15
座り込んだ男に、俺は首を傾げる。
「早くしろ。仲間がくるかもしれない・・・」
「でも、敵と話すのか・・・」
乗るとは言ったが、すぐに終わってしまうような小さくて短い会話だと思っていた。
だが、座り込むと言うことはかなり長引く可能性がある。
仲間でもなく、友達ですら無い。なんなら知人ですら無いのだ、お気楽に談笑は出来ない。
俺はフィーニスを見つめ、どうするかアイコンタクトを送る。
「良いんじゃない?もし話し合いで解決するなら・・・まぁそれに越したことはないでしょ」
と、フィーニスはつぶやいた。
俺はため息を漏らし座ろうとした瞬間、カジートの声が響く。
「貴様らなに座ろうとしとるんじゃ!ワシの鍛冶場をこんな風にしおって!せめて人様に迷惑がかからん様に片付けんか!」
それを言われた男は少し悩んで、ため息を漏らしながらゆっくりと立ち上がる。
「悪かったよ・・・今片すから、修理は出来ないから自分でやれよ、おっさん」
そう言って、大きな石を持ち上げて端に投げる。
「おい、魔王崇拝者!お前も手伝ってくれ!」
「なんで俺が!」
「ちぇっ、つれねぇなぁ」
そう言いながら作業を続ける男の背中は少し寂しそうに見えた。
「・・・はぁ」
ため息を漏らし、散らばった破片を集める。
これは手伝っているんじゃ無い。フィーニスの言う通りに話し合いで終わるならそれで良いと思ったからだ。
「お、手伝う気になったか?」
「チゲェよ。話し合いで済む、それで終わるなら良いと、そう感じただけだ」
「なんだよ、ツンデレか?」
男が訳のわからない単語を呟く。
ツンデレ・・・とは一体なんだろう。
日本の文化なのだろうか。
変な国だったりするのか?
「で、攻撃してきた後になんで話し合いをしようと思った?」
「ローブのせいで顔は見えないが、身のこなしが普通じゃない。仲間には慕われているみたいだし、そんな奴が魔王崇拝者とは思えない、いや・・・魔王崇拝者にも別の何かがあるんじゃ無いかとな・・・」
「何か?」
「それはわからない」
かなり感覚的なことを男は呟く。
「確かに、今まで何組かの魔王崇拝者と呼ばれる集団を倒してきた。 でも、少しおかしいと思った部分があったのは本当なんだ」
「ほう?それはなんだ?」
「全員じゃ無いんだが、大多数が冒険者だった。みんな腕輪を嵌めていたしな。黒等級は見たことないが・・・で、あらゆる街を破壊したのも魔王崇拝者と聞いていたが、冒険者が多いのに、街を破壊するメリットが無い」
男はそう話しながら石を持ち上げて、投げている。
「意外と考えてるんだな」
「いや、考えてないよ。なにも知らないから、知ろうとし始めた、それだけだ。知らないと、失敗することもあるからな」
男はそう話した。
「でも、それだけで攻撃をやめたのか?」
「それだけじゃ無い。さっきも言ったろ? なんか、必死なんだよ。お前らが・・・必死すぎる。で、お前ら見たいに死に物狂いってか、なりふり構わないって感じの奴は初めて見た。俺は馬鹿だが・・・人を見る目と勘には自身があるつもりだ」
男は石を大体片してから、ちょうど良い高さの石に腰をかけた。
「で、レイドってのは?」
「え?」
「レイド、さっきお前が言ったろ。てかローブ取れよ」
あぁ。と声を漏らし、男の言う通りにフードを外す。
「黒髪・・・日本人みたいだな。赤目ってのは異世界って感じだ」
「日本人は黒髪なのか?時雨は青かった。お前だって金髪だろ」
「染めてるんだよ。ハーフとか、クォーターじゃ無い限りは日本人は基本黒だ、たまに茶色っぽいのがいるだけ」
ハーフ?クォーター?なんだろう。
また知らない単語だ。
「そのハーフとクォーターってのはなんだ?」
「あぁ、それは日本と海外の血が入ってるってことだ」
「混血か」
俺がそう話すと、男は指をパチンと鳴らした。
「正解! って、レイドについて教えてくれよ」
「あぁ。そうだったな。・・・と言っても、まだわからないことだらけなんだ」
そういうと、男は首を傾げた。
「というと?」
「レイドってのは黒い影見たいなやつだ。俺たちの闇らしい、それはレイド自身が言っていたから間違いは無いと思う」
俺はそこで話せなくなる。
なにから話せば良いかまとまらない。
「で?問題は?さっきの質問、魔王崇拝者と呼ばれるお前たちに戦う理由を聞いたら、レイドを封印するためと言ったろ。答えは「レイドを封印するために魔王になる」どんな関係があるんだ?」
「少し前に魔王が倒された。それと同時にレイドが現れたんだ・・・誰も気づかなかった。街が破壊され、ギルドが潰れ、死傷者が大量に出た」
「お前自身は、大切な人を守れたのか?」
男の問いに俺は首を振る。
「そうか・・・」
沈黙が流れる。
男はため息を漏らした。
「俺も早く帰りたい。妹がいるんだ、1人にしてしまった」
「両親はどうした?」
「さぁな。どっちも出て行った。今は知り合いのところで世話になってる。親に関しては生きてるか死んでるかもわからん。興味も無い」
そうして男は顔を伏せる。
「そうだ。皇帝は魔王崇拝者を殺したら俺たちを解放してくれるって話だった。もしお前らがこの戦いに勝った場合、俺たちはどうなると思う?」
「わからない・・・が、魔王も皇帝もそろそろ取り替えなきゃいけない、新しい皇帝がお前らを返せるかもしれない、だが、無理かもしれない」
そういうと、男は俯いてしまった。
再び訪れた沈黙に、空気が重くなる。
わからない。 そのたった一つの単語が、今後の選択を狭めるような気がした。




