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第12話 冒険者ヴィト




「今日はここで野宿にしましょう」


火が少し陰り始めたころトーマスが声をかける。

日が暮れてからでは遅すぎる。ある程度早めの準備が必要だ。


「いつも通り俺、枯れ木集めてくる」

「私とトーマスで料理の準備ね、ヴィト君料理出来る?」


フレイヤが私に聞いて来る―――その質問に対する答えは一つだ。


「……人には何かしら欠点がある」


 みんなから爆笑された後、俺とギュンターが枯れ木拾いに行く。屋敷だと使用人が料理を作るし、前世でも格安弁当を買って生活していた男だ。スパゲッティ食べて何故か救急車で運ばれた経験もある。

それ以来料理なんて一切しなくなった。したいとも思わない。


「いつまで、笑ってる?ギュンター」

「いや……だって…普段との格差が……」


 こんなに薄情な奴だと思わなかったぞ、ギュンター君。

 君にはいつか私特製“飽和した味噌汁”を飲ませてやろう。


「俺は別に完璧な超人じゃないぞ。持ちうる能力を限りなく有効に行使するだけだ」


「……その考え方が普通じゃねぇ」




 枯れ枝を抱えて戻るとシチューが出来ていた。イイね、女の子の手料理だ。

 これを喰えるだけで転生して良かったと思う。え?前世?聞くなそんなもん。



 料理をした火を種に大きな焚火にする。火があると、動物やモンスターも余り寄り付かない。


 彼らも人間を恐れているのだ。自分たちの巣を壊滅させたり、襲いかかってくる人間が、だからモンスターも行動するときは大抵集団で、はぐれているのは群れから追いやられた奴か、巣立ったばかりの若い奴か、さもなくば力の強い上位種だ。


 火を焚いているのに襲ってくる敵は、それは大抵、山賊―――人間の宿敵は人間だ。


「さて、それではご飯も食べた事だし、交代で見張りを立てますか」

「あっ、待って下さい。いい魔法が有りますよ」


「んあ、どんな魔法だ?」

「うん、教会魔法の一種の“警鐘”って魔法で1ペース(約30㎝)以上の

大きさの動体が魔法の効果範囲内に侵入すると音が鳴るんだ」

「何それ!すごい便利、私も使いたい」


「……教会魔法は、教会語(エトルリア語)が出来ないと難しいと思う。

それに“結界”程ではないけど守護魔法って会得するのは難しいし」

「そっか、残念」


 地面に円を描く、その中に正方形を描く、中央部分の正方形内にはSATOR AREPO TENET OPERA ROTAS と書き込む、一種の回文だ。


 後は陣にマナを注ぎ込みながらそれに対応した呪文、効果範囲、時間等を指定すればいい。本当はT、E、Nは赤で書き込むと理想的だが…


「Requiem aeteman dona eis, Domine, et lux perpetua luceat eis…」


 呪文を唱え終わると、陣からマナが放出される。成功だ。

 この微量なマナの存在している範囲が効果範囲だ。


「本当に魔法使えたんだなー」

……テメェ、疑ってたのか。



「火を見ていると、とても落ち着くわ…」

「東の地には火を崇める宗教があると聞きますが、ヴィト君知ってますか?」

「確か、拝火教って宗教の事だと……どんな内容かは知りませんが…」

「確かに教会の説法にも火に関する教えとかあったわねー」

「……んなの、あったか?知らないぞ俺」

「あんたは聞いてないだけでしょー…」

「……そうだっけ、覚えて…ねぇや」


 火を見ながらマントに包まり横になり、雑談をしてると……まぶたが…重く………




 気が付くと夜明け前だった。東側が明るくなりつつある、東雲って奴だ。

 幸い、何事も無かった見たいだった。


 皆を起こさないように静かに動く、冷えたからだを温めるためにも少し筋肉を動かす。


「ヴィト君おはよー」

「フレイヤさんおはようございます」

「だ、か、らフレイヤでいいってば。あの馬鹿呼び捨ててるのに私は呼び捨てできない?」


「……分かったフレイヤ。じゃあ、僕の事もヴィトって呼んで」

「わかったわ、ヴィト……ふふっ」

「どうしたの?」

「やっとくだけた言い方してくれた」


「あ……どうも癖なんだよ。どうしてもタメ口で話せないというか、慣れないというか」

「本当に変わってるね。ヴィトは、考えとか、行動とか、普通の大人より優れているわ」

「うーん、自分が特別優れているって言うより、周りの環境だと思う」


 私は倒木とうぼくに腰掛ける、フレイヤも隣に腰かけた


「前にも話したけど、うちの家系は他国の貴族とかが多くて、いろんな言葉で会話していたんだ。小さかった俺は、お爺様とか義姉さまと会話したくて、当時、領地に逗留とうりゅうしていた言語学者に教えて貰っていたんだ」


「すると気が付いたんだ、教会語と、ガウル語と、俗語(エトルリア諸語)には、単語や文法の共通点が多くて簡単に覚えれた。そうしたら、教会について教えてくれた司教様が、眼を掛けてくれて、教会魔法とか、法律とか色々教えてくれてね。今に至るわけさ」


「なるほど、そのような覚え方で身に付いたのですか」


 後ろからトーマスが声をかけてきた。ギュンターも居る


「2人とも、おはようございます」

「おはよー、トーマスさん。ギュンター」


「おう、おはよー」

「ええ、おはようございます」


「あの魔法は、大変便利でした。

 今までは見張りを立てて、交代制で寝て居たのですが、その必要も無くなりました」


「“警鐘”は元々、布教する為に、旅をする宣教師が発明したと聞きます。

護身魔法と似たようなものだと思いますよ」


「十字教の教義としては、他者を愛し、融和する事が基本です。

その為に他人を傷つける技は余り無いのですよ」




「……私の知る十字教とは、随分違いますね」


……表情が少し暗いぞ、トーマス。やはり何か腹に抱えて居るな。


「教義を曲解する人間はいつの時代にも居ます、何も十字教だけでは無いでしょう?」



「考え方なんて人其々です。百人の教徒が居れば百通りの解釈があると思います。

教義は一つかも知れませんが、それをどう思うかはその人次第。

それを分からずに、他人に強制をする人間がこの世には多いのです。」


 私の発言に、フレイヤとギュンターは、ぽかんとした表情だ。

 これまで聞いた説法を根底から覆しているからな、無理もない。


「まあ、こんな所で宗教論争しても仕方ないのですがね……」

「そうですね、朝ご飯を頂いたら出立しますか」


 そうだ、さっさと飯を喰って進もう。時間を無駄にしないのは、時間だけだ。





「……酷いな」

「……多分、全滅ね」


 道を進むこと数時間後、時間は太陽の位置から昼頃だろう。


 本来なら村で食事なり補給なりをするのだが…

 到着した村は建物が焼け落ち、辺りにはえた悪臭と、焦げ臭さが立ち込めていた。


 辺りに横たわる物体は、ほぼ間違いなく……


「……くッ!」


「ヴィト!」

「ヴィト君!」


「……大丈夫です、そのうち慣れます」


 胃の中身をぶちまけた後、青くなっているだろう顔を上げる。

 そうだ、こう云う事態は旅をする以上は遭遇する可能性はある、ここは現代じゃないのだ!


「……野盗ですか、いえ、違いますね。彼らなら若い女性は攫っていくでしょうね」

「この辺はわりかし平和なはずだろ。襲撃するならまずモンスターだろうよ」


 旅をしている3人は、このような事件に遭遇する事も有るのだろう。

 表情こそ暗いが冷静だ……これが経験の差か。


 大丈夫?とフレイヤが水袋を差し出してくれる、口の酸っぱさを取る為に飲み干す。



「ごく稀にですが、魔物が群れを成して人間の村を襲撃する事も有るのです」


 私は蒼白の顔を上げトーマスを見つめる。


「モンスターの恐ろしい所は、繁殖能力はんしょくのうりょくと数の暴力です。」

「単体で有れば、農具を持った農夫でも倒す事は出来るでしょう。

しかし、5体、6体と現れると勝てません。訓練された騎士でも10体相手に1人では勝てません」


「ですから、我々冒険者は戦う時にパーティを組みます。

1人では無理でも、数人なら弱点をカバーして戦えます」


「鍛え上げられた冒険者グループは、魔物の群れを殲滅せんめつ出来ます。

しかし、それは個人能力の高さよりも、連携の強みです……今日はその事を覚えて頂きます」



 トーマスが村の広場に目線を向けると、死したはずの村人が起き上がり動いていた。


「ヴィト、ありゃグールだ。葬儀をされなかった死体が、数週間で邪気が籠って動きだす」

「彼等は意思も無く、本能のままに人間や動物を襲う……倒してあげるのが彼らの為よ」


「この近辺を通る人の迷惑にも為りかねませんからね。ギュンター君、いつも通り頼みます。フレイヤさんは、今回は前衛をお願いします。私とヴィト君で後方から支援します」


「よっしゃ!やってやるぜ」

「りょうかーい、任せて」



「僕も……前衛に出た方が良いのでは?」


「借り物の使いなれない剣で戦うのは難しいでしょう……それに、その顔で前線で戦えますか?」

「……解りました」


 トーマスの指示に異を挟んだ私は諭すように説得される。その意見は正しい、大人しく指示に従った。


「ヴィト、グールの弱点は邪気が宿ってる心臓だ、それ以外は効果がねぇ、注意しろよ」


「教会魔法で殲滅してやるさ、悪魔や死人相手は十字教の十八番ってね」


 そして4人は村の制圧を開始する。




「Dona eis requiem. Hosanna!」(彼らに安息を与えたまえ。 救い給え!)


 呪文と共に左手に現れた光球を射出し、グールにぶつける。

 低威力で簡単な浄化魔術だが、グール相手には絶大なダメージらしく、青い焔に包まれて消滅する。


「うおおおお!」


 雄たけびと共に、ギュンターが空竹割からたけわりにグールを両断する。

 腐敗しているとは言え人を両断するその筋力に私は驚嘆きょうたんする。


「弦の拘束!」

「ありがとう!いやあああッ!」


 トーマスに拘束された敵を、フレイヤが気勢を上げてマチェットで左胸を割る。

 ギュンターはもう一体の拘束された敵の胸を突き倒す。


 次に5体のグールが現れた。数が多い!


「まとめて殲滅します!」


「Dona eis requiem…dona eis requiem…dona eis requiem…」


「In paradium deducante te chorus Angeloum te suscipiat,aeternam habeas requiem.」

(天使達が、貴方を楽園へと導き、聖歌の合唱で出迎え、永遠の安息を得られますように。)


「………Amen.」


 右手で十字を切り、左手を振り下ろす。射出された光帯が5体のグールを包み浄化する。


 聖水等のアイテム無しに中級浄化術を使った為、一気に魔力が消耗されてしまった。


 その後、数体のグールを仕留めると戦闘は終わった。




 戦闘が終わると地面にしゃがみ込む。皆を見回すと、トーマスと私は後衛だったので平気だが、前衛2名は、グールの体液を浴びて酷い有様だった。


「みんな、お疲れ様。もーひどい匂いだわ。井戸まだ使えるから、水浴びしてくるね」

「おう、俺らは下の小川で洗ってくるか。行こうぜ、ヴィト」


 ギュンターに誘われるが、私にはまだやる事が残っている。ここで出来るのは私しかいない。


「先に行ってて、トーマスさん、残っている遺体を集めてください」


「……そーいう事か、俺も手伝うよ」

「私もよ……もう、既に汚れてるしね」


 魔法で倒した遺体は、灰になっているので問題ない。しかし、剣で倒した敵や

まだグールに変化していない遺体を一か所に集める。祈りの文を捧げてまとめて灰にする。


 この世界の十字教の葬儀は、金銭のある者は教会で司祭の呪文により、金銭の無いものは家族が薪を組み遺体を灰にする。遺体のままにすると、邪気が籠りグール化してしまう。


 遺体の形を保った浄化法で葬儀出来るのは、よほど金銭の余裕のある権力者か

若しくは聖職者のみである………民衆は最後の審判を受け、復活する事が出来ないのだ。


 衛生学的に考えると理想かもしれない。しかし、民衆の気持ちとしてはどうだ?当然不満である。

 何とかして土葬してもらおうと司祭に金を積む、それが原因で教皇領は腐臭漂っているのだ。



 100年ほど前の公会議で、司祭の呪文による浄化でも肉体は復活する、と決議された。しかし、目の前で肉体が完全に灰になる様を見れば、なかなか信用されるものではない。


 だが、彼等には済まないが灰になってもらう。

 今の私には、遺体をそのままに出来る術を行使するだけのアイテムも、余力も無い。



 灰を一か所に埋めると木で作った十字架を突きたてる。


“シェーン村の住民、ここに眠る。願わくば公審判の日に復活せんことを”




 葬儀を終えると、3人が小川で水浴びをする。さすがに覗きをする好色漢もする体力も無い。

 さすがに、秋の山岳地で水浴びをすると体が凍りつく、しかし、体が臭う寄りマシだ。


 つーか、フレイヤさんはお湯を沸かすから井戸に行ったのか?多分そうだろう。


 小川で洗濯と体を洗い終えると、川原で鍋に水を汲み、湯を沸かす。聖水造っておこうかな?……今日は魔力が無いから今度で良いか。



 白湯が沸いて皆に配ろうとすると、フレイヤさんが戻ってきた。頬がピンク色だ。


「あー、テメェ1人だけ湯浴みしやがって!この!」


 馬鹿がフレイヤさんの後ろに回り、冷えた手を背中に突っ込む。


「ひゃあ!何すんのよ、このお馬鹿ッ!!」


 踵を上げて金的一撃、振り返って胸にハイキック……ナイスコンボです。

 哀れギュンターはそのまま川に転落する。


「うわっ!」

「ぎゃあ、冷たい!」


「ちょっとー馬鹿じゃないの?皆が濡れないように落ちなさいよ」

「お前が落としておいて、なに言いやがる!洗った奴まだ乾いてねぇんだぞ!」


「知らないわよ、後あんた晩ごはん抜きね」

「お前サマは悪魔で御座いますカッ!?」


「あー、俺の市民の服使う?そんなに汚れてないから洗って無いし」

「さすが!俺の親友だぜ」

「濡れた格好で抱きつこうとすんなタワケが!」


 このやりとりに皆が爆笑する。昼とは打って変わった平和な時間だった。



 その夜は、村はずれの焼け残った道具小屋で過ごした。“警鐘”を使う余力が残っていなかったので、交代で見張りを立てる。私も見張りをするつもりであったが、「疲れているだろうから休んで魔力を回復しろ」との有難い言葉に甘えて就寝した。


 翌日、一日かけてクルムバッハに辿り着く、だが既に日が落ちていた為、城門は閉じられていた。


 野宿している者も居たが、余裕は有るので、城門の周りにある宿屋で一泊した。



 翌朝、クルムバッハの冒険ギルドへ到着した。ギルドは街の大通りにある石造りの立派な建物で、中の依頼掲示板には多くの冒険者が仕事を探しに屯していた。


 我々は、依頼報告なので報告窓口に行き、書類と引き換えに報酬を手に入れる。

 その額、グルテン金貨3枚だ。庶民の年収が金貨15~20枚あれば普通の生活を送れると言われているから相当な額に見えるが、装備品や旅費は自前な上、命の危険もあるから高いとは言えないのである。


 そして、私の冒険者登録を始める。登録窓口行って面接と試験(といってもランク付けなので落とされる事はない)を受けるのだが、目立つと不味いので指輪を外し、トーマスさんから予備携行のタクトを借りる。



「まず、名前と出身地を教えてください」

「……ヴィト。シェーン村から来た」


「教区司祭の証明書はお持ちですか?」

「……ない」


「…家族のお仕事は、村では何をしていましたか?」

「親父は小作人、お袋はその手伝い」


「教会を管理している司祭様の尊名は?」

「……司祭様は、しさいさまだ。みんなに勉強を教えてくれるいい人だ。他に名前が在るのかい?」


「もしかして、村を勝手に飛び出したのですか?ご両親は心配していないのですか?」

「……ううっ」


(嘘)泣いて涙をこぼす私、タイミング良くトーマスが受付の人と話す。


「……シェーン村は、モンスターに全滅させられていました。彼は、井戸に隠れていたので生き残っていたのです。往路の際の逗留時に、彼と会話したので身元は確かでしょう」


 その言葉にすまなさそうにする職員、周りの冒険者たちも同情的な目線で我々を見つめる。


「……それで、同情して連れて来たのですか?なら、街の修道院に預けるべきでしょう」

「それも有りますが、彼は魔法が使えます、簡単な回復魔法と浄化魔法だけですが」


魔法が使えると言うのは聖職者以外の民間人(冒険者は除く)ではなかなか居ない。魔法を発動するための、発動体付きの杖は高価で有るからだ。本当かい?と聞く職員に涙を拭いて答える。


「……うん、俺の家は兄貴がいっぱいだから、俺の畑はない。そうしたら、“しさいさま”が頑張って勉強したら読師にしてやるって言われたら、文字勉強した。」


「“しさいさま”はいい人だ。文字が覚えて読めるようになったら、魔法も教えてくれた。おまけに自分の使って無い杖までくれた」


「……でも、あの日みんな死んじゃった。親父も、お袋も、兄貴も“しさいさま”も!」


私の口から語られる告解に皆が涙している……まぁ、嘘っぱちだがね。しかし、フレイヤさん、嘘って解っている君まで泣くのはなぜだい?


「……そういう事情なら理解出来ます。冒険者の登録を認めましょう。

早速試験を致しますが、危険のない回復魔法なら、私に掛けて下さい。」


「うん、Hosanna!(救い給え)」


 職員に光を当てる。回復力も少し痛みが和らいだ位かな?という実用性は少ない技だ。浄化に使うにしても直接触れて居ないと使えない為、あまり意味がない。


「はい、確かに確認致しました。合格です」


 この感動劇で周りの人間が一斉に拍手する。高い実力で目立った訳では無いので問題ないだろう。



 職員がタイプライターのような機械で金属板に文字を打ち込む、この時代にこんな便利な機械は無かったぞ?活版印刷の技術は発明されていると聞いたが、既にこのような機械が出ているとは……


「面白い?近年、帝都で発明された機械で、この地に導入されたのもつい最近よ」

「それまでは、職人が手打ちで作っていたのよ、これが導入されて発行も登録当日に出来るようになったから楽になったわ」


 はいどうぞ、と手渡されたのは真鍮製の金属板だった。



「ランクは1~7まであって、最初は7から始まります。カードをランク4までは無くした場合の再発行は出来ません。最低ランクからのスタートになります」


「ランク4からは、ギルド本部に登録書類が出来ますので再発行は、手数料と引き換えに発行できます。ただし、届くまでは証明等に時間が掛かるので、その間は仮カードになります。昇格等出来ないので気を付けてください」


「ギルド本部はエトルリア半島の“ウェブス・ウェトゥス・ウォルシニ”に存在します。そこで再発行書類の手続きと発送を行うので、場所によっては数カ月掛かることにもなる上に、手数料で金貨数十枚取られる事も有るので、注意してください」


「昇格についてです。昇格はランク4までは、ギルド支部内で定期的に行われる試験に合格するだけです。実技か筆記の選択形式です。腕に覚えがあるなら、いつでも受けてください」


「ランク4以上は依頼形式での昇格になります。各支部が出す依頼の中で、危険度の高い赤印の付いたものをランクごとの指定回数をクリアしてきて下さい」


「ランク1の試験はギルド本部で年に一回行われます。実技、筆記と2つとも受けて、その総合判定です。どちらの能力とも高くなければ合格不可能です」


「そのような理由で腕は一流のランク2の方って多いのですよ……話がそれましたね」


「さて、次に依頼と報告についてですが……」

「その事については、私が説明しました。心配は要りません」

「あら、そうですか、では私からの説明は終わります。冒険者ライフ頑張ってね!」


周りの荒っぽい男達が「これで仲間だな!ボーズ頑張れよ」等と激励してくれる。

私は、手にした金属板を見つめる。以下のように記載されていた。



VITO VIR INPERIUM FRANCI FODERIS SCHOEN

(ヴィト 男性 フランク帝国 連邦州 シェーン村)

CLASSIS Ⅶ


 この安っぽい金属板にどれだけの価値があるのだろうか、これがある限り、私はヴィトという一人の人間に生まれ変わったのだ。身分が手に入れば、大々的に動ける。


 派手にやっても、こそこそ隠れずに生活できるのだ。私はそれが嬉しかった。









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