12
〈View:ダリア〉
ゆっくりと目を覚ます。
ドクドクと鼓動が早くなり、呼吸が荒くなった。
「どのくらい・・・眠っていた?」
最後に脳裏に焼き付いている光景は、弾丸の薬莢が変形して・・・そこからは何も覚えていない。
体に痛みはない・・・
死んだのか?
俺はゆっくりと体を起こす。
服は血で重くなっていて、体に張り付く。
なぜだろう、俺が意識を失う前より視界が暗い・・・
建物が倒壊したのか・・・?
「・・・そうだ」
そう言って俺は体にあるはずの傷を探す。
視界は悪く、自分自身の手すらギリギリ見える程度だ。
俺は最初に顔を確かめる。
倒れる前・・・最後に受けた攻撃になるからだ。
触れながらゆっくりと確かめる。
「ない・・・」
俺は小さくそう呟いて服の中に手を入れる。
体を撫で、確かめる。
「ない・・・なんでだ」
だがラッキーだった。
これならフィーニスやレメディとの戦闘に参加できる。
「助けに行かないと・・・まだ上で戦ってるはずだ」
俺は自分に言い聞かせるようにそう言って歩き出す。
戦闘中のはずなのになんでこんなに静かなのだろう。
1歩歩き出した途端、何か固いものにあたる。
「なんだ?」
ただの瓦礫だろうか。
というか、これだけ暗いと蹴りながら前に進むしかないな・・・
「よっと・・・」
そうして少しずつ前に行く。
直後柔らかい何かを踏みつける。
「・・・なんだ」
流石に気になり、俺はしゃがみ込み踏んだものを手に取る。
「・・・服か?」
なめらかな触り心地が指先に伝わる。
だが、正体はわからない・・・
その時、足音が聞こえる。
何人だ・・・
暗くてわからない・・・
「ダリア!フィーニス、レメディ!」
そう話す声には聞き覚えがある。
ジェイルか?
「ここだ・・・」
俺はつぶやいた。
きっと・・・おそらくジェイルたちの見えていないのだろう。
「暗いな・・・おい!誰か屋根に穴開けろ!」
ジェイルがそう叫んだ瞬間に何かが屋根に穴を開ける。
月明りが差し込み徐々に視界が明るくなる。
「・・・ダリア」
そんなタイミングで、ジェイルが悲しさに満ちたような声を出す。
彼らは体が墨や闇のように黒く、表情が分からない。
でも、それでも、見ている方向くらいはわかった。
ジェイルの見る先は俺の目の前・・・つまりは俺が今触れている何かを見つめていた。
俺はゆっくりと目線を下げて、自身が握ってる何かの正体を確かめる。
それは白く、きれいな服だった。
いや・・・少し汚れているか・・・
でも、見覚えのある綺麗な白い服だ。
「・・・レメ・・・」
俺が服を強く握ると、引っ張られた服のシワが伸び、血が滴る。
ポタポタと滴る赤い血を見つめ、こちらに続く血の道を辿る。
「・・・フィーニス!」
そう叫ぶと、俺の服に体重がかかり体は引っ張られる。
「・・・ダリア様。よかった、間に合ったんですね。 博士と・・・クロークス様は死なせてしまいましたが・・・わが主・・・あなたの命は救えました・・・」
そう言いながら横目でフィーニスを見つめていた。
「彼女は・・・ダリア様よりかは浅かったので手は施していません。 でも・・・今なら・・・」
そう話した瞬間、フィーニスが咳き込む。
「ダリア・・・?よかった・・・生きてたんだ・・・」
俺だけ・・・救われたのか?
俺だけ・・・
そんな時、ジェイルたち・・・レイドの集団が目に入る。
「お前ら・・・治療・・・治療できないか!?」
俺の問いに誰も答えない。
「なんだよ・・・何してんだ!? この世界は弱者ばかり・・・なら、裏のお前らなら治せるんだろ!?」
そう。
俺は間違ってはいない。
これだけレイドがいるんだ・・・一人くらい・・・
「あぁ、できる・・・でも機械の彼女・・・その子は治療じゃなく修理だ。俺たちの管轄じゃない・・・治せない」
ジェイルは悔しそうな声でそう話す。
だが・・・全員が死ぬ覚悟を持ってここにきている・・・この光景は、ひどく滑稽に映ったかもしれない
・・・それでも・・・俺には仲間を見殺しにする選択はない!
「誰でもいい・・・レメディをシャインソフィアに連れてけ! フィーニスはこの場で治療!」
そう叫びながら俺は立ち上がる。
「ダリア・・・お前はどうするつもりだ?」
ジェイルがそう呟く。
「・・あの二人を追って、両方とも殺す」
「場所はわかるのか? それに勝てるわけがない・・・」
「魔力の粒子が見える・・・これなら追いかけられる・・・」
そう呟く俺の手をジェイルがつかんだ。
「だめだ・・・許可できない! 俺らがいるこの下には魔界につながる扉があるはずだ・・・ここまでまで来たんだ、やっと・・・今なんだよ・・・今しかない!」
「だとしても・・・!俺は仲間を見殺しにできない・・・。 一度戻れば相手に立て直す時間を与えてこのチャンスを見逃すことになる・・・でも・・・でも・・・」
そんな会話をしているとき暗闇から足音が響く。
「それでも・・・仲間を見捨てられない・・・わかるぜ、ダリア」
それは過去に協力関係を提案し、今は仲間となっている日本人の男だった
「ハルト・・・」
「シャインソフィアに行けば治せる・・・任せろ、俺がやってやる」
そう言ってハルトはレメディを持ち上げた。
「助かる」
「いいさ、仲間だろ? だが約束・・・絶対に勝てよ」
「・・・同じ日本人だろ・・・気にならないのか?」
俺はたんぱくな反応をするハルトにそう問う
「さぁな。友達って感じでもないしな・・・名前も知らん・・・ 名前の知らない同郷のやつより、名前を知ってる異国の友達の方が大事だろ。 じゃ、またな」
そう言い残して彼は姿を消す。
「いまのは・・・」
「・・・仲間だ、最強のな。 フィーニスを頼む」
そして俺は歩き出す。
魔力の感覚はまだ消えていない。
恩恵も纏われてる・・・
これなら・・・




