血と瓦礫と
ようやく序章の戦闘収束です。
マジでやばい。
咄嗟に初撃を防護結界で防ぐ。課長お手製ではなく、ごく一般的な防護魔術だったので一発で亀裂が入った。
とにかく思考する。
焦っているのか、考えれば考えるほど泥沼に陥る。まるで頭の中が渦巻いているようだ。
ふと一つの光景を思い出す。魔術の師が過去に一度だけ見せてくれた技だ。
師との出会いは4歳の時だ。私に特位魔術の適正があるとわかったその年、両親は私と全く同じ特位魔術を使う一人の少年を家庭教師として連れてきた。
私と6歳しか違わない彼は特位魔術を完全に使いこなしていた。今思えば異常な子供だ。それでも私は子供心ながら単純にすごいと思った。
たったそれだけで私は彼を師と仰ぎ始めたのだ。
それが師、リュシアンとの出会いだった。
暗い夜道を幼き私の手を握ってリュシアンが進んでいく。
出かけた先で家族と逸れた私は不安の絶頂だった。そんな私の気持ちを汲んでかリュシアンは何も言わず、ただ手を強く握るだけだった。余計な言葉がより私を不安にするとわかっていたのだろう。
魔王国アウリスとの大規模抗争が収束したばかりであちこちで建物が崩れかけている。
そんな中私たちは出会ってしまった。
魔族に。
その魔族は瓦礫のリュイネルと名乗った。
思い出した。こいつの名前はリュイネルだ。リュイネル相手にリュシアンは圧勝した。
リュシアンが使った技を思い出す。
成人した今でもできる気が全くしないがやるしかない。
先ほど作った左手の切り傷を地面に向ける。
仕組みもやり方もわからないまま師が唱えた言葉をそのまま真似て唱える。
「主権剥奪、我が血の戦場」
途端に切り傷から溢れんばかりの血が溢れ出した。身体中から血液を絞り出されているかのような感覚に襲われる。血を操る魔術の能力の一つである血液生成を発動するが新たに作られる血より出ていく血の方が圧倒的に多い。かなり重度の貧血に襲われる。
段々と意識が遠のいて行く。
足元の瓦礫の上に溢れた血液はとんでもない速さであたり一面に広がっていく。やがて地面は血で固められる。リュイネルはかなりひどく混乱している様子だ。瓦礫を操れないらしい。
そらそうだ。瓦礫の主導権を奪ったのだから。
血と瓦礫とでは血の方が魔術的に強いと言うことだろう。
視界が揺れた。
こりゃ倒れたな私。みっともないなぁ私。
リュシアンの戦い方はここからだったのに。やっぱり師匠はすごいなぁ。
魔法を無効化したとしても相手は魔族。決着がついたわけではないのにもう目も開けてられない。
そこで信じられない出来事が起きた。
何も操作してないのに地面を覆っている私の血液が動いたのだ。
動いた血液はそのままリュイネルにまとわりついた。リュイネルは見えなくなりただのリュイネルの姿形をした赤い像ができた。
そのまま像は縮んでいく。中のものを圧縮するように。
所々からリュイネルの血が霧のように噴き出した。やがてそれは頭一つ分程の大きさの球体になった。
それが私の記憶に残っている最後の光景だった。
私は目を瞑った。
血と瓦礫に塗れた大地を残して。
「終わりましたね」
少し離れた建物の上から見ていた男が口を開いた。
「行くぞ」と横に座っていた女は言い、立つ。
「いいんですか?めちゃくちゃになってるし、今からでも応援に行った方が」
「良い。戦闘は終わった。あと片付けなんぞ私の知ったことではない」
女は戦場に背を向け歩き出した。軍服コートが風に靡く。
「そうですか...........全く関係ないですが、そうえば官帽どうしました?」
男が追従しながら問う。
「ほんとに関係ないな。空気読めよ」
「どうしたの?」
子供に聞くように男がもう一度聞く。
「....捨てた」
「どこに?」
「さっき通った繁華街で」
「はぁ、後で拾わないと」
男が吐いた哀れなため息はどことなく流れていった。
血と瓦礫の戦場に。
近々プロットを大幅に作り直す予定です。
下手したら新しい作品として投稿し直す事になるかも………
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