パーティーへの出陣 -03
会場はローゼット家が構える邸宅をパーティー仕様に整えた豪奢なものだった。
馬車から降り、入口のクロークでコートを預けたあと、メインのフロアへ続く扉をくぐると空気が変わったのがわかる。
広間では老若男女問わず、煌びやかな衣装を身にまとった貴族達が飲み物を片手に語らっている。天井から垂れるシャンデリアは外の暗闇をコントラストにより一層輝き、来客たちを照らしている。
ラウドとバレッタが腕を組んだまま中に進むと、話し込んでいた周囲がさざ波のようにゆく道を広げる。
──無理もない。トラッド公爵家の、しかも令嬢から引く手数多だったラウドが妻を伴って現れたのだ。しかも結婚してから初めての社交の場となれば、注目が集まらない方がおかしい。
(見られてる…。)
両親や姉と参加した時には、これほどの視線を一身に受けたことがなかったバレッタは無意識に身体が縮こまる。とはいえ公の場だ。あまりにも不格好な姿は見せられない。頬をわずかに引き上げ、精一杯背を伸ばして歩く。
─と、周囲が引いていくのを横目に、1人の壮年の男が歩み出てきた。
「トラッド公爵、奥様とご一緒とは。」
「ええ、これまで中々こういった機会もなく。ご挨拶が遅れまして申し訳ない。」
「いやいや、なんと可愛らしい奥方だ。公爵が隠しておきたかったとお見受けする。」
鷹揚に笑う男はラウドと親しげな様子だった。先程まで儀礼的な笑みを浮かべていたラウドも頬を綻ばせて会話している。
柔らかくなった雰囲気に押されたのだろうか、ラウドを目掛けて次々と挨拶が続く。
慣れた様子で応対するラウドの隣で、バレッタもなんとか妻らしく振る舞った。
(パーティーって、やっぱり苦手だわ。)
──下町で友人たちと遊んでいる方がよっぽど気楽で楽しい。口に出せない思いを喉の奥で消化していると、チラリとラウドが視線をよこす。




