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キョウゲキ部

始業式も終わって2学期。

オレは相変わらず生徒会長とは睨み合い、副会長には伸される日々に戻っていた。

「はぁ?!」

それはある日の朝、突然だった。机に紙が貼ってあった。

内容は───

『1学期中に部活に入らなかった者へ警告。

今月中に部活への入部申請が無い場合は強制的に我が部へ来て貰う。

我が高校に帰宅部など存在しない!!

帰宅部など認めるつもりも無い。』

この紙は啓作と義一の机にも貼ってある。

何処の誰だか知らないが黙ってその部活に入るつもりも無い。

乱暴な字の紙くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てる。

宿題を忘れてその罰として宿題を多めに出されていると言うのにこういう強制勧誘なんてごめんだ。

それに・・・啓作の部活設立の件がどうなったって事もあるしな・・・。

「おはよーさん」

「ん」

そんな事を考えていると啓作と義一が登校してきた。

もちろん、机の紙を見ている。

「ほー部活ねぇ・・・あんまり入る気無いんやけども」

やっぱり義一は部活への興味が少ないらしい。

啓作はと言うと見た瞬間に溜息をついて紙を捨てていた。

「下らない。これだから体育会系の部活は・・・。ともあれ部活・・・」

そう、部活。オレ達にはまだ部活は無い。だから勧誘を受けるのも当然だ。

義一に限っては夏休み直前の編入と言う事もあって今頃の勧誘なんだろうが。

まぁそれよりもだ。

「啓作の計画していた部活の方はどうなったんだ?」

わざとこの話題を振ってみる。

「ん、あー・・・部員が集まらないから同好会からスタートだろうな・・・」

つまりは最低限の人数が集まってないと言う事か。

「最低人数はどれくらい必要なんだ?」

机の上に腰掛けて再度聞く。

「部員2名以上と顧問1名が最低条件。後、目的がハッキリしないとダメらしい」

「目的?」

そういえば啓作が部を作る理由や目的はオレも知らないな・・・。

「まぁ目標とかでもいいらしいけど、理由が道楽だからな」

啓作の道楽って事はゲームだとかがメインと言う事か。

そうなると申請が通るって事は難しいだろうな。

「部の名前は決めてるん?」

義一が話に食いついてきた。

「部の名前も実はまだだったり・・・と言う」

つまりは部としての看板である名前すら無いのか。

それじゃ申請以前の話だな。

「この三人で部活やるにしても名前が無いんじゃ目的とかもハッキリはしないよな」

「ぇ、ワイは部活やらんよ?」

「強制入部で体育会系でみっちり扱かれるか?」

「そ、それは堪忍やな・・・。しゃーない・・・」

オレは当然のように義一も巻き込む。そして、逃げることは不可能と言う事も言い含めてうまく言い包めた。

「で、部活の名前か・・・」

「どうするんよ?」

オレ達の視線は啓作に向く。

「・・・一晩考えておく」

歯切れが悪くなった。また一人で抱え込むつもりだろう。

「放課後、一緒に考えようぜ」

「そやな。なるべく愛着沸く様にしたいな」

これで過去の罪滅ぼしが出来るとは思わない。

でも、やるなら後ろよりも前を向いて突き進む。

悩んで立ち止まるなら一緒に立ち止まる。

置いてけぼりにしたら・・・後で後悔するだけだ。

そうやって登校してからの数分はあっという間に過ぎてホームルーム。


「えー部活未入部の者には色々勧誘があったと思うが、今回それを行った部活に対して生徒会が決定を下した。

その部活は全国大会への出場を停止。また強制勧誘の疑いもあるという事から活動自粛になった。

この学校に未入部の生徒を強制勧誘する制度は無いから安心してくれ。と言う事だ。それから────」

どうも生徒会長もこういう奴は許せないらしい。

正義と言うか根本的な事はオレと同じ・・・?

いやいや、それは無いな。ただ、単に学校を荒らされるのがイヤなだけだろう。

それはそれとしてだ。オレ達の部活作成計画はもう走り出している。

多分、生徒会とは敵対する事になるだろう。オレは特に。

それでも、後悔しないように突き進んで意地でも部活として認めてもらう。

そうすれば・・・少なくともこういう勧誘騒ぎが起きることも無いだろうから。

で、肝心の部活の名前か・・・。

啓作の場合はゲーム要素を盛り込まないと確実に不貞腐れるし・・・。

義一の場合はあまり重々しいとダメっぽいな。

となると堅苦しいだとか礼儀を重んじる傾向はダメと。

そうなるとまず、スポーツだとかは消えるか。

オレの場合はワケアリって意外は何でも・・・とはいかなくてもある程度は出来る。

ルールを知らないのもあるのはしょうがない。

だが、文系とかの堅苦しい傾向は嫌いだな。蹴落とし合いとかの中に居る・・・そういうのはムリだ。

そうすると特殊な部活か・・・。

演劇とかは特殊と言えば特殊か。基礎体力の面ではスポーツ系、劇を演じると言うのは文系だしな。

しかし、この学校には演劇部はもちろんある。

他にも時代劇研究部とか言うのもある。殺陣部と言うのもあったな。

劇そのものでも色々あるからな・・・。

ただ、劇そのものをやると言い出したら多分啓作も義一も嫌がるだろう。

第一、誘導はしても内容そのものの決定権は言いだしっぺの啓作だしな。

オレが出来るのは部活の名称の案を出すくらいだな。

・・・そういえば何をやるとかって言うの聞いてないな・・・。

そんな事を思っていると頭に衝撃が走る。

「───おぃ。徳間、またボーっとして・・・。そんなんだと勉強についていけなくなるぞ」

名簿で叩かれたらしい。担任が名簿片手にオレの傍に立っていた。

「ぁーぃ」

オレは軽く受け流す。

勉強についていけないとかって言うのは元からあるから気にしていない。

むしろ、そんなんで学校辞めるとか言う程落ちぶれてもいない。

とりあえず休み時間までは何も出来ないな。

啓作に聞く事もあるし───。

そう思いながら、オレは教壇に戻る担任を細目で見て机に顎を置いていた。

授業なんて退屈なだけだ・・・。

周りもオレが名簿で叩かれようと笑う事すらしなくなっている。

それくらいに今のオレは当たり前に居るんだ。

ただ、ずっとある物足りない感触は多分・・・オレがオレ自身の過去にケリをつけないといけない。

それまでは仮初でもいいから喜怒哀楽が欲しい。そんな感じだ。

不貞腐れるようにオレは体勢を変えずに授業を過ごした。

休み時間になって啓作にさっき思っていた事を話す。

「何をやるか・・・なんて決めていない。やりたい事を悔い無く全てやる。そんな部活にしたい」

つまりは気の向くまま風の向くまま。往く先は風に訊けってところか。

なら、部活の名前は色んな意味を持たせられるものの方がいいな。

そうなると英語だとかはダメだ・・・。意味があまりに限られる。

同様に漢字もダメか・・・。ひらがな・・・インパクトだとか色々不満出そうだな。

カタカナ・・・か。

字体はカタカナとして・・・名前、名称・・・。

「とりあえず、部活の名前はカタカナで表記する感じだな」

一先ずこれを言っておかないと変な名前が出てきそうだ。

「カタカナかー。どんなんがええんやろ・・・」

「アラガミとか?」

「啓作、それはゲームに出てるだろ・・・」

それにアラガミってしたら・・・どんな事するんだよ・・・。

捕食か? それとも侵蝕か? どの道部活の名前としては使えないだろ。

考え込んでいると声が迫ってきていた。

「大凶じゃああああああああああああああああああ」

廊下に目をやると吉大が走っていく。結局あいつは大凶の口癖直らなかったのか。

大凶・・・。凶・・・。キョウ・・・?

劇・・・ゲキ・・・。ふむ・・・。

「キョウゲキ部、これなんてどうだ?」

もはや、単語だ。何をするかなんてこれじゃ分からない。

「キョウゲキか・・・色々な意味で取れるな」

啓作は結構納得がいってるんだろう。否定しない。

義一は・・・目をキラキラと輝かせている。つまりはこれで決定か。

「で、部活内容はどうするんだ?」

ここが肝心。決まらなくても申請出来るだろうが・・・決まらないと何も出来ない気がする。

「まぁゲキだし、演じる事も含めて申請しておく」

そういう事ならその辺は啓作に任せるか。

兎にも角にもオレ達3人でキョウゲキ部と言う、まだ何をするかも分からない部活が設立された。

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