13
サディアは自身の顎を撫でながらニヤリと笑う。
「やはり、私が一番強いのか?」
サディアは深くそう話す。
「黒いダリア大丈夫!?」
すると、黒ダリアを心配してティタが駆けつけた。
ティタが黒ダリアの身体を支え、彼は立ち上がる。
「クッソ・・・やっぱり強いなぁ。君は! 足止めもギリギリだよ」
黒ダリアは口から何やら黒い液体を吐き飛ばし、そう話す。
彼らレイドは、血液まで黒いのだろうか。
「でもこれで5対1だろ?」
俺はそう呟いたが、ティタが苦い顔をした。
「そうね・・・」
そう力無く言ったティタに違和感を覚え、それは次第に嫌な想像に繋がる。
「まて、5対1なら勝てるだろ?・・・勝てるんだよな?」
俺はそう聞くが、アルゴの体を持つティタは苦い顔をするばかりで、横にいる黒ダリアが首を振る。
「無理だ・・・ちなみに、ティタは『あれ』に勝てると思う?」
黒ダリアのその質問に、ティタもゆっくり首を振った。
「無理・・・砂粒ほどの可能性も無いわ・・・アルゴ!私とあなたを切り離して!」
黒ダリアの質問に答えたティタは、アルゴに叫ぶようにそう言った。
「な、何言ってるんだ姉貴!」
クロークスが焦りの色を見せ、ティタに問う。
「完全に切り離せば、アルゴは自由に動ける。私は多少弱体化はするけど、この際どちらにしても結果は変わらない。私とアルゴが同時に死んで仕舞えばチューニングが出来なくなってクロークス達を外に出す事ができなくなる」
「それでも!ギリギリまでは大丈夫じゃないのか!?」
クロークスは納得いかないのだろう。
あの発言は、死ぬことを前提に話していた。
「ダメ。 戦闘をしていたせいか、アルゴのチューニングに時間がかかってる。 死ぬか、出るか」
そう話したティタの言葉に、クロークスは悲しそうな顔をした。
「切り離した後に死んだらどうなるんだ?」
何も言えないクロークスの代わりに、俺が話題を振る。
「私はわからない。アルゴ・・・どうなるの?」
ティタは首を振り、アルゴにバトンを渡す。
「あー・・・幽閉。とでも言うのかな・・・。魂ってのは本来、こちらにきたら浄化し、記憶を消して、また誰かとして生まれ変わるの。でも、それができなくなるから、二度と生まれ変われない。魂が腐るまで、苦痛を受けることになるかな」
アルゴはそう言った。
口調はリズミカルで軽く聞こえたが、言葉に隠れた意志の淀みは、肌で感じる。
「そこまでして・・・姉貴」
「分かって。クロークス。 これが最後の・・・お姉ちゃんからのお願い」
ティタは、俺たちを、主にクロークスをこの世界から出すために時間稼ぎをしようと言うのか。
クロークスは下唇を強く噛みながらも、何かを押し殺すように頷いた。
「分かった」
クロークスが唾液を飲み込む音が響いた気がした。
「アルゴ! 切り離して、あなたは集中しなさい」
「うぃうぃ」
アルゴの軽い返事が響き、ティアの体が光る。
容姿が次第に変化していき、銀髪に青いメッシュの入ったらロングストレートに変わる。
アルゴと違い、胸は大きくなく、あまり強調されない。 服の上から膨らみが少しわかる程度だろうか。
そして、極め付けは女性では珍しい長身だ。
170以上はある。それに・・・靴は上底のヒールなどではないことから、天然の身長だと言うのが分かった。
「似てるな・・・」
俺がそう呟くと、クロークスとは違う紫色の瞳が俺を見た。
瞬間だ。
「ちょーっとメンゴメンゴ。 感動の再会。驚愕の姿にびっくり仰天してるとこ悪いけど・・・サディアの戦闘準備が完了しているらしい。 くるぞ!」
黒ダリアがサディアに指を刺しながらそう話す。
「アルゴ! チューニングを進めなさい!」
瞬間、ティアと黒ダリアは走り出した。
俺たちを生かすためだ。
「クロークス! フィーニス!加勢するぞ! 時間を稼げ!」
そう言って、俺たちも走り出す。
だが、瞬間的に空から光が降り注ぐ。
サディアが槍を高速で振り回し、切先を空に向けた。
いや、向けた。とは少し違う。
何かを突き刺すように、頭上にある虚空を突き刺すかのように掲げた瞬間だ。
遥かにでかい魔法陣が頭上に召喚され、無数の矢が降り注ぐ。
「おい! 今までレイドは魔術なんか使わなかっただろう!」
俺は愚痴を漏らしながらも走り、回避をする。
幸い、弾速が遅い。
回避は簡単・・・
「上ばかり気にしてちゃ・・・よくないな? 少年?」
瞬間、意識の外からサディアの声が響く。
「ダリア! 避けろぉぉぉ!」
クロークスの声が響くと同時に体に鈍痛が走り、骨が砕かれる音と共に体が飛ぶ。
多量の血が口から吐き出され、内臓が熱くなる。
「ぐっ・・・」
地面に強く打ち付けられ、激しく転がり、次第に緩やかになり止まる。
見えるのは空・・・と言っていいのだろうか。
天井・・・と言うには広すぎる気がする。
「かぁっ・・・」
口から血が溢れ、垂れた場所が暖かく感じる。
視界が霞むが、立ちあがろうと体を動かし、手を地面に当てる。
「動け・・・」
呼吸が上手くできないのか、ヒューと風が抜けるような音が喉から響く。
ポタポタと血が垂れ、地面が赤く染まっていく。
瞬間、爆発音が耳を差し、血に塗れたフィーニスの姿が飛んできて横たわる。
「フィー・・・ニス」
俺が手を伸ばそうとした瞬間、黒い何かが視界を横切り、壁にぶち当たる。
黒ダリアだ。
脇腹を抉られたようにそこにあったはずの肉がないことに気づくのは時間はかからなかった。
「・・・やっ・・・ぱ。キチィ・・・」
「ダリア・・・!」
俺は彼の名前を呼び、体を引きずりながら近づく。
「大丈夫か・・・」
「大丈夫に見えるなら、魔法で頭を治してもらいなよ・・・」
黒ダリアはそう言いながら、フィーニスに視線を移し、こちらに戻した後に俺の手を握る。
「フィーニスちゃんは気絶してるだけ・・・この世界から出たら治療をしてもらえ・・・まだ間に合う・・・」
瞬間、話していた黒ダリアが口から墨のように黒い血を吐く。
「あまり・・・話すな!」
俺はそう話す。
「ダメだ・・・今話さなきゃ・・・二度と話せなくなる・・・奴には勝てない・・・戦わなくていい!皇帝を潰して、魔王になって・・・封印を・・・」
そう話しながらも、黒ダリアの体が溶け始める。
「分かったから話すな・・・」
「ダメだ・・・今・・・今・・・。 異端・・・異国の来訪者・・・皇帝はそれを召喚した・・・そいつらが、皇帝を守る・・・奴らが・・・や・・つ」
瞬間、黒ダリアの体が全て崩れ落ちる。
バチャっと音を立ててただの黒い液体に変化し、虚無が流れる。
「・・・ダリア・・・」
俺は片割れの名前を呼びながら液体に手を触れる。
瞬間、ゴッと音がして視界に何かが転がってきた。
銀髪の・・・長髪の頭だ。
瞼は閉じていないが、その瞳に光は宿っていない・・・
「・・・あぁぁぁぁぁぁぁ!クソがぁぁぁぁぁぁ」
俺は地面を殴り、サディアを睨む。
意外にも最後まで戦っていたのはクロークスだった。
お姉さんは死んだ。
それでも、彼は立っていられるのか・・・
いや、泣きながらも拳を握っているのだろうか。
だが、機械の女との戦闘、先程の戦闘、サディアとの戦闘で俺の体力はギリギリだったらしい・・・瞼が重くなる・・・
そして俺は・・・ゆっくりと気を失った。




