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クロークスが雄叫びをあげると、空間に強く響く。
3対3・・・レティシアは金等級のフィーニスの裏だ。
だから、たぶん裏返しても金等級程度の強さだと思う。
問題は、ギラとローザ。2人とも戦えるような人たちではなかった。
となると裏は黒等級かそれ以上になるかもしれない。
勝ち目は・・・あるのか?
「サンサンだって? いいや、ヨンサンだね」
突如頭上からそんな声が響く。
瞬間、ズドンッと音を立てて俺たちの前に着地したのは、大柄で自身の身長ほどはあるだろう大剣を背負ったレイド、ダリアの姿があった。
「ダリア⁉︎」
俺は自分自身と同じ名前を持つ彼に声をかける。
「そう。僕の名前はダリアぁ。覚えてくれた?」
そう言いながらダリアと名乗るレイドはこちらを向いた。
「お前、しっかり話せるのか?」
「まぁね。みんな特訓中さ。この地上を乗っ取って暮らすためにね。言葉が通じないと不便だろう?」
そう黒ダリアは言った。
そして彼は前にいるレイドに顔を向ける。
「もうやめよう。命が無駄だ。勿体無い」
「今更やめるですってぇ? もう計画は動き出したのに?」
黒ダリアの言葉にギラが口を開く。
「僕は元からこの計画には反対だった! 人間も、仲間も、今まででどれだけ死んだと思ってる⁉︎」
黒ダリアがそう叫ぶ。
「人間を殺し、私たちは完全体になります。それは、あなたもご存知でしょう?」
レティシアがニヤリと笑い、馬鹿にするように呟いた。
「僕たちは自分の世界でも不自由なく暮らせていたはずだ! 外に出れば戦争が起こる、それを知ってなんでこんなことするんだ!」
黒ダリアが必死にそう話す。
「不自由なく?不完全なままで幸せでいれるわけないだろう? 魔王が支配し、それに怯え私たちのことなど忘れ去る。 許せると思うか?」
「平和ならいいだろ! 誰も傷つかない!誰も死なない!誰も殺されない! そんな世界でいいじゃないか! お前たち、勝手すぎる!」
ローザの呟きに黒ダリアが答える。
確かにそうだ。こいつらは何を求めてここにきたんだ。
地上を支配して、完全体とやらになって、それで幸せなのか?
それが叶えば満足なのか?
すると、ギラが笑い出す。
「平和ねぇ。確かにいいかもしれないわぁ? でもそれはあなたの勝手な意見でしょ? 別に意見を持つ事、それを伝えることは悪いことではないわ。でもね、その考えを押し付けないでちょうだい」
ギラがそう話した。
すると、黒ダリアが背中に背負った大剣の柄に手を伸ばす。
「そう・・・考えはやっぱり変わらないか・・・。覚悟してね、ローザ、ギラ、レティシア。 仲間だとしても切り刻むから」
黒いダリアが放ったその言葉には、殺意がしっかりと込められていた。
「ダリア、何がどうなってる?」
俺は黒ダリアに問いかける。
状況がわからない。
追いつけない。
「少年。この騒動の発端は魔王が殺されて僕たちを封じていた何かが破壊されたこと、それはずっと昔からで、何度も繰り返してきた。 じゃあなんで繰り返されたと思う?」
「は?なんでって・・・」
黒ダリアは首を傾げている俺をみて、少し息を吐く。
「魔王を倒すのは勇者。勇者を魔王討伐に駆り立てるのは?」
黒ダリアは真剣な声で言った。
「・・・皇帝か?」
「そう。この物語は帝都から始まる物語だ、皇帝と交渉をしたのはサディアだ。 だから内容は知らない。溢れ出した僕たちは完全体を求めて自分の片割れを探す。 それが僕たちが人間を殺す理由だ」
黒ダリアが言った言葉は衝撃だった。
では、皇都を破壊したのも、直したのも、全部演技だったわけか?
「なら、この物語の終点は何になるんだ?」
俺はそう質問した。
その瞬間、火花が散る。
ローザが一瞬で間合いを詰め、黒ダリアがそれを防いだのだ。
「終点は、心に闇を持つ人間を見つけること! そしてそいつが魔王になることだ!」
黒ダリアはそう言った。
「そんなやつ、都合よくいるわけないだろ⁉︎」
俺は叫び、短剣を握りしめる。
「いるんだ! 少年、君だよ! 君が魔王になるんだ!
黒ダリアは強くそう言った。
それが、新しく背負った運命だった。




