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ブレイブサマナー 勇者も魔王も俺の仲間  作者: 不幸のスパイラル
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プロローグ・北の国の魔物

主人公は時にキチ×イじみた行動をとりますが、しばらくは活躍しません!!

街を、城を蹂躙した魔物達が住民、兵士、王族関係なしに食いちぎる様は地獄の縮図と言っても過言ではない有様だった。

 火の手が上がり、逃げ遅れた者達は死を待つばかり。

隣家の住人が無残な肉片としてぶちまけられたのを見て、隠れていた家族の幼い子供が泣き出した。

魔物はそれを見逃さなかった。いや・・・最初から知っていたが、獲物が最も恐怖する瞬間を味わいたいがためにあえて生かしておいたのだ。

子供の恐怖を更にあおるために両親を目の前で雑巾のようにしぼりあげる。

ギュウウウウウ、ボキボキボキ!!

「お父さん、お母さん!!きぃやあああああああ!?」

 血しぶきを浴びながら幼い子供は絶叫を挙げる。その表情は引きつり、恐怖と悲しみに塗りこめられていた。

 魔物は子供の体をつかむと上下に引きちぎり、その柔らかな脳髄を蟹でも食べるようにすする。

 

モット


食欲とも喜悦ともつかないその意思に動かされるように魔物は次の獲物を探しに行った。

この国はもう御仕舞い。

レアマーレの都のいたるところで同じような光景が繰り広げられていた。

焼ける家、飛び散る血痕、潰れた肉塊、人々の阿鼻叫喚すら次第に減っていく。

命乞い?無駄。交渉は一切通じない。

魔物の群れは、今まで人類が交戦したことのない異形だった。

今までもオークやゴブリン、トカゲ人や魔族、果ては機械人など数多の亜人と交戦してきた人類ではあったが、今回の魔物はそれまでのどんな敵よりも強く、どんな敵よりも相容れない存在だった。


まだ獲物がいないかと燃える家屋の壁を破壊しはじめた魔物の前に、騎馬に乗った数人の騎士が突っ込んでいく。

「よくも我が都を・・・せめて一太刀!!」

全身フルプレートの白銀に輝く騎士が突撃槍を構えてチャージに入る。

「隊長、お供しましょう」

 銀の騎士に併走して、角のついた兜をかぶった大柄な騎士がハルバードを掲げる。

「おう、レアマーレ騎士団4番隊、全員で突撃だ!一匹でも多く仕留めるぞ!!」

羽飾りをつけた騎士が出遅れた騎士達にハッパがけをし、自身は大型のクロスボウで狙いを定める。

 銀の騎士の突撃槍は魔物の装甲と装甲の隙間にささり、そのまま肉を抉り腕と腹を串刺しにする。そこに角兜の騎士のハルバードが振り下ろされ、大きく肉を抉るが何かにつっかかり刃はとまった。

「こいつ、殻があるのに骨まであるのか!?」

 普通外骨殻を持つ生物には骨がない。おまけに今抉った箇所が早くも再生を始めているのを目撃した二人の騎士は、驚きに硬直した。4番隊は市民の避難誘導をするために魔物とはこれまで交戦してこなかった。郊外の教会に一定量の市民の避難を終了した彼らは魔物の排除を考えたのだが・・・。

 白銀の騎士と角兜の騎士が一瞬動きを止めた隙に、魔物の尻尾が異音を立てながら旋回した。

 ガシャアアアアン!!

 地面の石畳を抉る鞭のような尻尾を二人は寸でのところで回避する。

「隊長!」

 羽飾りの騎士のクロスボウから矢が放たれる。魔物はしゃがんでいた体勢から一瞬で後方へと跳躍し、着地の瞬間に魔力の塊を羽飾りの騎士へと叩きつけた。

 グジュ

 圧倒的な質量で肉のつぶされる音はやはり水音だった。羽飾りの騎士の頭から鳩尾までが円形に押しつぶされて絶命する。恐慌に陥った3人の騎士が剣でヤケクソ気味に切りかかる。

 魔物はその恐怖に裏返った感情に歓喜した。

「うああああああああああ!?」

 一人目の騎士の足をつかみ、その騎士を棍棒のように使い、二人目の騎士を叩き潰す。

 圧倒的なまでの力で叩きつけられた騎士は爆発するように肉を飛散させた。棍棒にした騎士は魔物が鳥の腿肉をかじるように食いちぎられる。

 3人目の騎士はそれを見て背中を向けて逃げた。

 鎧ごと騎士を食べ終えた魔物は口の中で鎧を丸め、勢いよく吐き出した。銃弾、否、砲弾と化したその金属は逃げる3人目の腰に命中し、上半身と下半身を見事なまでに両断したのだった。


「馬鹿な・・・私の隊が、こんな短時間で壊滅・・・だと!?」

 白銀の騎士が呆然とその光景を見る。

「隊長、お逃げ下さい。ここは俺が時間を稼ぎます」

 角兜の騎士がハルバードを構えて前に出る。

「馬鹿をいうな、一人であの魔物を倒せるわけがなかろう!!」

そう言うと白銀の騎士も腰に佩いていた魔剣を抜き放つ。

「じゃあ、二人で逃げましょう。どの道あれは倒せませんぜ。隊長は左、俺は右へ」

 説得は無理と判断した角兜の騎士はあっさりと方向転換をする。みかけによらず頭の柔軟な騎士の言葉に白銀の騎士は僅かに逡巡すると、それを受け入れた。

「仕方がない、必ず生き延びろ!」

白銀の騎士は馬の腹を蹴って駆け去る。角兜の騎士は腰にぶら下げていた袋を一つぶちまける。

 その袋は煙幕だった。魔物の周辺を白い煙が覆う。

「さてと・・・ああは言ったけど時間を稼ぎますかね。貴族のお姫様を守るのは立派な騎士の務め、うちの隊長はおっかねえけど美人なんだぜ?」

 角兜の騎士は雄たけびを上げハルバードを旋回させると名乗りを挙げる。

「我こそはレアマーレ騎士団4番隊副隊長、角兜のブロディなり!!遠きは音に聞け!近寄らば目にも見よ!!見物料は貴様らの命だ!!」

騎士のスキル、ウォークライと、ダリングローブを発動したブロディは街のあちこちから魔物が集まってくる気配を感じ取っていた。

自分の元へこいつらが集まれば隊長が逃げる難易度も下がるだろうと判断してやったことだったが、さすがに集まる気配が30を超えたあたりで数えることはやめた。

 戦闘の音はそれから15分ほど続いた。


レアマーレは雪に閉ざされる国だった。都を除けばその人口は決して多くない。

魔物によるレアマーレの都の壊滅が知れ渡るのは白銀のアルメシアが隣国、クレイン聖王国にたどり着く1月後のことである。


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