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ShadowSraid  作者: 鬼子
異国からの来訪者編
64/98

1

 何かに体を揺さぶられ、ゆっくりと目を覚ます。

 俺の体を揺さぶっていたのは、フィーニスだった。


 ふわふわとした毛が血でかたまり、動きが鈍くなっているのがわかる。


「・・・フィーニス」


「大丈夫?」


 俺は痛む体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。

 周りは静かだ。

 

 戦いは・・・終わったのだろうか?


「そうだ・・・クロークスは⁉︎」


 俺の質問に、フィーニスは獣の頭を振る。

 

「私も目を覚ましたばかりで、わからないの。でも、見える範囲にはいないみたい」


「・・・そうか。 探そう・・・」


 そう言って俺たちは歩き出した。

 コツコツと足音が響く。

 チューニングに集中しているのか、アルゴは話さない。


 いや、すでに終わっているのだとしたら、早く・・・


「クロークス!」


「クロークスー!」


 俺とフィーニスは彼の名を呼ぶが、返事はない。

 瞬間、バチャリっと黒い液体を踏んでしまう。


「・・・レイドがここで死んだのか・・・」


 水溜りのようになったレイドを踏んでしまった。

 確かに、数十体分の水溜りがあちこちに確認できる。


「アイツ・・・全部殺したのか」


 水溜りの量が次第に増える。

 それと同時に赤い血の跡も少しずつ増えていく。


 風が吹き、周りは静かだ。

 戦闘が終わって・・・どれくらいたった・・・


「クロークス!」


「どこなの⁉︎クロークス!!」


 響くのは足音だけ・・・

 血痕が地面にどんどん増えていく。


 瞬間、正面に銀髪の青年の背中が見える。

 座り込んでしまって、休んでいたのか。


「見つけた・・・」


 俺は足を少し早める。


「クロークス! 俺たちが気絶してた場所からかなり離れた所にいたんだな・・・探したぞ!」


 俺はそう言った。

 彼の背中は動かなかった。


「あれだけの量を全部やったの?・・・凄いじゃない! 見直したわ!」


フィーニスのその言葉にも、クロークスは反応を示さない。


「帰ろう、クロークス。帰って治療して、また旅をしよう。やることは沢山ある。 お姉さんの分も生きよう。クロークス・・・」


 風が吹き、彼の髪や服が緩やかに揺れる。


「そ、そうだよ。 クロークス・・・」


 フィーニスの声が次第に震え始める。


「ほら、立てよ! 俺たち2人もボロボロだ・・・クロークス1人を支えることは出来ない! 笑っちゃうだろ?」


 どんな声にも、彼は、彼の背中は反応をしない。


 もう・・・わかっている。

 心の中の欠けた部分が俺に状況を突き付ける・・・


 もう・・・わかっている。


 身体から力が抜け、ドサッと膝をついてしまう。

 銀髪の青年・・・クロークスの背中を見つめ・・・俺はゆっくりと口を開く。


「・・・クロークス・・・」


 瞬間、視界は外界に飛ばされた。

 場所が移ったのだ。


 視界に映る場所は機械の女と戦った場所だ。

 まだ、戦った後が残っている。


「フィーニス・・・寒いな」


「・・・そうね」


 場所が寒いのか、心が寒いのかは言わなかった。

 きっと、彼女も気づいているから。


 すると、視界に白い靴が入る。

 顔をあげると、機械の女がこちらを見ていた。


「・・・おかえりなさいませ」


 彼女はそう言って、俺の顔に手を近づける。


「・・・どこか、故障してしまいましたか?」


 その意味はわからなかったが、数秒・・・止まらない涙をみて彼女はその質問をしたのだと、理解した。


「大丈夫ですか?」


 彼女のその言葉が静かに響く。

 ポツリと雨が一滴地面に当たる。


 次第に勢いが強くなり、服が濡れてきた。


「雨・・・ここでも降るのか」


 俺は小さくそう呟く。

 すると、機会の彼女はしゃがみ、俺の顔をのぞいた。


「痛いですか? 故障しましたか?」


 何度もそう聞いてくるのだ。

 俺は自身の服をグッと掴む。

 

「胸の奥が故障したかもしれない・・・すごく痛いんだ・・・」


 俺がそう言うと、彼女は俺の手に自身の手を重ねた。


 瞬間、緑色の光がフワッと溢れ出す。

 治癒魔術・・・この子は治癒魔術が使えたのか・・・


「今・・・治します。動かないでください・・・」


 彼女は真剣な表情でそう言った。

 心は戻らないのを・・・知らないのだろう。

 それなのに、その行動は人間的だ。


「痛みは・・・消えましたか?」


 そう言って彼女はこちらを見る。

 

「ありがとう・・・」


 瞬間、ドサッと音がして、横を見る。

 

「・・・フィーニス?」


 そこには、獣化が解かれた裸のフィーニスが倒れ込む。

 

「お、おい。 大丈夫か⁉︎」


 俺はフィーニスの体に触れる。

 冷たい・・・


「分析します。 体温の低下を確認。一般治癒魔術で治療できる範囲を大幅に外れています。金等級以上の神官の力が必要と推測・・・失礼します」


 早口で彼女はそう言って、フィーニスを持ち上げる。


「何して・・・」


 すると彼女は俺の服も掴み、持ち上げた。


「目的地は帝都ホロウヴェール・・・到着推定時刻は・・・16時間後・・・なるべく飛ばします」


 瞬間・・・バンっと音を立てて彼女は走り出した。

 雨が降る中を最速で駆け抜けていく。

 濡れた服が体に張り付き、俺も体温を奪われたのか瞼が重くなる。


 そのまま眠りについてしまった。



 次に目を覚ましたのは、知らない場所だ。


「知らない・・・天井だ・・・」


「あれ、目開いとるやん! 生きとったんか!いやぁ焦ったでぇ! えらい傷多くてなぁ! もう死ぬんやないかぁ!ってウチがいて良かったな!」


 知らない言語だ。

 というか語尾だ。最近流行っているのだろうか。


「えっと・・・あなたは・・・」


「あ、ウチ? アリマシグレっちゅうねん!よろしくな?あ、漢字?えーとなぁ・・・」


 そう言って青みがかった髪を持つ彼女は髪に何かを走り書きして、俺に見せた。


 そこには有馬時雨と書いてある・・・

 だが、読めない。知らない文字なのだ。


「えっと・・・この文字は・・・?」


「だよねぇ・・・やっぱり漢字読めへんかぁ・・・じゃあなんで言葉通じんねん・・・アニメや漫画じゃあるまいし」


 彼女は顎に手を当てて何やらブツブツと話す。


「な、なぁ・・・シグレ・・・だっけか? よくわからない・・・」


 俺がそういうと彼女はこちらを見て驚いた顔をする。


「・・・いきなり下の名前から呼ぶんか⁉︎ 文化の違いを再認識したわぁ・・・外人はやっぱりそうなんかぁ?」


 そう話す時雨の背後から、フィーニスが現れる。


「ダリア・・・大丈夫?」


「フィー・・・ニス! 良かった無事だったのか!?」


 俺は身を乗り出しそう話すと、フィーニスはなきだしそうになる。


 その時、シグレが話し始めた。


「あんな? 少しええか? ウチらはこの世界の者ちゃうねん・・・いわゆる転生者っちゅう奴や・・・あ、転移だったかな・・・。 それでな?魔王崇拝者って連中を倒さなあかんねん。何か心当たりあったら教えて欲しいなぁ・・・」


「待ってくれ・・・話が飛躍しすぎてる。言ってる意味がわからない・・・」


 転生?転移? なんの話だ。


「この世界じゃないって・・・意味が・・・」


「あぁ・・・ウチらはな日本って島国から来とんねん。 家族も心配しとるやろうし、はよ帰りたい。 でもな、皇帝の野郎が、私の安全が保証されるまでは帰さへん言うんや。 だから早く帰るためにも、情報があったら言って欲しい・・・」


 日本? 聞いたことのない名前だ。島国・・・国なのか?


 そこである言葉が頭をよぎる。


 異国からの・・・来訪者・・・。


「別に、今やなくても全然ええよ。 何か思い出したり、わかったらでええから、教えてくれや」


 彼女はそう言って、にっこりと満面の笑顔を見せた。

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