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1年目の夏休み佳境

色んな事があったが夏休みも佳境。

一番盛り上がる頃と言えば聞こえはいいがオレは宿題と言うのをやっていない。

そんな時の今日。電話があった。

『あー俺、啓作』

「啓作? どうした?」

『義一も誘ってるんだけどさ。三人で小旅行しないか?』

「え?」

『当然の反応だけど、日帰りでどっか地方行かないかって事』

いや、それはいいんだけど・・・宿題とかそろそろやらないとマズイ気がするんだが。

「宿題───」

『課題レポートの為に行くって言ってもか?』

それなら話は別。正直、課題レポートとか面倒でどうしようかって考えていたところだ。

「何時に何処で待ち合わせなんだ?」

『────、駅前で集合。行く場所は秘密って事で』

1時間後に駅前か。オレは了承して電話を切る。

・・・そういえば金あったかな・・・。

家賃だとかは別に心配要らないが毎月の小遣いはオレの銀行口座に振り込まれる。

で、全部おろして財布の中なわけだが残金がいくら残ってるとか計算するのが面倒で計算してない。

まぁ残金がいくらあるかだけでも確認しないとな。

そう思って部屋に戻る。部屋の机の上に無造作に放り出してある物の中から財布を探す。

いつも何処かに置いてて、たまに行方不明になるから困る。

がさごそ。

あったにはあった。さて、どれくらい残っているんだろうか。

財布を開けてまずはレシートがごっそり。

大人になるんだったら帳簿をつけろって言われてるから貰ってるけどさすがに帳簿つける気は無い。

とりあえず大量のレシートを机にしまう。残ったのは数枚のお札と小銭。

「えっと・・・とりあえずは大丈夫か」

大雑把に目視だけで計算する。いちいち出してまで計算なんかはしない。

・・・昼飯とか早めに食っておくか・・・。

一時間後となれば作れるのはカップメンとかそのあたりか。

急いでキッチンに向かい棚を開けてカップメンを出す。その後ろにインスタントのやきそばもある。

腹に溜まるものならやきそばか。

で、お湯を沸かし手順どおりにやきそばを作る。

最後にソースと青海苔を絡めて出来上がりなんだが、とりあえず出来たやきそばをそのままに冷蔵庫を開ける。

「オレはこっちの方が好みなんだよな」

取り出すはマヨネーズ。それでマヨネーズを出来たばかりのやきそばにドバーっとかける。

「時間は・・・やばっ、さっさと食わねぇと」

大よそだが残り45分。

キッチンの片付けだとかも放り出してテーブルで食べる。

食べ終わってすぐに財布を持って家を飛び出す。

時間的には多分間に合うはずだ。


こんな時期に男三人で何処に行こうと言うのだろうか?

リゾートのような場所。は無いな。

近場ってわけでも無いだろうし、だからと言って関西方面に行くような遠出はしないだろう。

オレは待ち合わせ場所に向かいつつ、今から行く場所に期待をしていた。

「よぉ」

先に待っていたのは義一だった。辺りを見渡すが啓作が居ない。

「啓作は?」

「すぐ来るやろ」

「二人ともいるな」

そんな事を言ってる間に啓作も来た。

手を拭いてる辺りトイレにでも行ってたのだろう。

「とりあえず義一と麒代の所持金がどれくらいあるかは知らないから俺が負担するつもりでいる」

ぇ、それじゃ旅費は啓作持ち?

安堵と共になんか悪い気がした。

「とは言ってもだ。あっちに行ってからの食事とかまでは面倒見れないからな」

つまり買い食いは自分の金でやれと。まぁ旅費だけ出してもらえるだけでいいかな。

特に大荷物って程持ってきてるわけでもないから何処に行くか気楽でいいか。

「んじゃ、切符買ってくる」

そう言って啓作は切符売り場に向かう。

しばらくして、啓作が戻ってきて切符を渡された。どうも新幹線で行く・・・らしい。

行き先は・・・宮城、仙台か。この時期なんかあったっけ・・・。

そんな期待と思いを乗せて新幹線は発車する。

新幹線だから早いと思ったが中々に退屈だ。

「まだやろか?」

義一がうるさくなってきた。

多分、オレ達の街から北東方面に行くのは始めてなんだろう。

そんな義一を放ってオレは携帯で宮城に行く理由を検索する。

「ふぅーん────」

理由は分かった。だが、これの為だけにわざわざオレと義一を呼ぶ必要はあるのだろうか?

しかも当日で。

サプライズって言う程では無いにせよ、オレ達を呼んだ理由はなんだろうか。

行く理由は該当があるから分かる。が、オレ達を誘った理由は分からない。

理由なんて無いかも知れない。気まぐれ・・・だとしても珍しい事だ。

知り合ってそんなに経ってないからかも知れないが啓作の知らない一面ばかりだ。

いや、オレが何も知らなさ過ぎるだけか。

「・・・知らない土地に行くか・・・」

期待もあれど不安もある。正直はぐれたらヤバイだろう。

まぁ最悪はぐれたら電話すればいいか。

で、誘った本人はと言えば携帯ゲーム機だとか大量に持ってきているようで・・・。

暇つぶしには事欠かない感じだ。

オレは・・・そういうのとは少し縁遠いせいかゲームではカモにされるし買うって感じもしない。

一人でチマチマやるのはどうにも性に合わない。

だから、今も携帯でとりあえずの目的を確認した後は窓から景色を見るだけと言う状態だ。

(そういえば啓作の誕生日も義一の誕生日も知らないんだよな・・・)

本当に知らない事だらけだ。

「なぁなぁ、麒代も啓作も誕生日いつなん?」

義一ナイスタイミング。

「オレは6月18日だ。義一が転校してくる前に誕生日終わってるよ」

そう、オレはもう16歳。いつまでも中学生って感じではいられない。

「俺は7月14日。こないだ誕生日迎えたばかり」

へぇ、啓作の誕生日こないだだったんだ。

「そういう、義一はいつ誕生日なんだ?」

こういう話題ってきっかけがあると聞きやすいな。

「ぇ、ワイ?! ワイは・・・11月15日・・・。まだ15なんよ・・・」

あれ、急に空気変わった。

「別にまだ誕生日来てないのは問題無いと思うな」

誕生日ってその人にとっては誇るべき日じゃないか? ってオレは思う。

その辺、何か事情ありそうだけど。今聞く事じゃないな。

「・・・後1時間もしたら着くから空気変えろよな」

ぇぇ?! 啓作ちょっと機嫌悪くなってないか?!

誰かこの悪い空気なんとかしてくれ・・・。

思い出すのは・・・副会長のパ・・・とび蹴りだとかドロップキック。

あれで結構空気が変わってたな・・・。今思っても出てこないんだけども。

少し残念な気持ちを抱くも何も変わらない。

「と、とりあえず仙台着いたら何するんだ?」

無理やり話題を変えにかかる。

「仙台に着いたら目的を達成しに行く」

啓作の答えは真っ直ぐ目的だけって感じだ。

「え~ワイは色々見たいな~」

目的よりも寄り道万歳的な義一。これは揉めるかもな・・・。

そう思っていたがそこから揉めるどころか沈黙があたりを包む。

いや、なんて言うか空気重い・・・。

啓作はゲームに視線戻して話す気が無い感じだし。

義一は義一であたりをキョロキョロと子供っぽい。

まぁ子供なんだけども。

オレはこの微妙な空気に耐えられずにやっぱり窓から外を見る。

これじゃさっき変わらない。少なくとも傍からは仲良しって感じじゃないだろ。

一人は嫌々、一人は淡々、一人は嬉々。皆てんでばらばら。

空気は悪いし、関係は微妙。縁があって一緒にって感じだけどあまり考えは同じと言う程に纏まってはいない。

つまりはそういう事だ。縁が無かったら多分一緒に行動なんてしてない。

目的があるとは言っても時間もあるだろうから寄り道も出来るだろう。

だからオレとしては目的の時間までは少し寄り道したっていいんじゃないかと。

啓作みたいに目的だけってわけでも義一みたいに寄り道だけって言うのもなんか違うはずだ。

だから、オレが引っ張って・・・って程技量とかは無いんだよな・・・。

そんな事をやってる間に新幹線は白石蔵王まで来ていた。

次は仙台。目的の地。


──仙台。

目的の場所に来たオレ達。

オレが調べた通りなら啓作の目的はアレだ。

とは言っても空気は微妙なんだけども。

「俺としてはもうちょっと時間かかると思ってたけど案外早いな」

えぇ・・・来た事あるんじゃないのかよ?!

何もする事無いじゃんか。近くになんか無いか・・・?

とりあえず周辺MAPを携帯で出してみる。

「お、アニメイトあるって」

「ワイ、色んなところ行きたいんやけど」

義一、分かるがさすがに皆初めてだと道迷う。

「と、とりあえずアニメイト・・・見るだけ見てみようぜ」

そう言ってナビを起動する。

案外近いな。まず、駅前から少し移動・・・。

んで細い道を入って・・・。

「ここ・・・なのか?」

ナビの示す場所はどう見ても魚屋だ。

「ここがアニメイト・・・? どう見ても違うだろ・・・」

案内は間違っていないんだが、どう見ても魚屋だ。

これはどういうことだ?

辺りを見渡す。オタクっぽい人って言うのが案外見当たらない。

これはいよいよ道に迷ったか・・・?

と思ってたが魚屋の二階に入っていく人が見えた。

「・・・上?」

魚屋のちょっと脇に階段があった。

そこにはびっしりアニメだとかのポスターが貼ってある。

間違い・・・ないだろう。ここがアニメイトのはずだ。

にしても魚屋の上か。盲点だな。

こういうのは珍しいと言うより他にはあんまり無いだろって思う。

アニメイトに入って驚いたが少し狭い。

「なんかむわーって暑いんやけど・・・」

冷房効いてないのか?って思ったがそれよりも圧倒的に人数の多さが原因だと分かる。

冷房かけて暑い、いや熱い。

まずは奥から・・・って思ったらカードゲームのデッキだとかも置いてある。

アニメイトだけど色々あるんだな。

あー流行ってたSAOだとかAWだとかもあるのか。

この辺はさすがアニメイトだと思う。

「で、なんでこんなに萌え系しかもちょっとR指定入りそうなのまであるんだ?!」

正直オレには目の毒だ。

啓作は平気のようだけど義一もちょっと赤くなっている。

ちょっと脇道と言うかなんと言うか通路っぽい場所がある。

そこに啓作も連れて退避する。通路は意外と涼しい。

一部だけが異常に熱いんだな。

で、通路を挟んで隣はコスプレショップって所か。

更に通路の奥にはカードショップ・・・?

ここだけでも店ひしめいてる感じで窮屈そうだ。

「さ、さすがにオレこれはムリだ・・・」

そう言ってる間にも熱気酔いしそうだ。

それはそうと今の時間は何時だ?

『17:35』

「啓作、時間大丈夫か?」

携帯で時間を確認して啓作に聞く。

「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ行こう」

やっぱりアレの為に来たのは確実みたいだ。

8月5日、宮城県仙台市、19:00~20:30までこの時間限定でのイベント。

オレ達は仙台駅から歩いてその場所まで向かう。

1時間前にあの辺に居ればいい思い出は出来る。

レポートの提出をするにはちょっと不足な気もするけども、まぁ課題は夏だ。問題無いはず。

啓作が携帯で場所を確認しながら歩く。

足取りは重たいわけでは無いが少し道に迷いそうになっては止まっている。

時間的には後1時間くらいだろうか。

歩いて歩いて曲がったり信号に引っかかったり。

それで目的の場所と思われる公園に着いた。

木々が多くてオレ的には見難いだろうと感じる。

そして、何より人が多い。祭り事に人が集まるのは当然か。

こう人が多いと場所取りは大変だろう。

もう1時間前で場所もほとんど埋まっている感じだ。

時計を確認する。後30分。

時間は迫る。けど計画無しで来ているオレ達に場所なんて早々巡っては来ない。

慌てる様子も無い啓作に対してオレは結構焦る。義一は分からず付いてくる感じだ。

薄暗い中で暑さは増して更には人の熱気で暑苦しい。

辺りにある露店で冷たいものでも買いたいくらいだ。

そう思いながらも場所を探していると───。

ヒューン。バーン。

1発目の花火が打ち上がった。

啓作がオレ達を誘った最大の目的。

仙台七夕前夜祭である花火祭り。仙台の夏の風物詩と言われるくらいの花火だ。

「あーもう始まったな・・・どっか場所確保しねぇと見れねぇじゃんか・・・」

1発目からバッチリ見たいと思ったがガッカリ感で不貞腐れてしまう。

そう思った瞬間に何かに引き寄せられオレは彷徨いだす。

それに啓作や義一が付いて来てるかは知らない。ただ、歩く。

着いたのは公園の端とでも言うべきか。木々が少なく道路に面している場所。

「おーここなら見えるんやな」

義一は付いて来ていた。振り返ると啓作も居る。

「とりあえず写メととこっと」

義一の一言でオレも写メを撮る。

「啓作の目的はこれだろ?」

返事は無い。でも、確実に魅入っているから間違いは無いだろう。

花火はどんどん打ち上がる。オレもだんだんとそれに吸い込まれていく。

時間すら忘れる程に魅力的に打ち上がる花火。

その場の時間が止まってしまえばしばらくは楽しめる。

そう思わせてくれる程、この光景は印象に残る。

色んな意味で今は着て良かった。そう思える。

そりゃ一人で見たってつまらないだろう。

だから、このメンツで来たんだと思う事にした。

高校生最初の夏休みだからこそ思い出は色濃く残したかった。

本当に啓作の思いがそうだったかは別としてもオレにはこの日は色濃い思い出の一つになった。

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