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ShadowSraid  作者: 鬼子
異国からの来訪者編
65/98

2

 にっこりと笑った彼女を見つめる。

 心配そうな顔をしているフィーニスが目に入り、俺は小さく首を振った。


「いや・・・わからない。すまん」


「えぇねん!大丈夫大丈夫! 皇帝の野郎、ウチらを呼び出したくせに、敵の見た目すらわからないって言うんよ? どないせいっちゅうねん!」


 青髪の女、シグレは自身の太ももを叩きながら大声でそう言った。


「ウチら? 1人じゃないのか?」


「ん?1人じゃないよ? 10人くらいかなぁ・・・。まぁみんな出身地は違うんやけどね!ウチは大阪ぁ〜」


 シグレはそう話しながら笑う。

 オオサカ・・・地名かなんかか?

 やはり聞いたことのない単語が飛び交う。


「傷が綺麗に治ってる・・・」


 考えるように下を向くと、傷だらけだった腕が何事もなかったかのように綺麗になっている。


「そうそう。傷治したんウチやねん。綺麗なもんやろ?」


「高度な魔術か?・・・すごいな」


 正直言って、そんな事が出来る風には見えない。

 騒がしく、頭がさえるようには見えないからだ。


「魔術・・・多分魔術なんかなぁ? あんな?ウチの能力は『万物治癒(クリーン)』って言うてな?終わった物以外なら、すぐに治してしまうねん!」


「終わったもの?」


 俺は首を傾げ、問いかける。

 終わったものとはなんだろう。


「生き物は死んだら戻らへん。何をしても無理や、こっちがいくら頑張ろうと無理なんよ」


「・・・そうだな」


 俺はふとクロークスのことを思い出してしまう。

 

「でも、物体だったらどうや?傷だったら? 治す治さないはともかく、やろうと思えば治せるやろ?」


「まぁ。そいつのやる気次第だな」


 確かに、壺などが壊れた場合は、修復は面倒臭いが、出来ないことはない。


「ウチはそれを完璧に治す能力やねん。でもな? まだよくわかっとらんのよ・・・」


 そう言って彼女は頭をワシワシと乱暴に書く。


「やから、心臓が動いていれば、心臓しかない状態からでも100%修復可能って能力や! ごっつエグいやろ?」


 ・・・強すぎる。

 俺はコイツらを全員殺さなくちゃいけないのか?


「例えば、皇帝を襲う奴がいたらどうするんだ?」


 俺はそう問いかける。

 聞いた感じだと、戦闘能力自体はシグレにはない。


「まぁウチらも帰りたいし、皇帝を守らなきゃいけないって召喚されとるからなぁ・・・そりゃぁ・・・」


 瞬間、シグレの雰囲気が変わる。

 重く、暗くなるような・・・


 そしてシグレは俺の瞳をじっと見ながら口を開く。


「殺すしかないやろ?」


 その言葉が低く響いた。


「・・・まぁそうだよな」


 俺はその雰囲気に呑まれ、口が開かなかった。

 少し深呼吸をして、彼女を見つめる。


「治療ありがとう。俺の名前はダリア。 よろしく」


「うぃ、よろしくー」


 そう言ってシグレと握手を交わす。

 その手は、先程の威圧を出せた人間とは思えないほど柔らかく、華奢だった。


「すまない、俺たちは冒険者で、依頼の途中だったんだ。もう行かないと」


 俺はそう言いながらベッドから出る。


「そうなんか?冒険者ってのは忙しいんやな・・・気をつけて行ってきんさい」


 その言葉に小さく頷いて、フィーニスの手を掴み俺は足早にその建物を出た。


 外に出ると帝都の街並みが広がっている。


「ダリア、どうしたの?・・・手・・・ちょっと痛い・・・」


「あぁ。すまん」


 俺はフィーニスの手を離し、視線を合わせる。

 今の彼女は薄ピンクのワンピースを来ていた。


「良い人だったね。治療してくれて」


 フィーニスがニコニコしながらそう話す。

 背後で揺れる尻尾がなんとも可愛いらしい。


 だが、問題はそれじゃない・・・


「フィーニス・・・少し話がある。場所を変えよう」


「え、何?どうしたの・・・」


 俺とフィーニスは先程の建物から離れ、小さな路地に入る。


「何? 話って」


「ダリアが言ってた。 異国の来訪者が皇帝を守るって・・・多分・・・アイツらだ」


 俺はそう話す。

 そう・・・黒ダリアが話してる内容は、フィーニスは聞いていない、彼女は気絶していたからな。


「どういうこと?」


「わからん。皇帝は自身を守るために別の世界から人間を召喚した。 それに、あの女・・・シグレの様子から見ると、多分・・・別の世界に行くってことは珍しくないのかもしれない・・・落ち着きすぎてる」


 俺は思った事をフィーニスに告げていく。


「じゃあ・・・彼女達は敵なの?」


「まだわからないが・・・その可能性が高い・・・」


 そう話すと、フィーニスは小さく何度も頷いた。


「わかった。信じる」


 フィーニスがそう話した瞬間、足音がした。

 俺たちはそちらを睨み、音の正体を確かめる。


「ここにいましたか。少し探しました」


 立っていたのは機械の女。

 ティタの作り出した彼女だった。


「あぁ。すまない。てっきり帰ったのかと思ってた」


「いいえ、待っていました。2日間」


 その言葉に俺は驚く。


「2日だと? あれから2日経ってるのか?」


「はい」


 機会の彼女は小さくそう頷いた。


「取り敢えず、無事で良かったです。 あなた方が生きていれば、博士も、弟様も喜ぶでしょう」


 彼女は淡々と話した。

 少し心に刺さる言い回しに違和感を覚えたが、今はどうでも良いと、蓋をする。


「ここまで運んでくれたのは感謝する。 だが、戻った方がいい」


 俺は冷たくそう話す。

 機械とはいえ、他者が愛していたものを無断で危険な場所に連れていけない。


「いえ、ご一緒します。 博士もいません。戻らなかったですから・・・もう・・・帰る場所もありません。私はそう思います」


 彼女はそう話した。


「でも・・・」


「博士は、困った人を見つけたら助けるものだと、そう言っていました。それが善い人間の証だと。魂は清くあれと」


 俺は首を傾げた。

 

「あなた達は困っている。私はそれを助けたい」


「ダメだ。返せるものがない」


 彼女はそう言ったが、無償で危険地に同行させるのは気が引ける。

 俺たち冒険者は危険な戦闘をするが、それは仕事だからだ。楽に稼げるならその方が良いだろう。


「返せるものはあります」


「・・・なんだ?」


 そう言うと、彼女は俺の胸を指差し、次自身の胸を指差した。


「魂の理解。感情の・・・理解。 私はそれを勉強したい。教えて、いただけませんか」


 その言葉に、少しため息を漏らす。

 フィーニスを見ると、別に良いんじゃない。と、そう言いたげな表情だ。


「名前は?」


「私に名前はありません。 ですが、博士はよく私をレメディと呼んでいました」


「名前あるじゃん。 それは名前だ。博士からもらった名前。大事にしろよ」


 そういうと、レメディはゆっくりと頷いた。


「戦えるんだよな?」


「はい。問題なく」


 なら決まりか。

 皇帝に近づくにも来訪者を片付ける必要がある。


 当分の目標は・・・それだな。

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