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学校で噂の猫系彼女は、実は僕で童貞を捨てました。

作者: Azusa.

どうも、底辺高校生作家です。

よければブックマークや高評価をよろしくお願いします。

 2年3組教室にて。

今日の最後の授業である、7限目の数学が終わると、クラスの者たちは達成感に溢れたのか、ぞろぞろと喋り始めた。


美心(みこ)ちゃーん!

  今日は一緒にあそこのカフェ行こうよ」

「うん! 行く行く!」


 そんな中、とある女子と、クラス1の清楚系美少女である猫谷美心(ねこたにみこ)との会話が聞こえてきた。

彼女は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能なので、クラス中の男子はもちろん、同クラスの女子にも、他クラスの男子にも絶大な人気を誇っており、まさに、この学校のマドンナ的存在なのである。


 そして、彼女は猫系と言われている。

なぜなら、去年の文化祭のクラス仮装パフォーマンスの際、彼女は猫の仮装をしたのだが、それが可愛すぎると話題になったからだ。

誰がどう見ても一目で可愛いと判別できるその美貌には、全生徒が酔いしれたとか。

……まぁ、猫系と呼ばれるのはそれだけの理由だが。


 そんな彼女には、もちろん男子からの告白も数知れずきている。

しかし、どれも全て断っており、主な理由は、両思いではないからだそうだ。


 しかし、そんな彼女に、最近では彼氏ができたらしい。

だが、おそらく誰にもバレておらず、まさに2人だけの秘密の存在になっている。

男子生徒が狙っているとも言われる彼女に、彼氏がいるという報告を聞いたら、そいつらは気絶でもするんじゃないか。

それほど羨ましいことだからな。



 ……まぁ、俺なんですけどね、彼氏って。

……そう、俺なんですよ、猫谷の彼氏。

全男子生徒に妬まれるであろう対象が俺なんですよ。

顔立ちも俺よりいい奴いるだろうに、猫谷は俺を選んでくれたんですよね。

しかも、向こうから告白してきたんですよね。

幼馴染だからっていう理由でね。

……だからね、毎日幸せなんですよ。

俺は一人暮らしなんですけど、猫谷も一人暮らしだから、両者とも親の管理下に置かれてないんで、やることはヤるんですよね。

まだヤッたことないですけど。

でも、今日もどうせ、猫谷は友達と別れたあとに俺の部屋に来て一晩泊まっていくと思いますよ?

……ね?

いいでしょ?






―――――――


ピンポーン


 部屋のチャイムが鳴った。

おそらく、美心が来たんだろう。

時刻は19時30分を回った頃。

何か、いつもに増して来るのが早い気がしなくもない。


ガチャ


 俺がドアを開けると、やはり美心だった。

走ってきたのか、はたまた季節が夏に近いからか、どこか汗ばんでいて可愛く思えた。

……そして、胸元がチラッと見えて少しエロかった。


「美心にゃんが来たにゃんよ〜」

「……お前、クラスから猫系って言われてるからってずっと引きずってるよなそれ」

「黙れ」

「急に語気を強めるの怖いて」


 日常会話を交えながら、俺は美心を中に入れた。

俺の家はマンションの一室を借りているだけなので、そこまで広くない。

狭めのキッチンと、狭めのトイレと、狭めの風呂と、あとは他のに比べたら少し広いリビングだ。

リビングといっても、ベットと本棚とか諸々で埋まっているところが多いため、そこまでくつろげるスペースはない。

しかし、そうにも関わらず、美心はそのそこまでくつろげないスペースに寝転び始めた。


「自由人だな…。

 普通に床汚いから、早く着替えてベッドで寝転べよ」

「やだ。

 というか早くお風呂入りたい」

「ハイハイ……。

 じゃ、洗濯するもの全部洗濯機に放り込んでおいて。

 後でやるから」

「ありがとにゃん」

「うん、可愛い」


 そうすると、美心は立ち上がり、風呂場へと向かった。

俺はもう風呂から上がっているので、風呂掃除は必然的に美心が担うことになる。

本人も最初は嫌そうだったが、最近は慣れたのか、そんな顔一つしない。


 美心はここ最近、ずっと俺の家に居座る。

最近といっても、もう3ヶ月にもなる。

最初の方は1週間だけ…なんて言っていたが、今はその面影は全く見えず、このまま卒業するまでこうなるんじゃないかと思っている。

……まぁ、それはそれで嫌じゃないんだけど。


 俺は、美心が風呂から上がるまでに家事を済ませる。

洗濯、洗い物、掃除、その他諸々。

今日はそうではないが、美心がここで晩飯を食べたときは、洗い物が2倍になる上、俺がすべて担うので厄介だ。

しかし、今日は俺一人なので、少し楽に感じる。

……まぁ、洗濯はずっと2倍なのだが。


 そして最後、美心が脱ぎ捨てた制服をハンガーに掛け、吊るしておく。

ついでに俺のも。

そうして、俺の家事が終わるのだ。


「上がったにゃ〜ん」


 やがて、美心がリビングに姿を現した。

しかし、その姿は、簡易的なパジャマに包まっているだけであり、ノーブラで、無防備で、愛らしかった。

何か、少し、気分が高鳴るのを感じる。


「いや〜、たっちゃんの残り湯良かったにゃんよ〜」

「…美心ってそういうところあるよな……」


 たっちゃんとは、俺の名前である仁科達樹(にしなたつき)を略した愛称のことである。

まぁおそらく、そう呼んでいるのは美心だけだが。

だが、なぜか本人の中に÷この呼び名が定着しているらしい。

普通に達樹(たつき)って呼んだらいい話だのにな。


「じゃあ、11時くらいになったら電気消すぞ。

 それまでは勉強やらスマホいじるやら何とかしておけ」

「了解にゃん!」


 そして、俺達は個々の時間へと移っていった。







 時刻は11時を回った頃。

窓を見ると、外界はすっかり暗く、人影も少なくなっていた。

そんな中、俺は少し強めの眠気に襲われながら、なんとか目を開けていた。

というのも、11時を回ったら電気を消すと言っていたのだが、美心がものすごい集中力で勉強をしている状況であるために、消すに消せないのだ。

(こんなやつでも一応成績優秀なんだよな…)

 俺だけで電気も消さずに寝たらいい話かもしれないが、それは違うじゃん。

だってせっかく彼女と半同棲状態なのに、一人で寝るのは流石に寂しいし。


 そう思いながら、美心のことを気長に待っていると。

ようやく勉強道具を片付け始めるのを見受けた。

やっと寝れる、そんな解放感のようなものに、俺は心が満たされた。


「よし、じゃあ早く寝よっか」


美心も疲れているのか、語尾に「にゃん」をつけない。

そして、あくびをしている。

相当眠い中で頑張っていたんだろう。


 俺は、眠いので何も言わずに電気を消し、すぐさまベットに飛び込んだ。

すると、同様に美心も、俺のいるベットに飛び込んできた。

というのも、この部屋にはベットを1つしか配置していないため、いつもこのように2人で同じベットの上で眠りについているのだ。


 ……しかし、美心の寝相が悪いから、朝に俺だけ布団を被れていなかったりすることが多々あるから、お前らが思っているほど良いものではない。

したがって、幸せを感じられるのは完全に眠りにつくまでだ。

それからはあまりよろしくない。


「ふぁぁぁぁ……」


 俺は大きなあくびをした。


 一緒のベットで寝ているからって、対面で寝ているわけではない。

美心の方が一方的に背後から抱きついてくるだけで、俺はそれをただ受けて寝ているだけなのだ。

……だが、今日は美心は抱きついてこない。

もう眠いから寝たのだろうか。

確かに、今日はいつもに増して疲労してそうだったしな…。


 俺は、そう気になったので後ろを振り返ってみた。

すると。


「………んっ…」


 美心が俺の頬に口付けをしてきた。

その唇は柔らかく、全てを包み込んでくれるかのように思えた。


「……!!!…」


 俺は慌ててしまい、ゼロ距離である美心の顔から離れてしまった。

すると、美心は戸惑ったような表情を見せる。

美心は首を傾げると、なんだか少し悲しそうな目を向け、こちらを見てきた。


「……嫌、なの?」

「……………。」


 俺は返答に困ってしまう。

嫌なわけがないのだが………。

……一体、なぜなのだろう…。


 自分でも、分からなかった。


「……な〜に、たっちゃん。

 顔を赤くしちゃって」


(……!!!…)


 俺の顔が赤いらしい。

やばい、結構照れてしまうんだが……。


「ふふっ、なんだか赤ちゃんみたいで可愛い」


 彼女が言葉を連ねていくにつれ、自身の頰がどんどん赤らんでいくのを感じた。

……少しばかり、恥ずかしい。

……いや、少しでなく恥ずかしい。


「……………。

 ……ねぇ、たっちゃん、私とえっちなことしようよ」


 美心は、俺の耳元にそう囁いてきた。

……まさか、今日で初めてになるが、俺は美心と交わるのだろうか。

……初体験は、今日なのだろうか。


「……!!!………」


 すると、俺の中の何かが壊れた気がした。

そして、俺の下の方に強い欲求を感じた。

……これは、間違いなく劣情そのものである。


『美心を襲え』


 俺の中の何かがそう語りかけてくる。

彼女も乗り気なようで、準備が完了しているようだ。

俺もそれに便乗するかのように、早速身ぐるみを剥いだ。


「……えっちなこと、してくれる…?」


 そう言う彼女の顔は、メスそのものだった。

顔を凄まじく赤らめ、俺を欲している彼女は、まるで美心でないかのように見えた。


「…………」


 俺は無言で彼女と交わった。

そんな俺こそ、俺じゃないみたいだった。


 理性など、とっくに壊れていた。

そんな俺に、前戯など必要なかった。

ただただ、愛おしい彼女を求め続けてしまった。

それが大きな失態であることは、考えずとも明白であった。

それに気付くのには、当然ながら遅すぎた。


 実に激しい一夜であった。

 






―――――――


 学校1の清楚系美少女を犯してしまった。

…これは大罪だ。


 ゴム付けたから良いって言う話じゃない。

未成年ながら、何の責任も取れないのに、ただただ無責任に欲望の捌け口として彼女を抱いてしまったのだ。

これは、人間的にも良くないだろう。

 美心が乗り気だったとしても、あんなに激しい行為への同意はあったのか。

答えはNOだろう。

痛そうだった。

少し辛そうだった。

でも、言えなかったんじゃないか。

それでも、何も気を使わずに理性を壊していった自分がいる。

それが、どれだけ醜くて惨めか。

それは、彼女が一番分かっているのだろう。


 ……俺は、彼氏失格なんだろう。

美心も、朝になったら蛙化してるんじゃねえかな。

……まぁ、いっそのことそうでもいいのかもしれないが。

…………。






――――――


 翌朝。

時刻は9時を回ろうかというところ。

今日は土曜なので学校はない。

だから美心もゆっくり寝てるのかと思ったが……。


「…………。」


 俺が目覚めると、もう横に美心の姿はなかった。

 

 ……おそらく、帰ったのだろう。

嫌気が差して、恋に冷めて、そう思って帰っていったんだろう。

無理もない。

なんせ、こんな俺だからな。

 俺に取り柄1つないと思うが、それでも美心は恋してくれた。

そんな期待を裏切るような形になったんじゃないか。

俺の中では後悔が残る。

やっぱり、欲望に身を委ねるものじゃない。

劣情だけが先走ってしまう。

美心のことを何も考えられずにこんなことをしちゃうようじゃ、当然ダメだ。

もう別れ話でもされるんじゃないか。

起きたらまず、美心に誠心誠意の謝罪をしなけれ―――


「あ!

 たっちゃんおはよー!」


(……!?…)


 ……どういうことだ。

……一体、何が起こっているのだ。

……しかし、なぜか嬉しくて、ありがたくて………。



「あれ、ど〜したにゃん?」


(………。)


 ………。

…………。


「あれ〜、なんで泣いてるにゃん?」


 ……俺は泣いているようだ。

グスン、グスンと、密かに泣き音を立てながら。

必死に涙をこらえようとしたが、それは無駄だったらしい。


「うっ…。

 なんでたっちゃん抱きついてくるの?」

「……ごめんな美心…………ごめん……。

 嫌だったよな………痛かったよな……ごめんな……。」


 すると、彼女は何かを察したのか、頬を赤らめた。

それも、いつもに増して。

俺にはそれがはっきりと映った。


「……別に、苦しむほどの痛みじゃなかったし、その〜、大丈夫というか………」


 言葉に詰まりながらも、彼女はそう答えた。


「いや、でも―――」

「……いや、別に私もその……気持ちよかったというか……

………別に痛みよりも気持ち良さの方が………」

「だとしても――」

「あぁ、もぉ分かったにゃんよ!」


 彼女は、しつこく付き纏う俺に痺れを切らしたのか、少し怒り混じりの、少し呆れ混じりの言葉を発した。


「そもそも私が誘ったんだから、たっちゃんが何か後悔する必要もないし!

 あと、痛かったけど別に大丈夫だから!

 そんなに気にしなくても私は丈夫ですぅ!」


(………。)


「それに!

 何を心配してるか知らないけど、こんなことで別れたりしないから!」


 ………。

……俺は、考えすぎか。

確かに、誘ってきたのは美心だし、俺が悔やむ必要はないと言われればそうだし。

あと、結構長く付き合ってるから、些細なことで別れるような関係ではないことは確かだ。

もっとも、これが些細なことに該当するかは、美心次第なのだが。


「…はぁ、ホントにめんどくさい彼氏持ったにゃん……。

 じゃあ、友達と出かけてくるにゃんから、行ってくるにゃん」


 そう言うと、美心はまとめていた荷物をひょいと持ち上げ、靴を履き始めた。


 ……しかし、ホントに俺は良い彼女を持ったものだ。

これを許してくれるなんて美心くらいなんじゃないか。

そりゃ学校でも人気出るわな……。


ガチャリ


「じゃあ、行ってくるにゃ〜ん」


 そう言うと、美心がドアを開けた。

今から出かけるのだ。

俺はせめてもの見送りに、玄関まで行き、美心の顔をじっと見つめていた。

すると美心は、ドアノブを握ったまま、なぜかこちらに向かってきた。

すると、何やら恥ずかしそうに、下を見ながら近づいてくる。


「……まだまだ私、たっちゃんのこと好きにゃんから…」


 ……そう、耳元で呟くと、俺の頬に軽いキスをしてきた。


(……!?…)


「じゃあ、行ってくるにゃ!」


 ガチャリ、とドアが閉まると、彼女の匂いを感じた。

うっすら見えた彼女の頬元は、やはり赤らんでいた。

 

 ………ホントに、良い彼女を持ったものだ。

 

 


読了ありがとうございました。

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