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17/42

not文武両道

ゲーセンだと啓作が強かった。

なんと言うか人が変わったように集中していた。

で、義一もそれなりにゲームは得意なようで・・・。

オレだけが平凡でダメダメだった。


夏休み3日目。

文武の武に当たるスポーツ等は合宿に出る。

文に当たる部活はまだ合宿ではない。

オレ達三人にとっては部活にまだ入ってないから関係無いのだが。

「そういえば・・・」

そういえば副会長は武系の部活の部長で・・・。生徒会長は何の部活やっているか知らない。

二人ともスポーツ系ならば合宿に出ていないはずだ。

少なくとも副会長は確実にいない。つまりはそれだけ負担が減ると言うことだ。

「今日はどうすっか・・・」

マルの散歩をしながら思う。宿題よりもこの夏休みをエンジョイする方法を。

「一昨日はプール行ったしな・・・」

ならばお泊り会・・・いや、男同士でやるようなもんじゃないな。

・・・特に思いつかない。

マルはオレが考え事をしているせいなのか進む速度がいつもより遅い。

「あぁ、悪い。マルのペースで大丈夫だから」

そう一言かけてやると歩く速度が少し速くなった。

いつもならこういう時に何かあると副会長だとかが絡んで来るんだけども──。

「ってそれじゃ縛られている事に喜んでるみたいじゃないかっ!?」

自分で自分が嫌になる。と言うより幻滅だ。

なんで、そう思うんだか・・・。

逆に居ないのだからゆっくり出来るだろ。

オレはオレ自身にそう言い聞かせてマルとの散歩を終える。

家に帰ってすぐにビックリした。

自宅の電話に義一から留守電が10件も着ていたからだ。

『あ、麒代? って留守電か』

『麒代、なんかしようや~』

『麒代、啓作にも連絡したら今日は啓作の家でゲーム大会になったんや。準備できたら啓作の家集合でな』

『悪い麒代、ワイ・・・啓作の家知らんかった』

『麒代の家に・・・って麒代の家も知らんかった』

『昼飯食ったら学校で合流頼むで』

『麒代、お泊りちゃうからそういうもんはいらんで?』

迷惑と言うくらいに短い留守電が・・・。ちょっと困惑する。

つまりは啓作の家でゲームする、だけど義一はオレの家も啓作の家も知らないから学校で一旦合流頼むと。

合流は昼飯後で泊まるわけじゃないと。

他にも余計な留守電が入ってたが義一の下らないくらいの留守電全てを削除して考える。

ゲームと言う事は確実にオレは・・・カモにされるだろうと。

いや、ゲームがまったく出来ないわけじゃない。

ただ、啓作程のヘビーユーザーでも無ければ義一みたいに適応力が強いわけでもない。

そういう意味では平凡なゲーマーのオレはカモだ。


そんなこんなで時間はあっという間に過ぎて合流する時間。

結局、義一に電話の返事はしなかった。いや、直感で長くなると思ったから。

「そういえば、啓作もそうだけど義一とも携帯の電話番号交換してなかったな・・・」

だから、連絡網にある自宅に掛かってきたわけなんだが。

今日、啓作の家に行ったあたりで交換すればいいか。

で、学校に着いたが門は閉まってる。合宿だとかで居ない人が多い事を考えれば当然か。

とは言っても、門の前には誰も居ない。

義一はいつ来るんだ?

昼飯を少し早めに終えたオレからすれば昼飯の後って言うのは結構時間差があるような気がしていた。

とりあえず待つ。退屈だからしゃがんだりウロウロしてみたり。結構怪しい状態で待つ。

「おー、すまんすまん。昼飯出来るのが遅くてなー」

しばらく待たされたが義一が来た。悪びれるつもりはあるのかないのかさっぱりだが。

「啓作の家ってどの辺なん?」

さっそく話題を強引に持ってかれる。こういう時、わざと先にオレの家も案内するべきだろうか?

悩んでいる暇は・・・そんなに無さそうだ。義一は既に歩き出している。

「麒代、こっちか?」

オレより前に歩く義一は分かれ道に着く度にこっちかと聞く。

それはそれでいいんだが・・・。正直、案内する意味あるのか?

まぁ・・・啓作の家でゲームすると言うこじつけがある以上無いとは言えないか。

だとしても、義一が前なのは少しおかしいだろ・・・。

っとそろそろ止めないと啓作の家を通り過ぎそうだ。

スタスタ。やはり義一は啓作の家を通り過ぎた。

「義一、啓作の家はここだ」

正直義一の案内は疲れた。

此間、オレは突入したが・・・今回はインターホンを鳴らしてみるか。

ピンポーン。反応が無い。ってまたいたずら仕込んでないよな・・・。

「あれ? 啓作反応無いな。入っていいんか?」

義一、それはフラグだ。入ったら確実になんか待ってると思うんだが。

オレが止める暇も無く義一はズケズケと入っていく。オレも仕方なく付いて行く。

で、部屋数は以前と同じだがドアを変えたのだろうか・・・若干違和感を感じる。

啓作が居るとすれば・・・前と同じ一番奥のベッドルームだろうか。それとも別の部屋か?

マネキンもあるとすれば何処かに仕込んでいる可能性はある。

正直あれで騙される方が心臓には悪い。義一がどうなるかも見物ではあるが・・・。

そろそろ言っておいた方がいいか? って義一ドア開けてまくってるし・・・。

「啓作、そろそろ出てきたらどうだ?」

オレはとりあえず家全体に聞こえるように大きな声で言ってみた。

反応は無い。あくまでいたずらに拘るのか・・・?

まぁここは啓作の家、まさに領域。啓作がそうしたいならそうなるんだろう。

とは言ってもいい加減出てきて欲しいが。

「啓作ー?」

義一は乗ってるのかなんなのか・・・探し続けている。

「こいつら・・・子供か・・・?」

って言うオレもまだ子供なんだが・・・。オレより下に感じるのは気のせいか?

それよりもだ。そろそろかくれんぼは終わりにして欲しい。

そういうわけでオレも結局探す。

真っ先にベッドルームへ。・・・あったよ。やっぱりマネキンあったよ。

ってかこないだと同じじゃんか。なんであんな風に寝かせておく必要がある?!

「おい、啓作。またマネキン──」

これ本当にマネキンだよな・・・。

前もそうだったけどマネキンリアル過ぎて判別不能に近い。

マネキン?に近づく。すると後ろから口を押さえこまれた。

「んぐぅぐぐっ」

「静かに俺だ、俺」

抵抗を辞めると離してくれた。で、後ろを見ると啓作が居る。

やっぱりこっちはマネキンか。

「で、何のマネだ?」

オレが声をちょっと張るだけで静かにってされる。

多分、義一に対しての悪戯なんだろう。

「・・・手伝えって事か?」

頷く啓作。義一を悪戯に引っ掛けるのが目的らしい。

ってかどんだけ子供っぽい事してんだよ啓作。

義一にこういうのが通じるとは思わないんだが・・・。

「これも立派な『ゲーム』だろう?」

ゲームっててっきりテレビゲームだとばかり・・・。

いや、そっちもやるんだろうけどこれもゲームとは思わなかった。

で、オレはネタを知っている不穏分子で排除すべき対象。

つまりは啓作の側で手伝うのは必然、と言うわけか。

さしずめこの家そのものが啓作の言うゲームの・・・リアルゲームのエリアなのだろうな。

だから、義一の反応云々よりもゲームを楽しむのが先と言う事か。

なら、オレは結果を見届けよう。どんな結果だろうと多分啓作にとっては楽しい事の一つなのだろうから。

親友の意外な一面、と言うよりは歪んだ部分を見た気がした。

「ん、そろそろ来るだろう」

啓作が動く。オレも付いて行く。

以前は気がつかなかったが何処に隠れていたかが今分かる。

啓作が止まったのは壁。この中にでも入るのか?

どっかの仕掛けみたいに扉になっているのだろうか?

と、思ったが啓作は普通に紙のようなものをめくる。

「そんな簡単な仕組みなのかよッ」

正直、簡素過ぎるだろ。ってか窓とか開いててよくこれめくれないよな・・・。

壁の中には小部屋くらいのスペースとイスと各部屋を何処からか撮ってる映像。

って、これだけの為にどれだけ金を費やしてんだよ・・・。

義一がオレ達が居たベットルームへとやってきた。


来た直後にマネキンは発見されている。

が、あまり微動だにしない義一。

辺りを見渡しているがオレ達がいるこの狭い空間には気付かないだろう。

オレだって最初に来た時には気付かなかったんだから。

「・・・ワイの負けや。啓作何処におるん? ってか麒代も何処におるんや?」

やっぱり義一にあのマネキンは通じないらしい。

と言うよりまずマネキンに気付いてるかも怪しいが。

オレが出ようとすると啓作がオレの左手首を掴んで止める。

そして、何処から用意したのかフリップに何か書く。

『後、10分はこのまま。用意が出来るまでは出ない事』

何を用意しているというんだ?

それどころか、10分義一を放置するって・・・。啓作に罪悪感とかは無いのか?

「オレは我慢出来ない」

そう啓作の耳元で囁いてからオレは壁から出る。

「おー麒代、そこか。啓作もそこやな。で、この人形はなんや? 妙にリアルでキモイんやけど──」

義一の言葉の弾丸がバシバシ飛ぶ。オレはこれを答えられないでいる。

それどころか義一の言葉の弾丸の速さにオレは喋らせてもらえない。

啓作はこれを予測していたんだろうか?

いや、それより何かの用意をしているんだろう。

何を用意しているかは知らないが。

「んで、啓作はなんで出てこん? っとこの家、見た目より広いなァ」

義一、いい加減オレが呆れて居る事に気付いて欲しいんだが・・・。

そんなこんなで義一の相手をしているとすぐに10分経過した。

「準備出来たんだが・・・」

啓作が壁から出てくる。義一の言葉攻めは急にピタっと止まる。

「おー何をやるんや?」

義一の興味はマネキンから用意されたものへとすぐに移る。

「とりあえずこっちだ」

そういう啓作に案内されてオレと義一は壁に入る。

壁の中でやるのかと思ったが、あそこは通路も兼ねているようだ。

壁を抜けてオレも入るのが初めての部屋に入る。

「ここはあの壁からしか入れないんだ」

つまりは隠し部屋的な感じなんだろうな。

辺りを見渡す。部屋一面に棚がありその中にはゲームのソフトや本体が大量に保管されていた。

中には激レアと言われるような物まである。

「で、何をやるんや?」

義一は啓作にやる物の詳細を催促している。

「これだ、これ」

部屋に一台あるテレビには最新のゲーム機が置いてあった。

確か、Winだったか?

ちらっとCMを見る程度でまだ高額のゲームが平然と置いてある。

「で、ソフトは何が入ってるんだ?」

「大乱闘DX」

どうせカモにされるゲームの内容をオレは聞く。

返ってきたのはゲームのタイトルだけだったが。

とりあえず、オレと義一とNPCの三人対啓作と言う対図でやるらしい。

ゲームが始まって手早く設定をすると啓作はお気に入りであろうキャラを選択する。

オレと義一も適当にキャラを選んで始める。

啓作は手を抜いてるのか自分からは襲ってこない。

オレが突っ走ると義一が止める。啓作の動かないのも作戦の一つなのだろう。

とは言ってもタイムアタック戦ではないからどちらかが仕掛けるしかない。

玉砕覚悟でオレがキャラを動かす。もちろん啓作のカウンターを食らって1死で残り3。

結局、イマイチコツが掴めないままに一戦目はボロ負け。

これって義一もカモ扱いなのか?!

と言う事でとりあえず慣れるためにも啓作抜きで義一と戦う。

結果はオレの負け。オレってここまでゲームの才能無いのかと自覚した瞬間でもあった。

しばらく、そうやってランダムに対戦していたが飽きてきた。

「・・・次のゲームに変える?」

聞いてきたのは啓作。もちろん、他にもあるならやってみたい。これがオレと義一の答えだった。

で、出てきたゲームにはR18指定のマークが。

「ってこれはオレ達・・・ま、まだダメだろ?!」

さすがにエロい方の想像しているオレに啓作は首を横に振る。

「これのR18の理由はそのグロさからだ。後これ、プレイヤーは全て味方だから安心していい」

そう言われて改めてタイトルを確認する。タイトルはアンリミテッドグール。無限に沸くゾンビってところか。

R18要素がどんなかは気になるが・・・。これ本当にオレ達の年齢でやっていいのか・・・?

エロい要素・・・は正直眼福ではあるが・・・ゾンビだしな。

ってか、どんだけグロいとかでR18になるんだ?

「はよ、やろや」

そんな疑問も聞く前に義一がソフトをセットする。

起動画面、そしてゲームのタイトル画面。

「って、いきなりこれかッ?!」

明らかにモザイク無しの女ゾンビの肌蹴た胸に男ゾンビの下半身露出。

これは普通に考えてR18だろ・・・。このまま進めて大丈夫か・・・?

ポチポチ。啓作は慣れた手つきで画面を進めていく。

で、協力戦と言う項目に合わせて決定ボタンを押した。

「プレイヤーキャラは至って普通にカッコイイのな」

全部男ってわけじゃないが戦闘服だとか刀だとか結構カッコイイ感じのキャラが多く見られた。

ネタっぽいのもいるが。啓作はギルと言うキャラを選択。義一はそのネタっぽいガイを選択。オレは──。

「オレはどいつにすっかな・・・」

ミストとかもカッコイイけどなんかピンと来ない。で、選んだのはエッジ。

まさに刀が似合うキャラ。

──戦闘開始。開始直前に啓作に言われたが無双的に暴れてゾンビを乱伐すればいいらしい。

まずは一匹目・・・って強ッ、ぇ、何、こいつら。なんか攻撃する度にどんどん服がボロボロになって普通のゲームでは出てはいけない部分が出るのか?!

ちょ、これマジでオレ達がやっていいゲームなのかよッ?!

横目で他のキャラを見るとどんどん討伐している。

オレだけが足手まといっぽい。

で、オレもどんどん攻撃する。一匹目が男ゾンビで出してはいけない部分出てる状態。

これで更に攻撃していくとなんか画面に飛んでくる描写が。

ベチャ。変な効果音と共に画面に張り付いてるのは男のソレ。

オェ、さすがにこれは・・・精神的にダメージが・・・。

結局、そういう変なゲームばかりで疲れた。

今の時間は夜の7時近く。

「義一は家に帰らなくていいのか? 親が──」

「いつも夜勤で遅いから問題ないない」

親が心配するだろう? と言いかけたがそれを遮るようにすぐに切り返す義一。

ってかこのままだと泊る事になるだろ・・・。

「そ、そろそろ帰ろうぜ。泊るんじゃないんだから──」

さすがに泊るのは啓作の迷惑だろうと考えた。

それに男三人同じ屋根の下って言うのもなんか違うだろ。

「そやな、んじゃ帰ろか」


で、見送りに来る啓作。オレ達は靴を履く。

「今日は楽しかった、またな」

「またなぁー」

文武両道なんて出来やしないオレ達の遊ぶ夏休みはまだまだこれからだ。

つってもゲームだけで結構疲れた。

今日はさっさと寝よう・・・。

明日は──。

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