・・・」

つい感情が溢れる。こういう時は女々しいとさえ思う程醜い。

いつも完璧、それが九 一二三に押し付けられている事。

僕にとって時雨は愛しい人。けれど、完璧を演じる上で時雨は僕にとっては不完全だった。

それがとても不安定な僕を形成する。

今の僕は九 一二三であるべきであるけれど時雨が呼ぶひふみんでもある。

だから、板ばさみ状態とでも言うべきか。

「進む事も戻る事も出来ない・・・」

そして、今年気になるアレを見つけて気をそらすのにアレを利用していた。

けれど、今この時点でアレを利用しようものなら僕は全てを失う。

そう、失うのは怖い。僕にとって失う恐怖程僕自身を狂わせるものは無い。

「ひふみん、今はボクと二人だけだからいっぱい不安とか話して。ね?」

その言葉に僕は泣き崩れるしかなかった。

普段は抑えてる感情全てが涙になって溢れる気分だった。

ただ、同時に涙の姿を時雨以外の誰かに見られる事に怯えていた。

今まで演じていた完璧な九 一二三と言う僕が全て否定される。

「色んな物が怖い・・・。僕はッ・・・」

言葉を出せば幼い子供のようになっていく。

それが普段の自分との差で苛立ちを植えつけていく。

「僕は・・・もう・・・」

弱気で臆病な僕がいつもの僕を壊していく。

そんな時、時雨が僕を抱きしめてキスをした。

戸惑いと焦りと・・・色んな感情がキスを侵食していく。

侵食されたキスは僕を支配していく。

「大丈夫、ボクはどんなひふみんも好きだよ」

更に言葉で支配するはずの僕は今、時雨の言葉に支配されている。

「大丈夫・・・大丈夫だから、ね?」

その腕に抱かれて僕は幼い僕自身を曝け出すしかなかった。

この辺、僕は時雨に弱い。いや、普段が強がってる分、普段との差で今の僕は弱い。

「時雨・・・時雨・・・」

泣いてる僕は時雨に強く抱きついて顔を見られないようにしようとしている。

時雨にはもう見られているって言うのに未だにプライドが素直さを邪魔する。

いや、これもこれで素直なのかも知れない。

時雨に強く抱きついているのは紛れも無く普段、僕が望んでいる事。望んでも抑えてやらなかった事。

だけど、プライドが今はそうさせている。皮肉にも。


その日は泣きに泣いた。時雨の腕の中で。

泣いた日からしばらくは感情が不安定でどうしてもダメだったがしばらくして部屋から出れるようになった。

泣いた日からお正月まで。部屋からは出れても僕は外に出る事が出来なかった。

雪に閉じ込められているわけではない。

ただ、単に泣いて顔が腫れたというわけでもない。

この時、僕は気付いていなかったけれど後で気付く。感情を一気に放出して放心していたのだと。

それから僕はこの放心した状態で過ごす事でその間の記憶を完全に失っていた。

時雨には悪いけど覚えてない事が多い。

僕は・・・何か失ったんだろうか?

こんな状態で学校に行けば多分、問題が起きるだろう。

いや、大前提としてこの状態が続く場合に限って問題が起きる。

だから、今はあの街に戻れない。戻っても問題しか出ないはず。

今すべきは隠れる事。この場から何処か遠くへ行く事。

・・・それはそれで問題が起きるかも知れない。

僕が居なければあの学校は問題児の巣窟なのだから。

僕や隣に居る時雨も含めて。

だからこそ、異常ではあるけれどあの首輪を使って監視している。

それは都合の問題であって本当は僕の興味をそそる人間と言う証でしかない。

どうあってもアレに一番興味がある。時雨に対してが一番愛があるのなら僕の楽しみと言うべきはアレだ。

こういう思考の時点で既に問題がある。そう、自覚はある。ただ、それを断固として問題とは認める気は無い。


そして、今日。僕は再び学校に行く為に時雨に電話をかける。

「時雨、行きます」

「はいはい、僕の前でだけ見せたひふみんの事は内緒にしとくけど・・・バレたらごめんね」

それが意味するのは騒ぎが起きるという事。

僕は仕方ないと言いつつも騒動が起きる事を期待している。

ただ、実際に騒動が大きかったのはアレと啓作君の話だったと言うのは語るまでもない。

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