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英雄は負けない。アキハはそう言った。
「いつからお前は英雄になったんだ?」
俺は彼を睨みながらそう言う。
「僕の国には漫画やアニメと言った娯楽があります。英雄や勇者が戦うタイプのものは勧善懲悪が鉄板です。 どんなに強大な敵にも屈さず、勝利を掴む」
アキハは刀を握り直しながらそう話す。
「それがお前である可能性は少ないんじゃないのか?」
「そうですね。ですが、あなたを殺せれば僕が英雄という事です。 それだけでは終わりません。この世界に溢れた魔王崇拝者を全滅させて、この世界は救われます」
アキハのその言葉に、俺は確証をえる。
やはり、レイドのことは伝えられていないのだろう。
「レイドを知っているか?」
そう問うと、アキハとシグレが顔を見合わせ、首を傾げる。
「君たちの総称かい?・・・あぁ。時間稼ぎか・・・」
そう言ってアキハが刀を構える。
「違う、話を聞け!」
「誰が悪の話を聞くもんですか!」
瞬間、刀から透明の刃が放たれた。
「クソッタレ!」
やっぱり戦うしかないか。
2人とも強力な能力だ。どちらか、両方を仲間にできれば今後の振る舞いが楽になったかもしれない。
短剣を握り直し、風を切る透明な刃を回避し、地面に降り立つ。
「レメディ! フィーニス!戦うぞ・・・!」
その叫びに反応と同時に、レメディの武器が縦横無尽に動き回りアキハの体を覆い尽くして轟音を響かせる。
土煙が舞い、彼の姿が見えなくなる。
次の瞬間、土煙が払われ姿を表した彼の周りには、バラバラになったレメディの武器が転がっていた。
「万物両断。存在しない物質さえ斬れる能力ですよ?意味があると?」
「あっそ」
どちらにせよ、シグレを最優先で消さなくては再生されてしまい意味はない。
姿勢を低くして、飛び出す。
シグレに距離を詰め、首に刃を当てようとした瞬間、何かの衝撃を受け体が吹き飛ぶ。
瓦礫に突っ込み、痛むから体を無理やり起き上がらせる。
「何が起きた・・・」
短剣も落ちてしまったか。
万物両断・・・もしあれだとしたら身体が斬れてないことはおかしい。
それとも、完全に両断するのは何かしらの条件が・・・
ゆっくりと立ち上がるとフラフラと体が揺れ、視界が少し歪む。
「短剣・・・どこ行った」
霞む視界が鮮明になると、あるものが地面に転がっているのが見える。
肌色の長いもの・・・
それは、短剣を握った腕だった。
「・・・は?」
軽くなった右肩に視線を落とす。
ボタボタと多量の血が地面に落ちていた。
まて、右・・・右腕・・・
鼓動が早くなる。
息が切れ、うまく吸えない・・・
「ダリア!」
「ダリア様!」
しくじった。
透明な刃は仲間の近くに打たないと思っていた。
放たれた刃は彼にも見えてないないはずだ。
速度、方向。もし回転しているとするなら、仲間も巻き添えで切り裂くはずだ。
ある程度制御出来るのか?
偶然か?
「・・・あぁ・・・」
痛みで声すら出ない。
まだ左腕があるだろう、短剣を拾え。
「くっ・・・そ」
俺はゆっくりと短剣を拾い上げ、構える。
フラフラしたのは貧血か。
ぼやける視界。
頭を何度も叩き、ピントを合わせる。
「戦うつもりですか? その体で」
「やるんだよ。最初から復讐のために動いてんだ、今更止まれねぇよ」
アキハの言葉に強く意見し、姿勢を低くする。
彼も刀を構え、高く掲げる。
またそれか・・・
俺は勢いよく駆け出した。




