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ShadowSraid  作者: 鬼子
異国からの来訪者編
70/98

7

 駆け出してみたが、右腕がないからかバランスが取れず速度がいまいち出ない。


 体の一部って、かなり重要なんだな。

 片目を失っているフィーニスの事が少しだけわかった気がした。


「レメディ! カバーしろ!」


「はい」


 瞬間、レメディの周囲が歪み、細い剣が何本も出現する。

 大きさが小さくなった分、数で押し切る作戦だろうか。


 万物両断を使われれば、大小に関係なく一撃で破壊される。

 物量で押し切ってしまうのが楽だろう。


 アキハは視線を巡らせ、剣をしっかりと確認する。

 弾き、叩き切る。

 それを何度も繰り返していた。


 縦横無尽の刃に翻弄され、なかなか攻撃の手段を確保できない。

 そう見えた。


 音を立てないように、だが最速で背後に回る。

 短剣を握り直し、アキハにふるった。


「殺気が漏れてますよ!」


 ガチンッと刀で短剣を受け止められてしまう。

 火花が散り、競り合いが始まる。


「右腕を切断されてるんだ、殺気だって漏れる・・・」


 アキハの細身の体からは出るはずのない力が短剣を押し返す。


 ガチガチと音がなり、短剣にヒビが入るのではないかと少し心配になり、接触部を見つめた時にあることに気づいた。


 万物両断の能力が発動していない。

 短剣は刃こぼれこそするが、破壊に至るまでには程遠い。


「もしかして・・・振り切りなきゃ能力は発動しないのか?」


 俺がそう話すと、アキハの瞬きが多くなる。


 なるほど、刀とやらを振り切らなければ、透明な刃は出現しない。

 そして破壊力もない。


「もう一つ。 力の強弱は時間か?」


 ガチガチと音が響く中で、アキハの力が少し弱まった気がした。


 これもあたり。

 だとすると、建物や体を切断するには刀に何かを溜めなきゃいけない。

 刀を掲げ、振り下ろすことで最大火力を発揮する能力。


 俺がさっき死ななかったのは、仲間が死ぬかもしれないという焦りで即座に能力を発動させたから威力が弱かったのか。


 なら、振り切る前に刀を止めればいいな・・・


「だとしたらなんです・・・? シグレさんの能力がある限り、僕は不死身の兵士です。 そのシグレさんは僕が守ります・・・!」


 そう呟いたアキハは、突然力が強くなり押し返してきた。


「フィーニス! シグレをやれ!」


「させませんよ!」


 瞬間、刀を横に倒され、湾曲の軌道にそうように短剣が滑らされてしまう。


 刀と短剣が離れた!

 すでに走り出しているフィーニスはこちらに気づいていない。


「これで、まず1人!」


 刀を振り下ろす。

 瞬間、火花が飛び散った。


「な・・・なんだこれはぁぁ!」


 振り下ろす。

 いや、振ることすら許されなかった。


 レメディが保有する大型の剣が頭上でそれを防いだのだ。

 すぐに体制を立て直し、アキハの背中に短剣を突き立てる。


「ぐっ・・・まだ!」


 鮮血が舞い、アキハが身に付けていた衣類が赤く染まる。


「フィーニス!」


 彼女の名前を読んだ瞬間、フィーニスはしっかりとシグレを捉え、噛んでいた。

 野生と言うか。 獣化したフィーニスには少しばかり恐怖を覚える。


「ダリア!」


 フィーニスの低い声が響く。

 それを合図に全員が動き出した。


 アキハの膝裏を蹴り、体制を崩させて背中に短剣を刺し入れる。


「レメディ!」


 俺が叫んだ瞬間にレメディの保有する剣がアキハの頭部を切り落とした。


 ゴトッと鈍い音で石畳の上に落ちる。

 ゆっくりと転がりながら瓦礫に当たった。


 頭を無くした身体は重く、押しつぶされそうだ。


「ダリア様。大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃない、手伝え」


 そう話すと、レメディはアキハの遺体を軽々と持ち上げ、瓦礫の中に放り投げる。


「敵とはいえ、もっと丁寧に扱えよ・・・」


「そうですか。申し訳ありません。次からはそのようにします」


 こいつに感情を学ばせるのは難しそうだ。


 右肩を抑え、フィーニスの所に近づく。


「どうだ?」


「わからない。もうすぐで死ぬんじゃないかな」


 そう言ったフィーニスの声は少し冷たく感じた。


 俺はシグレのそばにしゃがみこむ。


「まだ話せるか? 違う。話せ」


 シグレは俺を見つめていた。


「他の奴の能力は?」


「・・・死に・・・たくない」


 そう呟いたシグレの目には涙が溜まっていた。


「そうか。お前らが殺してきた奴もそう思ってたよ。何人殺したのか知らないし、興味もないけどな」


「死に・・・たく・・・・ママ・・・」


 横たわる少女を見つめ、歯を食い縛る。

 シグレは確か、家族が心配してるだろうから早く帰りたいと言っていた。


 家族思いで、誰かを気にかける優しい子だからこそ、治癒の能力を授けられたのだろう。


「悪かったな。苦しいのは嫌だろう」


 俺は短剣を握り、切先をシグレの喉に当てる。

 小さな少女に、最後は敬意を示すべきだ。


「お疲れ、もういい」


 そう呟いて、短剣を落とした。


 ドロリと血が溢れ、目から魂の光が消える。

 俺は短剣を引き抜き、開いたままの瞼を閉じてあげてから空を見上げた。


 彼らは人を守ろうとした。

 魔王崇拝者を殺せば世界が救われると信じていた。


 俺たちも同じだ。人を守ろうとしている。

 皇帝を殺し、魔王を作り出すことでレイドを封印し、平和を取り戻す。


 終着点は同じなのに、どうしてこんなに違うのだろうか。


 それぞれの正義は、同じではないのだろうか。


「クッソ・・・後味悪りぃな・・・」


 そう言いながら、俺はシグレを見つめた。

 

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