パーティーへの出陣 -01
「ローゼット家のか…。」
「ええ、毎年必ず出席されてますし、今年も出席かと思っておりますがいかがでしょう。」
「そうだな…。」
机に肘をついて思案する。バレッタという女性はこちらの反応に懲りることなく、次々と案を練ってはラウドの記憶を取り戻そうと挑み続けていた。
別に彼女が嫌いな訳では無い。あの天真爛漫な笑みを向けられたら、どうも心が絆されてしまう自分がいるのも意外だった。
社交界で富と名声を求めて近寄ってくる令嬢達と違い、コロコロと変わる表情も見ていて飽きない。
だが、彼女が自分の妻だといわれると──喉がつっかえたような、強烈な違和感が襲ってくるのだ。なにか、甘い蜜で誘い込む花のように、彼女に騙されているのではないかと言う気にさえなってくる。
「…流石に行かないといけないだろうな。出席する手筈で進めてくれ。」
「かしこまりました。」
「それと…、彼女をここに呼んでくれないか。」
「…バレッタ様をですか?」
「あぁ。」
「…かしこまりました。」
頭を下げたイリスが退出する。暫くすると、控えめなノック音とともに入室を伺う声が聞こえる。
「入ってくれ。」
ラウドの声掛けに、ひょこりと顔をのぞかせたバレッタはそのまま綺麗な所作で1礼をしてラウドの前へと移動する。
「ラウド様お呼びですか?」
「あぁ、ローゼット家のパーティーのことだ。」
「もうそんな季節ですのね。」
口元に手を当てて驚くバレッタは、少々痩せただろうか。その原因が自分であるという事実に胸が痛くなるのに、心では受け入れられないという矛盾した思いが駆け巡る。
「昨年までもご家族と出席されていたと聞いている。……今年は結婚して初めての出席だとも。」
「あそこのパーティーは盛大ですからね。…あまりパーティーは得意ではなくてできるだけ避けていたんですけど、あればっかりは毎年。」
少し嫌そうな顔で令嬢らしくない首を竦める仕草に思わず笑みがこぼれそうになるが、慌ててコホンと咳払いをして畏まって言う。
「今年は私と出てもらうということでいいか。」
「…旦那様と?もちろん、ラウド様がお許しになるのなら喜んで。」
大きな瞳をパチリと瞬かせたバレッタは、その頬を綻ばせて美しいカーテシーで応える。
「……ドレスを用意させよう。何かリクエストがあれば言ってくれ。」
「まぁラウド様が選んでくださるの?」
「並んだ時にちぐはぐだと可笑しいだろう。」
「それもそうですね。」
くすくすと笑うバレッタの顔をなぜか直視することが出来なかった。




