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高校最初の夏休み

「ひゃほぃ」

「やっほー・・・」

「啓作、それ山で言う奴や」

夏休み初日。オレ達は海、ではなく市民プールへ来ていた。

理由としては暑いから。それもあるが義一との親睦を深めるのがオレと啓作のもう一つの理由だ。

オレがプールに大げさに飛び込んで水しぶきをあげる。

啓作は意味の分からない事をしようとしていた。それを義一が突っ込んでいる。

「ぇ、オレだけ浮いてる?!」

二人ともノリがと言うよりオレだけ全体的に浮いてる。

「麒代なんや? 突っ込まれなかったのがそんなに悔しいんか?」

いや、そういうの狙っているつもりは無いんだけども。

正直今は楽しむ事の方が大事だ。

で、啓作は何故プールに入ろうとしない・・・?

義一も何故入らないんだ?

「オマエら入らないのか?」

オレはストレートに聞いた。

「ん・・・義一が入ってから入ろうかと」

「ワイは啓作が入ったら入ろ思ってたんやけど」

最もらしい理由をつける啓作。反撃とばかし義一も入ろうとしない。

「さては泳げないな?」

これも直球で抉りこむ。

「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」

図星!? 啓作泳げないのか?!

「啓作、泳げないんか?」

義一が追い討ちをかける。正直そこは追い討ちかけちゃダメだろ。

「お、泳げなくて悪いか?!」

あ、開き直った。ちょっと可愛い・・・って違う。

泳げなくても水遊びくらいは出来るだろ。

「とりあえず泳ぐ前提でいるからダメなんだ。水遊び程度でならプール入れるだろ?」

オレの問いに啓作は軽く頷く。

プールの端からゆっくり恐る恐る水に入る啓作。

ここで背中どーんしたら確実に溺れる。

そういうのをしないように義一に対して目を光らせる。

「さ、さすがに泳げない奴を突き飛ばすような事はせんで・・・」

苦笑いをする義一。確実にそういう事を一度は考えたって事だろ。

泳げない恥ずかしさからなのか分からないが啓作が黙りこんでいる。

「ムリはするなよ?」

啓作はまた軽く頷く。で、もう一人入らない奴がいる。

「義一、オマエも早く来いよ」

「いや、普通に入ってもおもろないなーって」

そこで笑いを求めるな。なんかもうこういう時、副会長でも居れば───。

「トークーマーキーーーー」

猛烈な勢いで走ってくる何か。声からして副会長。

その勢いのまま義一を突き飛ばす。

バシャン。派手に水しぶきがあがる。

「あ~れー? 今、誰かにぶつかったような気がするけど・・・」

あくまで気付いてないのかこの人!!

「時雨、君は周りを見なさい」

げっ、生徒会長も居るのか。

なんでこういう時に限って・・・。

「時雨、義一君に謝りなさい」

「ぎーち? ん~・・・?」

ピンときてない感じなのか転校生でまだ覚えてないか・・・。

どっちでもいいがこのうつ伏せでプカプカ浮かぶ義一は放っておいていいのか?

「あー、ぎーちゃん?」

「はぁ?」

また妙なあだ名をつけたもんだ。呆れてしまう。

「ごめんごめん。ってぎーちゃん何処?」

この人は目が節穴なのだろうか・・・副会長の足元でうつ伏せの義一がプカプカ浮いているではないか。

「時雨、謝る人物は足元です」

さすがに生徒会長もこれは呆れるか。指摘するのも当然な気がした。

「あー。ぎーちゃん大丈夫?」

片手でザバっとプールサイドに義一を引き上げる副会長。やはり体型に似合わず力が強い。

「これ死んでないよね?」

のん気にオレ達に聞くなっ!

「さ、さぁ? 確かめてみましょうか?」

お願いするよと軽く言われたが本当に息しているだろうか・・・?

口元に手を軽く当てる。息はしてない。・・・と、とりあえず心臓が動いてれば問題無いはずだ。

オレはそっと鳩尾に手を当てる。ドクン。心臓は動いている。

って事は気絶してるだけか?

・・・いや、普通の人間だったら副会長の突進食らったら気絶くらいはするか。オレみたいに毎回食らって耐性付いてるのと違って。

「とりあえず死んではないけど・・・多分気絶してます」

その一言を聞いて副会長がなんかの構えを取る。

ぇ、ちょ、ちょっと待て気絶している相手に何するつもりだ。この人は?!

「トクマキー、ぎーちゃんの上半身起こして~」

は? ぇ? まったく何するのか見えないんですが・・・。

とりあえず言われたとおり義一の上半身を背中を引き上げるように起こす。

「トクマキー違う違う、その状態だとトクマキーが食らうよ?」

はぁ?! ちょ、義一に何食らわせようとしてるんだ!?

「トーケー、トクマキーじゃダメっぽいからぎーちゃんを前から抱きしめるようにトクマキーから奪って」

オレはちょっとポカーンとした。その状態で啓作に前から義一を抱きしめるように奪われた。

「んじゃトクマキー邪魔だからどいてー」

「へっ?」

後ろを振り向くともう構えから動く体勢に入っていた。

いや、既に動いていると言ってもいいだろう。

ってこれ避けられないんじゃ・・・。

とりあえず最大限避ける努力をした。

「せーのっ、肺活ッ」

どーん。そんな音がしそうな技をオレはなんとか避けたが義一はすごい勢いで肺の後ろ辺りを確実刺激されていた。

「げほっ」

どうやら効いたらしい。

「あれ、ワイなんで・・・って啓作なんでワイに・・・ってそういう趣味が?!」

完全に勘違いしている。と言うより元凶は後ろにいる副会長なのだが。

「おまっ、ホ───」

「絶対に違うから。ホモじゃないから」

義一に対してスッゴイ速さで切り返す啓作。

前にもオレとこんな感じのやり取りがあった気がする。

「で、義一、大丈夫か?」

こういうのも慣れてしまっているオレが淡々と聞く。

「あ、あぁ大丈夫や。なんかあったんか?」

逆に覚えてないと言う返事が返ってきた。

と言うより啓作と義一はいつまでその向かい合った状態で座っているのだろうか?

更に言うとはしゃぎすぎの副会長に集まる視線がイタイ。

「おー啓作の髪の毛ってよぅ見ると少し青紫っぽい感じの黒なのな?」

唐突に言い出す義一に少しびっくりした。 向かい合ってた理由はそれか?!

「ワイのは茶髪に近い黒やろ?」

そう言って1本抜いて見せる義一。啓作は軽く頷く。

こいつもかなり天然系・・・か。

「麒代のはどんな感じなん?」

ひょいと立ち上がりオレの髪の毛を見始める義一。

オレの場合は藍色っぽい黒だと言う自覚がある。

「麒代のは・・・青っぽい黒なのなぁ?」

藍色じゃない?! バカな。 そう思って1本抜く。

・・・やはり藍色っぽい黒だと思うんだが・・・。人の感性によるってところか。

「えっと・・・そちらのお二人さんは・・・」

義一、そっちに手を出すのは止せ。確実に伸されたりする。

「ボクのは見てもいいけど抜いちゃダメだよ~?」

怖い笑顔で言う副会長。義一は気にしないで見る。

「譲ちゃんは栗色やな。黒っぽい要素はあんまし無いな」

・・・数秒後、義一は伸されました。

「ぼ、ボクは譲ちゃんじゃない」

そう言って泣くようにして何処かへ行ってしまう副会長。

後は生徒会長くらいだが、普段室内だと光の加減から黒っぽく見えているが今見る限り実際には深緑のような色だと認識した。

「で、先輩達は何故ここへ?」

啓作がジットリした目で質問する。

「今日は僕らの学校で借り切っている。君達知らないで来ていたのか?」

いや、そういう表示とか入り口に書いてなかったんですけど?!

周りを見てみる。学校でもあんまり見ない顔ぶれがいるから気付かなかったがそういえば一部は見た顔だ。

「・・・とりあえず、そこの伸された義一君をどうにか───」

生徒会長はそのまま副会長を追うようにして行ってしまった。

「なんか興醒めだな」

なんか、はしゃいでた気持ちも完全に醒めて居辛くなってきていた。

「このままだとつまらないし義一連れてどっか行こうぜ」

伸されている義一をずるずる引きずってオレと啓作は帰る為に更衣室へと戻った。


その後、義一が目覚めるまで待って目覚めてから気分転換がてらゲーセンで遊ぶ事にしたのだった。

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