5
アキハが武器を構えた瞬間に走り出す。
最初から全力!
「なっ・・・早い!」
彼らは俺の属性を知らない。
属性はスカウト。索敵から暗殺。強いやつなら正面戦闘もこなすだろう。
そして、それ系統の属性は、身軽さからくる身体速度、身につけた手先の器用さが他属性に比べてはるかに高い。
能力を身につけ、経験がないだけの人間に短剣を突き立てるのは、あまりにも簡単すぎた。
アキハの首に短剣が滑り込むように入る。
鮮血が滲み、傷口が大きくなるにつれて溢れ出す血の量も増えた。
皮膚を裂き、肉を斬り、骨を砕き、やがて短剣は首半分を切断した。
地面を滑りながら短剣を確認する。
刃には鮮血がベットリと付いていて、それは短剣を赤く染めていた。
「深さも十分。 普通ならこれで死ぬはず・・・」
だが、見つめる背中は立っている。
まだ死んでいないような。
アキハは振り返り、俺を睨みながら首を見せる。
「まじかよ・・・」
傷は完全に塞がっていた。
血も一滴もない。
短剣を滑り込ませ斬ったはいいが、瞬時に再生を開始しているのだろう。
「万物治癒か・・・」
能力のことは大体わかっていたが、まさかここまで再生能力が高いとは思わなかった。
「先にシグレだ! ・・・もう生死はいい!」
俺がそう叫ぶと、フィーニスが走り出す。
シグレには戦闘能力はないはずだ。 先に倒せれば回復は止まる。
「させると思いますか?」
アキハはそう呟いて刀を鞘に納める。
直後左足をゆっくりと引き、姿勢を低くする。
右手は柄に触れるかどうかの距離で、手は開いたままだ。
なんだあの構え。
知らない光景が目の前に溢れる。
情報がない。
瞬間、カチンと音が耳を刺した。
全身の毛穴が広がるような感覚と共に鳥肌が立つ。
「フィーニス! 飛べぇぇ!」
瞬間の出来事だ。
アキハは踏み込むように姿勢を移動させながら刀を振る。
衝撃波か、はたまた何かか。
透明な刃のような線がいくつも見え、全方位に被害をもたらした。
だが、範囲内にいたはずのシグレは無傷だ。
もしかしたら、アキハが持つ無意識下の認識に関係があるのかもしれない。
味方と思う人間には効果を発揮しない。
「何いまの・・・⁉︎」
フィーニスが呟きながら着地する。
「かなりやばいかもしれないな・・・」
瞬間、フィーニスの横で土煙が巻き起こる。
何かがとてつもない速度で落ちてきたのだ。
「避難完了。 加勢します」
立ち上がる土煙の中から、薄緑色の瞳がひかる。
「レメディ!」
ゆっくりと姿を現したレメディの背後で空間が揺らぐ。
ジュワッと、粒子がまとまり形をなすように人間を遥かに超える大きさの武器が数本出現する。
「ダリア様の敵なら、私の敵です」
荒々しく無骨なその剣は、1人でに動き、対象を切り付ける縦横無尽の刃となる。
「浮遊した大剣? いや。大きさ的に特大剣・・・にしては大きすぎますね。物理的にあれを操れるのは無理です」
アキハはそう呟いた。
目を見開き、情報を探るように激しく眼球を動かす。
「どんな原理かわかりませんが・・・」
アキハはそう呟き刀を構えた。
「ですが、英雄は負けません」
深く響く声で、アキハはこちらを睨んだ。




