そんな顔…
モカとの買い物に、どんな服装で行こうかかなり迷ったけど…
結局普通で行くことにした。
だって…そもそもそんな服ないし、メイク道具もない。
あったところで、オレに似合うわけがない‼︎ってさ⁉︎
あれ?
オレは…モカと一緒に出かけて良いのですか?
それこそ釣り合わなくね⁉︎
…
どうなんだろ…
モカが、普通の服装ですらオレと釣り合わないくらい、モカはかわいいんだよなぁ。
オレと幼馴染していた頃を思うと、ありがたいことだよな…ってか、今も遊んでくれてるんだから、ありがたいのか。
ってか、もう待ち合わせ場所にそもそもオレは着いている。
だから、いまさら釣り合わないってなったとしても、ただただいまさら感半端ない。
ふぅ〜っ♡
「ゔぅわあっ⁉︎」
思わず大きな声を出してしまった。
周囲の人がチラッとこちらをみた。
…
だって、いきなりなまぬるい息を後ろからかけられたもんだからさ。
なまぬるい息がかかったほうを振り向くと、そこにはにっこりしたモカが立っていた。
えっ⁉︎
か、かわいい〜♡
ゴスロリやん
オレは、こんなお人形さんみたいなこと一日中一緒にいられるんだ?
幸せすぎるだろ。
「モカー…いきなりふぅ〜って、誕生日のろうそく消しじゃないんだから…」
「あはは、ろうそくって!面白いねぇ♡春希は、やっぱり面白い…ね」
…
笑ったかと思うと、いきなりかなしい顔のモカ。
春希はってことは、彼氏は…いや枯死は、つまらないのか?
「なぁ、モカ」
「うん?」
「彼氏…いや枯死って……あー…、やっぱりなんでもない。じゃ行こっか」
「うん」
モカは、時々表情を曇らせる。
やっぱり枯死とは、うまくいってないのかな…。
雑貨屋さんにはいると、
キュルルルンキラキラキラキラ
と、かわいらしい曲がどこからともなく聞こえてきた。
ん?
なんの音…だろう?
キュルルルンキラキラキラキラ
「あ、モカもしかして携帯なってない?」
「あ、ほんとだ。」
モカは、オレに手でごめんと合図した。
その合図にこたえるようにうん、と頷いた。
彼氏…あ、枯死かな…
一応連絡は、とっているんだな。
会話は、あまりはっきりとは聞こえないけど、でも普通に会話してたっぽい。
パタパタとモカが駆け寄ってきて、
「ごめんね?」
と、申し訳なさそうに謝ってきた。
「ううん、全然。それよりこれモカに似合いそう」
黒のリボンのヘアピンをみせた。
「わぁ〜‼︎かわいいね〜。春希もやっぱりこういう系が好きなんだ?」
も?
今、モカは春希も《・》って言ったね?
春希もってことは、やっぱり枯死も好きなんだろうな。
モカは、すごいな。
よっぽど枯死が大好きなんじゃないか。
こんなところで、オレと買い物なんかしてていいのだろうか…?
時折みせるかなしい表情は、やっぱり枯死にあいたいんじゃないかな。
枯死に甘えたいんじゃないかな…
あのボーイッシュモカが、ゴスロリになるんだもんなぁ…。
こんなリボン、絶対ないないってちょっと前のモカなら、笑いながら言ってただろうに…今は、かわいいって言って鏡を探して、自分の髪に合わせているんだもんな。
変わるってすごいことだ。
「モカ、めっちゃ似合うよ」
「え、ほんと〜♡なら、買う〜」
嬉しそうにレジへ向かった。
モカ…
もう、そこにはオレの知らないモカがいた。
まるで別人なんだよなぁ…。
少し離れたところから、見守るお父さんみたいになるオレ。
「お待たせ♡どうしたの?運動会をみにきたお父さんみたいに腕組みして立って」
…
モカは、進化してるのに…オレは衰えてるやん。
オレも変わりたいな…
「オレ、ちょっとヘアワックスでも買おっかな」
「え…」
「なんで固まるんだよ⁉︎やっぱりオレには似合わない…か」
「ううん、そんなこと…ない。絶対」
また、モカはかなしい顔をしたんだ。
その度にオレもかなしくなる…
たぶん枯死が絡んでると感じるのは、オレだけなのだろうか…
モカ、なんでそんな辛い恋してんだよ…
続く。