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パズル

 言われるがまま、誰もいないモカの家に

「おじゃまします」

 ってオレの声だけが響いた。

 

「どうぞ」

 かわいらしいピンクと白のスリッパが差し出された。

 

 …

 

 なんか…なんかこんな、かわいらしいものをオレが履いてもいいのか?って申し訳なかった。

 

 

 ⁈

 

 え、もしかして枯死って合鍵持ってたり⁈

 

 もう、モカの部屋にいるっ⁉︎

 

 モカと枯死は、もうそんな仲なんか⁉︎

 

 モカのおじさんとおばさんは、よく許したな…

 

 てか、家がうちからそんなに遠くもないのに…オレはなぜ枯死が行き来しているのを気づかなかったのだろう…

 

 頻繁には、来てない…のかな?

 

 そう、信じたいところだ。

 

 ゆっくりと、一段一段階段をのぼった。

 

 モカが、静かに部屋のドアをあけた。

 

 …

 

 オレは、いきなり枯死が殴りかかってくるかもしれないと覚悟して部屋を覗いた。

 

 でも…

 

 そこには、枯死がいない…。

 

 まて、トイレか?

 

 …でも、今までそこに人がいた気配すら感じない。

 

「モカ?」

 モカは、部屋に入るなりうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。

 

 そして…

 

「枯死」

 と。

 

 え?

 

 もしかして…枯死って…

 

「モカ…枯死って…」

「なくなったの」

 

 ⁉︎

 

 え…

 

「それは…ごめん…」

「ううん、春希が謝ることないよ?なくなったけど、いるもん。ちゃんとここに…」

 

 ギュッとうさぎを抱きしめるモカ。

 

 そして涙を流しながらモカは、

「わたし…もっと女の子してたらよかった。そしたら、ずっと…ずっとさ…」

「モカ…」

「春希には、ずっと一緒にいてほしかった」

「うん、オレはずっと一緒だよ?」

「なんで?それは偽りの一緒じゃん‼︎ほんとうに偽りなしでいたかったの」

「うん…」

 

 偽り…

 

 オレには、モカの彼を知ることはできない。

 モカが大好きになるほど…容姿も性格も変わるほど愛されるなんて…オレにはそんな彼に…敵うわけない。

 

「ごめん…」

 オレが抱きしめて、モカを救ってあげたかった。

 

 でも…やっぱりモカがいうように、ただオレが抱きしめても偽りでしかない。

 

 モカが求めているのは、もういない彼なのだから…

 

「彼はいつ…その…」

「枯死になったのは、わたしがロリの格好する少し前だったよね。」

 

 …

 

 そっか。

 オレの知らない間にモカには前から彼氏がいて、最近この世を去ってしまったってわけか。

 

「なんか…そんな辛い死を乗り越えてたなんて、全然知らなくて…モカに辛いこと頼んじゃってごめんな。」

 

 …

 

 

「ううん。枯死は、生きてるけど…でももう、わたしの中では、枯れた彼氏なの。」

 

 ⁉︎

 

「え、彼氏亡くなってないの⁉︎」

「うん。でもさ、彼女ができた時点で…もうわたしの中では、亡くなったも同然」

「彼女⁉︎モカがこんなに頑張っておしゃれして、中身も変わったっていうのに彼女⁉︎」

 

 …

 

「うん…でもさ、わたしが悪いんだよね。ずっとボーイッシュだったから。だから、いつしか見向きもされなくなって…それまでは、ずっとわたしが彼女ポジションだって思ってたのに…ずっとオタクだと思って彼女なんか…そんな存在興味ないって油断してたのかもしれない。いつもそばにいてくれたから…だから、そのポジションに甘えてた。なのに…なのにどんどんカッコよくなって、前髪とかあげておしゃれして…彼女なんかつくって…好きって言われなかったけど、わたしはずっと、付き合ってるくらいの感覚だったの。でも…」

 

 オタク…なんだ?

 マニアとかじゃなくて?

 

「オタク?」

「うん。パズルオタク」

 

 …

 

 はは…

 

 オレと一緒やん。

 

 

 

「オレと一緒だな。」

「そうだね。一緒…顔もそっくりだし、名前も一緒。なんなら全部一緒」

 

 ⁉︎

 

 ん?

 

 全部一緒なら、それはもう…オレなんじゃね⁉︎

 

 さっき、前髪あげてとか言ってたし。

 

 

「モカ、枯死になったのっていつ⁉︎日にち教えて‼︎」

 

 …

 

「たしか…三日とかだったかな?ついにできたんだっていきなり言ってきてさ」

 

 …

 

「モカ、来て」

 

 オレはモカの手をギュッと握って、オレの家に来てもらった。

 

「えっ?」

 

 なんだかわからないって感じのモカにパズルを見せた。

 

「これ、ついにできたんだ!やっとこさ。最後の一ピースは、モカに完成してもらいたくて…モカ、もしかして…オレに彼女できたと思った?」

「うん…できたんでしょ…。この前嬉しそうについにやっとこさ…でき…たって…え?…もしかして…できたのって…まさかこのパズル⁈そうなの⁉︎」

「うん、そうだよ。もしかしてモカの枯死って、オレのこと⁉︎」

「…そうだよ…。春希がさぁ…グズっ…か…かっ…彼女できたと思って、辛すぎて、毎日うさぎのぬいぐるみを春希だと思って…毎日泣いて…ずっとずっと苦しくて…グズっ…だから、いまさらだけど女の子っぽく頑張って…いまさらだけど…認めてほしくて…ヒグッ…」

 

 マジか…

 

 モカがかわったのって…まさかのオレのパズルのできた発言だったとは…

 

「モカ…ごめんな。てか、モカってすんごいオレのこと大好きじゃん」

「あたりまえじゃん‼︎大好きだよ…。好き、大好き」

「うん、オレも好き。大好きだよモカ」

 

 

 オレは、泣きじゃくるモカを抱きしめた。

 

 優しく包み込むように。

 

 そして、シャツのところについていたリボンをスルスルっと外した。

 

「モカ…苦しかったんだね。オレがもっと早く気持ち伝えてあげていればよかった。ごめんな、大好きだよ」

 

 リボンをほどいたところを、オレは優しくキスをした。

 

 そしてモカをじっと見つめて

「もう泣かせないから、勘違いもさせない。うぬぼれるくらい、わたしのことめっちゃ好きなんじゃんってくらい、これからは、きちんと好きを伝える。モカをいっぱい泣かせた分、愛返しするな。だからキスしていい?」

「うん。てか…愛返しってなに?」

「これだよ」

 

 チュ〜♡

 

 チュ〜♡

 

 チュ〜〜っ♡

 

「モカ、オレ…毎日キスしてハグしたい。ほんとはオレ、うさぎのぬいぐるみにも嫉妬してるからな。なんなら、モカに彼氏できたと思って嫉妬で狂いそうだったんだからな。今でも架空の彼氏思い出すだけで狂いそう。モカ、もう離さないからな。」

 

 チュチュチュチュチュチュチュ〜♡

 

「ちょ…キスしすぎだよ。どんだけわたしが好きよ」

「まだまだやめないよ?オレの愛情表現だから。ずっと我慢してたんだし。何年分たまってると思ってんの?」

「それいうなら、わたしだって」

 

 チュ〜チュチュチュチュチュ〜♡

 

「「ふふ♡」」

 

 

 チュ〜〜〜♡

 

 たくさんキスをして、たくさん抱きしめあった。

 

「モカ、オレのこと大好きすぎるだろ」

「春希こそ…わたしのこと、大好きじゃない?」

「大好きだよ?なんなら愛してるよ、モカ」

「わたしも愛してる」

 

 

 ギュッ〜♡

 

 

 オレとモカは、これからたくさんケンカをするかもしれない。

 

 でも、それ以上にイチャイチャをする。

 

「オレ、早く大人になりたいな」

「なんで?」

「だって、そしたら一緒に暮らせるだろ?ずっと一緒にいられる」

「そうだね、楽しみだね」

「うん。でも、今も楽しい」

「そだね。楽しくて幸せ」

「うん、幸せにします」

「プロポーズみたい」

「プロポーズだよ?」

「え?でも、まだわたしたち学生だよ?」

「いいじゃん。予行練習だよ。」

「そっか、じゃこれももっと練習しなきゃだね」

 チュ♡

 

「おっ、誓いのキスか。これは予習復習が大事だな」

 チュ〜♡チュ〜♡

 

「どうしよう…好きすぎる」

「オレもだよ♡」

 

 

 チュ〜♡

 

 

 パズルは、全部組み合わせると完成するけど、オレたちはこれからも試行錯誤して、未来のピースを完成させていきたいと思います♡

 

 

 おしまい♡

 

 

 

 

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