第11話 「ОN AIR」
首都テレビのBスタに 『ОN AIR』ランプが点灯する。
モニターにVTRが流れ始める。
ナレーションとともに、玲の宣材写真が映された。
―深町玲…本名・山名まちこ。目標とする女優はオードリー・ヘップバーン、と彼女のプロフィールには書いてある。
小さい頃のまちこと母親の写真が映される。。
―1970年、京都の芸妓の娘として生まれた。父親の名は知らない。
舞妓や芸妓の資料映像。
―小さい頃から芸事を習わされたため、学校の友達はあまりいなかった。
京人たちが作った自主映画が流れる。
―高校生の頃、文化祭に出品する8ミリ映画に出演したのが、芸能界入りのきっかけだった。
柴と玲の2ショット写真。
―彼女に女優の素質を見出したのは、当時大手プロダクションから独立したばかりの敏腕マネージャーだった。
和田のインタビュー。
「柴社長は、一から自分の手でスターを育てる覚悟でした。古巣のタレントを引き抜いたりはしなかった、仁義を守った。でもね、この業界…(何か言いたげ)まあ甘くはない、弱肉強食ということ、かな」
柴エンタープライズ第1期メンバーの集合写真が現れる。。
―2年後に事務所に残っていたのは深町玲だけだった。この二年間に、柴エンタープライズと大手芸能事務所との間で何が起きたのだろう?
Bサブでは、ひと悶着が起き始めている。
「誰だ!このナレ原書いたのは?」
驚いた藤原がP席から叫ぶ。
D席で、京人が手を上げる。
「私で~す」
少し考えればわかる。
その大手芸能事務所は、柴エンタープライズを潰しにかかったのだ、と。
「てめえ。J事務所にケンカ売るつもりかよ!」
「大手、と書いただけですよ。具体名は言ってないでしょ?」
VTRでは、玲のデビュー作『はつ恋』の映像が流れる。
―公開オーディションで勝ち取ったデビュー作『はつ恋』では、ヒロインを演じた。高評価だった。ブルーリボン新人賞も獲り、前途洋洋に見えた。だが……。
『深町玲、大物歌手Gと不倫!若手俳優Tとの二股疑惑も…』という女性誌の記事。
―この記事に出てくるGとTもやはり、件の大手芸能事務所から独立した男性アイドルだった。これはただの偶然なのだろうか?
以来彼女は、デビュー作一本だけを残しスクリーンから消えた…。
Bスタジオではコメンテーターたちが、固唾を飲んでそのVTRをモニターしている。
「ええ!こんなこと、放送していいんですかあ?要するに、デマを流して妨害工作を仕掛けた、ってことですよね?大手って濁したって、すぐにJ事務所だってわかっちゃいますよお」
売れないタレントがつぶやく。
キレ芸を売りにしている似非文化人の額に、汗が浮かぶ。
(ここで何か言ったら、俺がJ事務所に睨まれんじゃねえかよ。ち。なんだよ。いつもみてえに、お騒がせ女優を吊るし上げるんじゃなかったのかよ!)
VTRでは、首都テレビでの出演ドラマがダイジェストで流れる。
―活躍の場をテレビに求めた。しばらくは順調だったが…。
玲と母の2ショット写真が破れる。
―1995年、最愛の母親が他界した。この頃から彼女の精神は不安定になっていく。
精神科医のインタビュー。
「ここ五年ほどですかね、ずっと通ってらっしゃいます。病名は…双極性障害です」
字幕「双極性障害(躁鬱病)」
控えロビーでは、和田がオンエアモニターを見ていた。
(理解されにくい病気だ…同情を買うか?一気に引かれるか?)
つづく




