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心休まる場所 -01


「バレッタ、よく帰ってきたね。」


ニコニコと穏やかに笑う父の笑顔は自分とそっくりだと対峙する度に思う。柔らかく笑うその顔を見るとこちらまで嬉しくなるような優しい笑みに、バレッタも同じようににっこりと笑みを浮かべた。


「お父様お久しぶりです。」


「バレッタ、向こうでの生活はどう?困ったことはない?」


「お母様も。ええ、とっても良くしていただいてるわ。」


父が一目惚れののち、幾度にも渡るアプローチで結ばれたという母はとても美しい人だ。腰の辺りまで伸ばした亜麻色の髪を後ろにゆったりと流し、心配そうにバレッタを見つめる。


「ラウド様もお変わりない?」


「……ええ、少しお忙しそうだけど。」


ラウドの記憶喪失のことは曖昧に誤魔化す。

しかし、母は別の意味に捉えたようだ。


「公爵家に嫁ぐなんて、私もまさか思ってもいなかったけれど…。読書よりお外で駆け回るのが好きな貴方が無理をしていないか心配よ。」


「お母様ったら。いつのことを言ってるの。」


「まぁ、昨年もいきなりカモを手で引っ掴んで治療してと家中駆け回っていたのをもう忘れたの?」


「……それはそうだけど。」


あれは、たまたまお姉様が帰られた際に、遠乗りに出かけた先で怪我をしてうずくまっていたという緊急事態だったのだ。くすくすと面白そうに笑う母に、父も柔和な笑みを浮かべたまま言う。


「バレッタが無理をしていないならいいんだ。今日だって本当は会いたい人達がいるんだろう?」


「お父様にはバレバレね。」


首を竦めると、父も母もバレッタがこれから向かう先を知っていたかのように苦笑する。


「くれぐれも怪我のないようにね。」


「ちょっと遊びに行くだけよ。」


「会う相手の心配はしてないさ。ただこれまでのお前とは立場が違うのだから。」


「……はぁい」


母と父は交互に忠告をする。いつまで経っても子供のような扱いをする両親が少しだけくすぐったく、でもその温かさに小さく返事をした。



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