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ShadowSraid  作者: 鬼子
死者の楽園編
62/98

12

 火花が激しく散る。

 ローザの猛攻を黒いダリアが捌いているからだ。


 ローザはふくよかな身体をもち、その巨体からは想像のできない速度で武器を振るう。


 それを捌くのは至難の業だろう。

 彼が強いのはきっと、俺が弱いからだ。

 だから何も守れなかった。 受付の娘サディアも、ローザも、ギラも守れなかった。


 俺は短剣を構えている。

 構えて立っている。


 だが、立っているだけだ・・・

 こんな傷だらけの体で、なんの役に立つ?

 気づいたら俺は地面を見ていた。

 こんな土壇場で、みんなが必死に戦ってる最中に下を向く人間が魔王? 笑える。


「俺には無理だ・・・弱過ぎる」


 俺は、気づいたらそう呟いていた。

 諦めるための理由を探す。


 簡単だ。

 弱いから諦める。

 別に普通の理由だ、おかしくない。


「君なら出来るんだ!絶対!」


 黒ダリアがそう言った。

 力強く、確かにそう言った。

 まるで最初から最後まで信じ切って見せると、そんな力強さが言葉には溢れていた。


「どうしてそんなことが言える⁉︎ 何も知らないだろ!」


「知ってる! 全部知ってるんだ!僕たちは!」


 その声に俺はゆっくりと顔を上げた。

 視界には綺麗な火花が映り、色鮮やかに散る。


「僕たちは君たちが忘れようとした闇から生まれる!弱者は不満が、不安が多い! 未来に対して、今に対して、過去に対して! それから生まれた!僕は、君の闇を知ってる!」


 瞬間、ローザの武器が黒ダリアの体を横殴りにする。

 ズドンッと低くこもった音が耳を刺し、彼の体は激しく弾き飛ばされる。


 地面に体を強打しながら転がり、やがて壁にぶち当たる。


「があっ・・・! 知ってる・・・! 全部!・・・短剣を握って顔をあげろよ片割れ! お前の闇は、深いぞ・・・ダリアァァァァァ!」


 黒いダリア。俺の片割れはそう叫んだ。

 瞬間、ドクンッと心臓が激しく鼓動する。

 

 失われていた恩恵の感覚が戻り、全身に血液がめぐる。


 勝てないなら戦わなければいい。

 俺の最終目標は封印。


 これが、『君主』だ。


 君主。俺が与えられた恩恵。

 仲間がいないと何もできない、弱者の証。


 この恩恵は・・・

 『仲間』が傷つき、死に近づくほど自身の身体能力が上がる。


「仲間を傷つけたんだ。 やられる覚悟、出来てるだろうな? 俺がこのフィールドの王だ」


 瞬間、ローザの大槌が視界に入る。

 まるで世界がスローになったようだ。

 頭が冴えてる。


 この恩恵は役に立つことは少なかった。

 なぜか?


 それは我々が冒険者だからだ。

 攻撃の多くは致命傷。即死。

 頑丈な仲間はいなかった。


 仲間が死ねば恩恵の効果は抹消される。

 でも、フィーニスとクロークス、片割れならその心配はない。


「遅い」


 短剣を握り、大槌を受け止める。

 ガチンッと重い金属音と共に身体に鈍痛がひびき、骨が軋む。


 身体がフワッと浮き、そのまま弾き飛ばされるが、威力は十分に殺してある。

 距離もさほど離れていないし・・・


「おい、もう首つながってないぜ、ローズ」


「は?」


 瞬間、ふくよかな身体に乗った頭部がズリュッと滑り、地面に音を立てて落ちた。


 赤い液体が地面に滴り、次第にローズの体は黒く変色して液体となり地面に崩れ水溜りを作る。


「忘れたか?俺の属性はスカウト・・・手先の器用さには自信がある」


 俺がそう呟いた直後、爆音と共に片割れの黒いダリアが姿を表す。


「さすがダリア」


「お前もダリアだけどな」


 黒いダリアが言った言葉に、俺は少し笑いながら話す。


「さて」


「共闘か?」


「そうしたいんだけど・・・ティタ?の方が忙しそうだから加勢してくるかな・・・ダリアと仲間がいたらそこの2体は楽でしょ。じゃあねー」


 そう言って黒いダリアはクロークスのお姉さん。ティタの加勢に向かう。


「じゃあ、俺はこいつら2体の相手をしますかね・・・」


「・・・舐められたものですねぇ・・」


 ギラがそう呟く。


 瞬間、彼らは動き出す。

 目にも留まらぬスピードとはこう言うのだろう。

 だが、今の俺に彼女達が勝てるはずはなく、次の瞬間には彼女たちは死んでいた。


「・・・ダリア?」


 フィーニスはひどく驚いた声をもらす。

 

「フィーニス、俺は大・・・」


 大丈夫。

 そう言おうとした瞬間、黒い何かが俺の前を横切り、壁に当たった。


「・・・なんだ?」


 俺は正体を確かめるために、そちらに視線を向ける。


「ぐあぁぁぁ。 これは、ハードかも・・・」


 倒れていたのは黒ダリアだ。

 それに、左腕が無い。


「ふむふむ。 やはり、私が一番か?」


 その時、鮮明なサディアの声が深く響いた。

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