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<view:ダリア>
「最近の若者はうるさいのぉ?」
そう聞こえた声に俺は振り向く。
灼熱の業火に包まれた町の中に響いた低い声。
声の主の姿は確認できなかった。
「上じゃよ。上」
その声に俺は空を見上げる。
斜め上部、視界にとらえたのは人より大きい何かだった。
「・・・誰だ」
俺はそう問う。
黒いマントに覆われた体。
角度的に顔が見えない・・・
生物かどうかも怪しい・・・
「ワシは・・・」
何かはそう話しながら俺に顔を見せた。
白骨の体。身のように赤黒く光る眼・・・
見覚えがある。
「リッチか・・・?」
俺がそう呟くと白骨の彼は赤く染まった空を見て高らかに笑う。
「リッチか! 若造の目にはそう映るか・・・ 違う・・・違うなぁ? だが、高貴な魔物を選んだことだけは誉めてやろう」
そう言ってフワフワとしたままゆっくりと降りてくる。
「ワシはリッチなどと関係が深い・・・そういう意味では着眼点はよかったな・・・」
「関係が深い?」
「親じゃよ」
そう話しながらカタカタと頭蓋骨を鳴らす。
「親・・・スケルトン系の生みの親ってわけか・・・」
「そうじゃ」
聞いたことはある。
平和な世界、そこに現れた多種多様な魔物。
彼らはどこから生まれ、どう生きてきたのか。
一説には魔王が生み出したといわれているが、一番可能性があるとされているのは親がいること。
彼らも繁殖、または別の手段を用いて数を増やすといった説だ。
それは何体か存在し、もちろんスケルトン系の魔物の親だって存在する。
それが・・・
「骸の王・・・」
「ほう?貴様ら人間の間ではそう呼ばれているわけか・・・悪くないではないか」
そう話しながら骸の王は歪な形をした剣をマントから取り出す。
「魔界・・・ここは我々のテリトリーだ。侵入者の若造、ここで死んでもらうぞ」
その言葉の直後、周囲が紫色に怪しく光り、カラカラと音を立てて何かが生み出された。
骸の軍隊・・・これが、骸の王の能力か・・・
生成されたスケルトンたちは俺を見つめて殺意をむき出しにする。
武器を持ち、戦闘が開始されるのはすぐだった。
群れの中から一本の矢が飛んでくる。
それが戦闘の合図となった。
姿勢を低くして矢を回避する。
その状態のまま走り出し、残った腕でナイフを引き抜く。
「はぁぁぁ!!」
渾身の一撃を叩きこむ瞬間、体に赤い何かが当たり炎上する。
衝撃ではじかれるように壁に叩きつけられ、肺から酸素が押し出される。
「あっつ・・・」
視界から炎が消え、正体を視界にとらえる。
数十・・・いや、数百はいるだろう軍隊の最高峰、神々しく光る何かに目を細める。
「ちっ! スケルトンソーサラーか・・・」
見ただけでも数十。
確か、スケルトンソーサラーは銀等級だっただろうか。
個々では脅威ではないが、数がいると一気に等級が跳ねあがるタイプのモンスターだ。
「くっそ・・・この傷で勝てるわけない・・・」
俺がそう呟くと骸の王がこちらを見てにやりと笑う。
「若造・・・その傷では勝ち目がないだろう?」
バレてやがる。
だが、事実だ。
片腕はない・・・傷もあり上手く動けない。 ならどう戦う?
瞬間、遠吠えが響き渡り、スケルトンたちの動きが止まる。
「この声・・・」
生きていたのか。治療が早くて助かるぜ・・・
「フィーニス!」
空から大型の獣が降り立つ。
「お待たせ」
「よかった、生きてたんだな。赤等級になってんのかよ」
俺のその言葉にフィーニスは笑いながら骸の王をにらむ。
「あいつ・・・やばいね」
「わかるか?」
「ええ・・・完全に赤等級・・・もしかしたら黒かも」
フィーニスはそう話しながら牙を見せる。
「どのくらい操れる?」
俺の言葉に彼女は首を振る。
「正直わからない。 数が多すぎてどれがどれか・・・」
そんな時、どこからか声が聞こえる。
「俺らもいるから安心しろ」
直後、地面が黒い液体で満たされ、その中から何かが這い出てくる。
「ジェイル・・・」
「お待たせってやつか?」
彼は笑いながらそう呟いた。
「ダリア、骸の王はお前がやれ。 それ以外はこっちでどうにかする」
そう言って走り出した無数にいるレイドの背中を見つめる。
「あいつらは気が早いわね」
「遅いよりいいさ」
そう話して俺も走り出した。
「ちょっと失礼!」
スケルトンたちの頭を足場に骸の王に接近する。
「ここでお前はおわりだ・・・!」
骸の王にナイフを突き立て、力を込める。
ガチガチと金属の音が響く。
「こいつの骨・・・金属か!?」
骸の王の顔を見上げ、そう叫ぶ。
にやりと笑う彼の背後に岩が見えた。
「・・・なんだ?」
俺の言葉に骸の王も背後に視線を向ける。
周りを見てみると、建物が修復されていく。
「治っていく・・・」
「それと同時に破壊される」
俺の言葉に返すように骸の王が話した。
「何か知っているのか?」
「ワシらの協力者と言っても過言ではない・・・転移者・・・概念反転」
その言葉には聞き覚えがあった。
白髪の転移者・・・あの少年・・・魔界を被せたのは何か企んでいたからか・・・!
瞬間、彼のマントが翻り紫色の球が視界に入る。
そこにナイフを突き立てると、骸の王は息絶えた。
「・・・よわ!」
そうか・・・こいつの能力は使役で本体は別に強くないのか?
「それより・・・」
俺は疲れている仲間に視線を移す。
血を流し、傷だらけのフィーニス。
ジェイルも息が上がり、天を仰いでいた。
あぁ、そうか。骸の王が弱かったんじゃない、彼らの傷と引き換えに恩恵が発動した結果か・・・
俺は頭を振り、雑念を振り払う。
「フィーニス・・・」
俺は彼女の名前を呼びながら近づく。
「どうしたの?そんな焦った顔して」
「今の状況・・・かなりやばいかもしれない・・・」
「え?」
俺の言葉にフィーニスは気の抜けた声を漏らす。
その声は業火の音に吸い込まれた。




