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私の腕には確かに赤く光る腕輪が取り付けられている。
経験と、知識だろうか。
それが追いつき、私の等級が上がった?
それとも神が戦えと、一時的に力を与えたのか?
『万能跳躍』のカズマとの戦闘はこれからだろう。
私の能力で兵士たちは皆殺し合っている。
だから、1人に集中すれば倒せるはずだ。
あの驚きようから察するに、赤等級の冒険者をみるのは初か、戦ったことがないかのどちらかなはずだ。
なら、転移者よりかはこの世界に詳しい私に軍配は上がるはずだ。
早く倒してダリアを探さなくちゃいけない。
地面が爆発したのも、おそらく転移者の仕業だ。
そして、彼らは驚くほど強い能力を有している。
早く行かなくては・・・
「赤等級なんて聞いてないぞ!」
カズマが怒鳴るようにそう話した。
私より身長が高かったカズマも、獣化してしまえば私より低くなる。
「私だって赤等級になるなんて思っても見なかった」
確かに、私はずっと金等級だった。
ダリアは銅から上がらない。何か、理由があるんだ。
私はずっと、貢献度を可視化しているものだと思っていた。
誰かの役に立ち、誰かを助けると評価が上がるのだと。
だが、その理屈だと、私より先にダリアが上がらなくては意味がない。きっと、恩恵に関係するのだろう。
「あなた達の能力は誰が与えたの?」
私はカズマに質問をする。
単純に気になったからだ。
「神じゃないか?しらねぇよ」
カズマは考えるそぶりすらせず、即答でそう呟いた。
だが、神とは一体なんなのだろうか。
私たちが言う神と言うのはアルゴとかのことだが、これに対しても文献や情報は少なく、知識としての存在も曖昧で、信仰している人間は限りなく少ない。
「でも、能力とかの出所なんか別にいいだろ?」
カズマはそう話しながら姿を消す
「消えた・・・!」
瞬間、背中に鋭く重い痛みが走る。
「フィーニス様!」
レメディの叫び声が響き、カズマは私の背中にいるのだと認識する。
私が大きくなってしまったから、レメディは武器を振り回せない。
だが、小さくなったら戦えるのか・・・
無理だ。
彼女は他者の気持ちを理解できない。
なら、予測することも不可能だろう。
彼女は、レメディはきっと、彼に勝つことはできないだろう。
だから、私が戦わなくてはならない。
レイドと協力すれば多少は変わるかもしれない。
でも、能力や恩恵を持たない彼らが勝てるとは到底思えなかった。
私は・・・それでも
「痛いわね!」
私は体を揺らし、カズマを振り解こうとする。
深く突き刺さったナイフが、振られた勢いでそのまま滑り、皮膚を切り裂いた。
激痛が走り、傷口は焼けるような暑さに包まれる。
血液が溢れ、毛が重くなるのを感じる。
「おっと」
カズマは着地した後に、すぐ距離を取る。
握ったナイフは血で染まり、切先から床に流れ落ちる。
「浅かったか・・・」
カズマはそう話し、私を見つめた。
赤等級を相手しているのに動じないとは・・・さすがと言うべきか。
だが、私も負けられない。
爪を立て、牙を剥く。
ナイフに反射する私の姿は、正真正銘、獣の姿をしていた。




