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パーティーへの出陣 -02


「綺麗…。」


ドレスを見て思わず言葉が漏れる。

薄いベージュの髪に良く合う、深みのある青緑色の生地はバレッタの瞳の色と同じものだった。


胸元と袖口には細かな刺繍が施され動かすたびにキラキラと光を放っている。


「これ、ラウド様が選んでくださったのよね?」


「ええ、こちらのアクセサリーも。旦那様からのご指定でございますよ。」


侍女の言葉に、胸がじわりと温かくなった。


(記憶がないのに、大切にしてくれるのね。)


そう思ってから慌てて首を振る。きっと並んだときに見栄えがいい方がいいというだけだ。


それでもドレスを身につけ鏡の前に立ったとき、思わず笑みがこぼれる。


「とても素敵ですよバレッタ様。」


「ありがとう。」


なんだか結婚式の時よりも気恥ずかしくて、視線を逸らす。それでも上がった口角は隠せなかった。


侍女達によって結あげられた髪に、ドレスと同じ色のジュエリーをつけると、自分でも見違えるほど煌びやかな姿があった。


くるりと回転して煌めくドレスに目を奪われていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえる。


「入っていいか。」


「はい!もちろんです。」


まさかの人物の声に慌てて返事をする。扉を開けて入ってきたのはラウドだった。バレッタと同じく青緑色のラインが入ったタキシード姿はハッとするほど美しい。


「……気に入らなかったか。」


思わず見蕩れていると、ラウドは気まずそうに言う。


「なっ…!そんな訳ありません!こんな美しいドレス…。ありがとうございます。」


「…良かった。」


ふわりと笑ったバレッタに、わずかに視線を逸らしたままのラウドに御礼を言うと、バレッタの横に並んだラウドはそのまま腕を差し出す。


(まさか会場までエスコートしてくれるの…?)


隣に並んだラウドの腕におずおずと手をかけると、ラウドはそのままゆっくりと歩き出す。


「行ってらっしゃいませ。」


「!!行ってきます!」


にこやかに送り出す侍女に大きな声で返事をして、2人はそのまま馬車へと向かった。


ーーー

馬車の中は、静かだった。


(気まずい…)


向かい合わせに座った2人の間には、なんとも言えない沈黙が流れていた。


バレッタは膝の上で意味もなく指を動かしながら、窓の外を流れる夜の街並みを眺めた。向かいのラウドも同じように外を眺めているが、何を考えているのか、全くわからない。


(こういう時、昔のラウド様ならどんな顔をしていたかしら。)


社交界で初めて話した時、ラウドはよく笑ってくれた。濡れたように輝く青い瞳を細めてバレッタの話を楽しそうに聞いていた。──態度は軟化したとはいえ、今はその面影はどこにもない。


「…寒くないか。」


「え?」


動かしている指を寒いと思われたのか、羽織っていたコートを脱いで膝に掛けてくる。


「…ありがとうございます。」


またすぐに沈黙が戻る。でも今度は少しだけ気まずさが柔らいだ気がした。


(やっぱり、優しい人だわ。)


バレッタは窓の外に視線を戻しながら、そっと口元を緩めた。




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