1月騒動・キョウゲキ部サイド
元日は結局寝れなかった。で、正月。
雪も少しは止んでいる。
「ワイは帰るわ。親にもそろそろ帰って来い言われとるし」
1月4日、この日義一は帰った。
オレはまだ帰れないで居る。
都合が悪く、除雪が間に合わず道路が雪に埋もれているからだ。
「よく、この真っ白風景で帰れるよな・・・」
オレと啓作は見送るだけ。その後はやっぱり義一が居ては聞けなかった事を問いただそうとした。
が、オレも意気地なしらしい。
間が悪く執事さんが居たりするもんだから聞くに聞けないでいる。
聞きたいのはクリスマスの時に見てしまった事。
それに啓作の彼女の話。他にもこれからの事。
色々聞きたい事がある。しかし、何かとこの家は執事さん一人で切り盛りしてるとは思えない程のタイミングと遭遇率を誇っている。
「あぁ、これは失礼しました。啓作様、お電話です───」
「失礼致します。洗濯物の回収を───」
「ゴミの回収を───」
「お食事の用意が出来ました──」
もはや啓作に質問するのを邪魔されているように思える。
それくらいに啓作に話しかけようと決意すれば執事さんがやってくる。
いや、正確には家の構造を把握してれば出来るんだろう。
が、それがかえってオレが話すきっかけを奪っていく。
「・・・はぁ・・・」
もはや溜息だけが漏れる。
啓作に家を案内してもらっているわけでも無く。
啓作を見かけては決意して・・・そして邪魔される。
そんな事が義一が居る時もそうだったが三日の間に邪魔され続けている。
義一が居ても聞けばよかった。
そうすれば流れで義一に彼女が居るかも聞けたかも知れない。
それすら思考として入ってなかった時点でオレは後の祭り状態で・・・。
今は聞く事すら億劫になっている。トイレの後に廊下で佇んでしまう程に。
もし・・・いや、もしって話は無いか。
それでも、もし───
「───聞けたところでオレが得るものってなんだ・・・?」
「誰に何を聞くつもりなんだか」
「おわっ?! け、啓作!?」
気付くと背後には啓作が居た。気配が無かった!?
いや、オレがそれだけボケーっとしてたのか・・・。
「い、いや・・・」
待てよ。今なら聞けるか・・・?
「なぁ───」
「あぁ、ここに居ましたか。啓作様、書類が届いています。ご確認を───」
また邪魔が入った。これじゃオレは学校が始まるまで聞けないのか・・・?
暗いと言うよりもモヤモヤしたものがオレを埋めていく。
「・・・悪いが書類は後回しだ。それとしばらく席を外して欲しい」
オレの気持ちを察してなのか啓作が執事さんを後回しにした。
嬉しいけど・・・オレが聞きたいのは啓作の事。まだオレが知らない啓作の事だ。
「で、聞きたい事は?」
執事さんが去ってから啓作はストレートに聞いて来る。
「オレが聞きたいのは・・・」
どれから聞こうか・・・。
どれも簡単に聞けない気もする。
深入りしたらそれこそ溝が出来そうな話を聞きたいんだ。
だから、どれも簡単に聞けない。
「・・・クリスマスのアレなら来ているの知っててやってた。オマエの場合、気配がでかいからすぐ分かる」
あぁ、それで続けていた啓作は変態なのか。いや、オレがドアを開けて再度閉めるって分かってたのか。
どっちにしてもそれは聞きたい事だった事に違いない。疑問は残るにしても。
「そ、それだけじゃ───」
「分かってる。どうせ聞いてたんだろ? 電話してたあの時も」
全てお見通しってわけか。手間は省けるけどなんか手の平の上って感じでいい気はしない。
「彼女なんだってな?」
「まぁ・・・そうだな。難病だけど」
それで外国の病院か。
「しかし、普段は彼女に電話なんかしてないだろ?」
「確かに電話はしていない。手紙はしているけどな」
手紙とは古風な・・・。
「でも、年末にかけてたじゃないか。新しい事を伝えるみたいに」
ちょっと嫉妬だな。情けないくらいに情がこもる。
「そりゃ新しい事だったからな。それに年末だと手紙が届かなくてな」
・・・そういう事なのか。
なんか興醒めだな。もっとラブラブかと思ってたら案外クールな付き合いっぽいな。
「で、彼女の名前はなんて言うんだ?」
名前は聞いておかないと初めましてがあるかも知れない。
「秘密だ。ひ・み・つ。麒代と会う事なんてない。俺だってここ2年近くあってないしな」
ん? つまり付き合いだしてすぐに難病発覚で啓作が金を出したって事なのか?
なんだか都合のいい男にされている気がするな。
「不満は無いのかよッ?!!」
あまりに素っ気無い啓作に何故か感情が爆発してしまった。
「無いって言ったら嘘になるけどあるって言っても嘘になる。曖昧だしな」
それってつまり自分でも恋愛かどうか分からないって言ってるようなものじゃないのか?
どうにも腑に落ちない。オレが腑に落ちなくてもそれで関係が成り立ってる仲を裂く程ではないけれど。
「そうか・・・」
がっかりした。と言えば聞こえはいい。
オレが誰かを好きになって恋愛にって事が無いから嫉妬していると言えば簡単だ。
とは言っても、親友が恋愛かも分からないような関係を続けて不満はあるけど無いに等しいなんて事は言って欲しくなかった。
それが本当の恋愛ならオレは耐えられないだろう。
「・・・なぁ啓作はキスとかってした事あるのか?」
不意に思った事を口走る。付き合ってすぐに離れ離れになっているならキスは未経験かも知れない。
もし、そうならそれは歪だけどまだ健全なお友達だ。
キスまでしているなら恋愛に近いお友達だ。
どっちにしてもオレは後には退けない言葉を漏らしている。
「どうなんだろうな」
濁された。どっちなんだよ・・・啓作。
あまりに濁すって事は爛れた関係だったりするのか?
啓作なら・・・ありえるんだよな。
それとも、恥ずかしくて言えないだけか?
なんだか一線引かれてるようで踏み込めない。
踏み込んでも拒絶されている感じだ。
オレは・・・
「オレとしては知っておきたいって思ったけど啓作はそこまでプライベートな事に踏み込んで欲しくないのか」
まぁ普通はそりゃそうだろうけど。
オレはまだ距離を感じる親友ともう少し気軽な関係になりたい。あるのはそれだけだ。
「どちらかと言うと踏み込みすぎなくらいだろ」
啓作の言葉が突き刺さる。
そんなに踏み込んでるか? オレ・・・。
いや、感覚の違いか。
オレの場合はもうちょっと親密なくらいが丁度いいんだけど啓作にとってはこれでもかなり親密なんだろう。
距離感って難しいな・・・。
「なぁ───」
啓作の方に向いた途端にオレは何が起きたかわからなかった。
「もしも、親友だと思ってた奴にこんな事されたらイヤだろ?」
啓作の言葉も曖昧に唇に今更伝わってきた感覚を思い出す。
「え? ちょ、ちょ、ちょっと待て。どういう事だ!?」
思考が一気に混乱する。
オレは今・・・啓作にキスされたのか?!
「俺は男でも女でもこういうのは抵抗無い。だけどな、普通に好きでも無い奴にやるとさすがに・・・う」
おぃ、オマエからしておいてその反応は何だ。
オレの方がどうしていいかわからないじゃないか。
「でだ・・・オマエが踏み込もうとしてるのはこういう俺もイヤになる領域だって事だ。これ以上踏み込まないでくれ・・・」
啓作・・・抵抗無いって言ってたくせに一番堪えてるだろ・・・。
オレのファーストキスは啓作に奪われた。
しかも、嫌がらせと言う形で。
のちにこれが何故か学校でバレて話題になったのは言うまでも無い。




