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転校生

殴りこみから数週間後。

啓作とは仲直り出来たのでいいとして。帰りの方が大変だった。

啓作を家に送る途中で啓作が倒れ掛かったり。そこであいつに出会った。

「オマエら大丈夫か?」

ちょっとイントネーションが訛っている感じの同い年くらいの奴。

こいつのおかげで啓作を家まで送り届ける事は出来た。

「ほな、な」

後で気づいたが訛りと言うよりは関西弁とかだろう。

ただ、名前を聞くこともお礼を言う事も出来なかった。

それで数週間経過して今。

「えー今日のホームルームはまず転校生を紹介する」

こんな時期に転校生? とも思ったがまだ夏。しかも一年だと転校はあっても当然かと思った。

「とりあえず入れ」

担任に言われて入ってきたのは───

「「あ」」

オレとそいつは同じように思ったんだろう。ハモった。あの時の奴だと・・・思考もシンクロしたに違いない。

ただ、それ以上はお互いに言わず自己紹介へと移った。

「えーワイは高上(たかがみ) 義一(ぎいち)言います。よろしゅう頼んます」

義一は方言が抜けないと言うよりそれを強みにして話す感じだ。義一・・・後でお礼言わないとな。

「高上の席は・・・」

担任が席を探す。1週間くらい前に席替えをしたばかりだ。

とは言ってもオレは啓作の後ろと言うポジションは変わっていないが。

「あっちとこっちが空いてるか・・・。高上、オマエがどっちか選べ」

そういわれて高上義一と言う彼は席を選ぶために空いてる席を見る。

空いてるのはオレの横と窓際の席、だが大して見回す様子は無い。

多分、決まっているんだろう。オレを見つけた瞬間に。

縁がある人と近い方が友達の輪を広げるきっかけとしては上々だからだ。

無言でオレの隣の席へと歩み寄ってくる。特に話すわけでもなくそのまま座る高上。

「で、もう一つ連絡事項だ。オマエらの将来に関わる事だからよーく聞いておけよ」

隣の高上も気になるが担任の言う連絡も気になる。

チラチラと少し横目で高上を見る。こっちを見る気配は無い。

「来週から実地授業として職業体験をする。オマエ達が将来就きたいと思う仕事をこの用紙に書け」

実地授業・・・オレにはあまりピンと来ない。まず、将来なんて大して決まってない。

「回収は今週の末までだが早めに提出するように。ではホームルーム終了」

回ってきた用紙をオレはどうしようかと困ったまましまう。

授業まで5分程、オレは転校生である高上 義一に話しかける事にした。

「こないだはありがとな」

「ん、まぁ大した事してへんがな」

「あぁ、俺を云々したって後で聞いたが君だったか」

啓作が割り込んできた。

「そうです。ワイが君を運ぶのを手伝った高上義一や」

やはりイントネーションがこっちとは違うのが少し珍しく感じる。

「っと自己紹介がまだだったな。オレは徳間麒代よろしくな」

軽く握手を求めたがそれはスルーされた。

「俺は道東啓作・・・まぁよろしく」

啓作は倒れた理由等はあえて言おうとしない。それを感じ取ってるのか高上も大して突っ込まない。

「ワイ、先週くらいから下見で何度も来てるんやけどやっぱり麒代と啓作に案内しもらおか」

名前が分かるといきなり呼び捨て?! いや、親しみを込めてだろう。

そうなるとオレも高上なんて呼ばずに義一と呼んだ方がいい反応してくれるんだろうか?

「ぎ、義一・・・」

やはりいきなり呼び捨ては少し抵抗がある。

「なんや?」

そんな事お構いなしに義一は普通に反応する。

「オマエ、部活とか・・・どうするんだ?」

オレも色々あってまだ部活には入っていない。

啓作も色々あって部を設立していない。

「ん~ワイは部活にあんまし興味ないんよ」

多分、そこまで興味が沸くものも無いのだろう。

あんまり深く考えずに答えてきた。

キーンコーンカーンコーン──。話を遮る様にチャイムが鳴る。

「まぁ後でお昼でも一緒に色々話そうや」

そう言って一時限目の準備を始める義一。オレらも順ずるように準備をした。


それから少し時間が経ち・・・昼休み。

「義一ー購買行こうぜ」

なんとなく緊張感が解けた感じで話せるようになっていた。

「あー悪いなぁ。ワイは弁当持参や」

そう言って弁当を取り出す義一。包みのガラは男物と言うよりは女物・・・。

「おまっ、彼女いんの?!」

素直にそこは青春的反応になっている。

と言うよりマジで彼女いんのか?

「いんや、これ姉貴が作ったんや。ワイが自炊してもええんやけどな。当番制で今日は姉貴が作ったんや」

なんと言うかうらやましい?

「とりあえずオレと啓作は購買で買うから一緒に屋上で食おうぜ」

とまぁ、呼び出したのはいいが。

男三人であんまり話す事も無く気まずい・・・。

「と、とりあえず飯食おうぜ」

オレの一言を合図に食べだすが喋る事が少ない。

「ぎ、義一は前何処に住んでたんだ?」

あまり気にする事でも無いが話すきっかけになればと思って聞いた。

「んー・・・。ワイはずっと関西方面転々としてたんよ。んで、両親があんまりに転々とするんで姉貴がこっちに来いって」

察するに転勤族だとか言う奴か。で、話の内容からしてお姉さんは20過ぎくらいか・・・?

オレは期待もあってちょっと想像してみる。

義一は方言強いからお姉さんもそんな感じなのかな?

で、身長は・・・義一が啓作よりやや下な感じだからあっても啓作くらいか。

バストは・・・これは実際に合わないと分からないな。

ウエストは・・・細めだろうか?

ヒップは・・・平均的な気もするな。想像すると結構楽しい。

「麒代・・・顔変になってる」

啓作の指摘で想像の世界から引き戻される。

「ぇ、ぁ、あぁ悪い。何処まで話してたっけ?」

頭を掻いて少し慌てる。

「義一の姉さんの話だろ?」

啓作がそれとなく言うが実際には分かっている。

「あぁ。で、こっちに来た理由が姉さんだ~ってのは分かったけど、義一、オマエ部活どうするんだ?」

強引に話を変えに行く。・・・オレ自身これ以上想像すると顔が持たないんだが。

「ん~ワイは部活に所属するつもり無いねんけどな」

今の所は三人とも同じって感じか。

「そういう麒代は部活何処に入ってるん?」

あぁ、やっぱりそう来るよな・・・。正直予想通りだ。

「ん、オレもこいつも部活には入ってないんだ。啓作は部活立ち上げるとか言ってるけどな」

口がするっとと言うわけでは無いが軽く暴露する。

「そうなんか」

ほぼスルーな感じで流された。部活は興味無いのだろうか?

そういうところは読めない。と言うよりなんか隠している感じだろうか?

ここは・・・まだ突っ込みどころじゃないだろうな。

それこそ、啓作と同じ・・・闇に秘めておきたい事だろう。

とりあえず、夏休み直前と言うこの時期に来た時点で色々訳有りだ。

まぁ訳有りと言うならオレも啓作も同じだ。

あれから啓作は正式に縁切りした。オレも見届け人の一人として立ち会わされている。

義一にはまだ関係無いけどもっと親睦深めたら啓作が言うだろう。

キーンコーンカーンコーン──。

「あ、昼飯さっさと食って次の授業行こうぜ」

三人でゆっくりしすぎた。各々急いで食べて片付ける。

「先に行くからな」

啓作が真っ先に片付け終わって戻る。

「オレも行くか」

次にオレだが転校生である義一を置いていくのもなんか気が引けるというか迷わない・・・よな?

「あー麒代待ってや。ワイ迷うかも知れへん」

少しだけ待って義一も片付け終わる。さすがは手作り弁当、片付けに時間かかるな。

屋上で食べていたオレ達だったが啓作が先に行った為にオレと義一は少しだけ走るように教室に向かう。

教室に向かう途中。オレとしては会いたくない人と会ってしまった。

「オマエはいつも慌しいですね。・・・で、君は転校生ですか」

「トクマキ~」

前には生徒会長、横からは副会長のドロップキック。こんな時に面倒な・・・。

「この学校はおもろいなー」

のん気にオレ達のやり取りを傍観している義一。そんな時間は無い。

なんとか振り切って授業に間に合った。


で、帰りのホームルーム。

「えー明日から夏休みだからって気を抜かないように」

オレ達の夏休みは義一を加えてこれから始まる。

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