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ShadowSraid  作者: 鬼子
異国からの来訪者編
72/98

9

 あれから数十分歩き、人が集まる場所に出る。

 馬車が出るところがあれば、手綱を引くものから情報を引き出せるかもしれない。


 だが、俺たちの風貌を見てコソコソと話をするやつはいても、直接話しかけてくるものはいなかった。


「感じ悪いわね」


「右腕がない、その上血塗れの3人組に近づきたいやつなんかいないだろ」


 俺はため息を漏らしながらそう言った。


「それもそうね」


 フィーニスもそう言いながらキョロキョロと視線をめぐらせる。


「どうした?」


「いや、見た目が悪いなら隠しましょう。近くに装備屋があったでしょ」


 フィーニスはそう話しながら先を歩く。

 彼女の言う通り、近くには小さな装備屋があった。


 チリンと小さな鐘を鳴らしながら入店する。


「いらっしゃい、なんでも揃って・・・こりゃまたすごい客が来たもんだ」


 髭の生えた店主は顎をさすりながらニヤリと笑う。


「悪い、邪魔する」


「いや、いいさ。客は選ばねぇ。ウチの店は魔族にだって装備を売るぜ、金を払えばな」


 そう言う店主の後ろにかかっていたローブに目が行った。

 そのローブは表面に特殊な加工が施されているのか、波打っているように見えた。


「そのローブは?」


「あぁ。これかい?物理をなんでも防ぐ魔法のローブさ。 弱い衝撃に対しては効果を発揮しないが、強い衝撃が加わった瞬間に、ローブの表面が鉱石よりも硬くなる」


 店主は自信満々にそう話した。


「そのローブはいくつある?」


「シャインソフィアの工房で作られたものだ。作者は不明。世界に数枚しかないローブを作って煙のように消えちまった。 ここには4枚。値段は・・・豪邸が数個は買えるぞ?」


 ニヤリと店主は笑う。

 そんな金は持ち合わせていない。


「悪い、持ち合わせがない。もう少し安いのをくれ」


「ちょっと待ってな」


 そう言って店主は店の後ろに行こうと、狭いカウンター内を移動する。

 だが、体が大きく箱に当たり、箱が落ちて中のものがばら撒かれてしまった。


「くそ、少し待ってくれ」


「大丈夫だ急いでるわけじゃない」


 そういうと、いそいそと店主は箱の中に色々と戻していく。

 その中にはたくさんの写真や、手紙が見えた。


「綺麗な写真だな」


「娘が送ってくれたんだ。この間、最後の一通がきた」


 店主のその言葉に俺は首を傾げた。


「最後の一通・・・」


「娘は外に出る仕事をしてた。危険な場所だが、色々なものを見れると。 だが、ちょっと意地の悪い正確でなぁ、偉そうと言うかなんと言うか・・・まぁ。もう気にすることはねぇ。 死んじまった」


 店主はそう話しながら、持っていた手紙をグシャリと握る。


「生きてれば・・・どうとでもなったんだがな・・・」


 そう話す店主は、少し寂しそうだった。


「最後の手紙は読んだのか?」


 そう問うと、店主は首を振った。


「まだだ。読んだら、終わっちまう気がする。娘が死んだのを、受け入れなきゃいけない気がしてな・・・読めねぇんだ」


「なら、今読めよ。いい機会だ。 箱が落ちたのも、娘がアンタに読んで欲しいって、そう言ってるに違いない。 ゆっくり待ってるからよ」


 そう言うと、店主はクスッと笑った。


「そんな屁理屈・・・いや、そうだな」


 そう言って店主は手紙を開き、ゆっくりと目を通す。

 その間、壁にかけられた武器や防具を眺めながら気長に待つ。


 少し経って、鼻を啜る音が静かな店内に響く。


「なぁ。兄ちゃん」


「どうした?読み終わったか?」


 店主は涙を拭きながら俺を見つめる。


「どうした?」


「兄ちゃん、名前は?」


 俺は首を傾げるが、声や態度に敵意はない。

 教えても問題ないことはわかっている。


「ダリア」


「目的はなんなんだ?正直、このローブは普通に冒険をするには必要ない。 だが、兄ちゃんは最初にこれに目をつけた」


 そう言われた。

 店主は一体、何を気にしているんだろう。


「レイド・・・影の軍団を探してる。復讐もあるが、世界を救いたい・・・と思っている」


 そう話すと、店主はニヤリと笑う。


「そうか。ダリア・・・少し待ってろ」


 そう言って店主は店の後ろに姿を消す。

 そして数分。

 出てきた店主は例のローブを3枚持っていた。


「ほれ、持ってけ」


「これは?金はないぞ」


 俺のその言葉に、店主は首を振る。


「娘の手紙に、困った人がいたら助けてやれと書いてあった。手紙をやっと読めたしな、その礼と、娘からの奢りだと思ってくれ」


「・・・そうか。ありがとう」


 そういうと、店主は頷いた。


「さぁ、早く行け。死ぬなよ、ダリア。 帰ってきたら話を聞かせてくれ」


「あぁ。またな」


 そう言って俺は店の扉を開ける。

 チリンと音が鳴りゆっくりと扉がしまって行く。


 閉まる隙間から店主の小さな声が響いた。


「これでいいんだろう・・・?ローザ・・・」


 そうか・・・彼は・・・


「フィーニス。レメディ、早めに聞き込みを終わらせて行くぞ」


 身につけたローブを翻し歩き出す。

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