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アルゴは人差し指を立て、クロークスに向ける。
「あぁ。その女なら来てるよ。影にあっさりやられちゃったみたいだねぇ。話した感じ」
「話す事ができるのか⁉︎」
アルゴの言葉にクロークスが前のめりに問いかける。
「そりぁ。あーしは神様だしぃ?会わせてあげないこともないかなぁ」
アルゴがそう言った。
だがかなり悪い顔をしている。
クロークスは目の前に吊るされた餌が大きすぎるため、アルゴが何かを企んでることに気づく様子がない。
横に立っているフィーニスは歯を食いしばり、ギリっと音がなる。
「なら会わせてくれ! 頼む!」
「えぇ・・・イケメンに言われたらあーしも困っちゃうなぁ・・・」
アルゴは顔を赤ながらそう言った。
何やら自身の体を抱きしめ、クネクネと動いている。
「頼む!そのためならなんでも・・・!」
クロークスがそう言った瞬間に、アルゴの表情が冷たく変わる。
「死者に会おうって事すら間違ってんだぜ? なんでも? それで足りるわけないだろクソガキが」
アルゴは冷たい声を出してクロークスを突き放す。
静かで冷たい空気が流れ、静寂が重く体にのしかかる。
アルゴの言い分は正しい。
普通は死者と会うこと自体が異常なんだ。
だが、言い方ってものが他になかったのか。
瞬間、クロークスが纏っていた空気が変わる。
重く、黒く、確実なものに。
「ダリア・・・」
フィーニスが俺の名前を呼びながら顔を見つめる。
「多分大丈夫。多分・・・」
俺はそう言った。
次第に纏う空気がドス黒く変化する。
クロークスのその様子を見て、アルゴがため息を漏らす。
「これだから経験がカッスいクソガキは嫌いなんだよなぁ。 はぁ・・・ダリア!レティシア!少し離れときなぁ? クロークスはぶっ飛ぶよぉ〜」
アルゴは俺たちにそう言った。
「レティシア?」
「・・・私の名前・・・」
俺がつぶやいたことにフィーニスが返す。
「レティシア? マジ?」
「似合わない?」
その問いに俺は首をふる。
「まさか・・・レティシアって呼んだ方がいい?」
「やめて・・・フィーニスって名前は気に入ってるの」
「ならフィーニスでいいか」
俺がそういうと、フィーニスは頷いた。
「あれ?お二人さん聞いてた? 離れなさい! おーい!! 死んでも知らないよ!」
瞬間、クロークスの周辺に黒い雷が纏われる。
俺たちはすぐに離れる。
「何がどうなってるんだ?」
「説明が必要かい?クソガキたち」
瞬間、背後にアルゴが現れた。
「あ、あれ?・・・さっきまでクロークスの前にいただろ」
「ん?あぁ。まだいるよ。ほれほれ、見てみぃ」
アルゴがクロークスの方を指差し、俺たちもそちらをみる。
確かにアルゴが立っていた。
「増えた? そんな魔術あるのか?」
「ダリアは馬鹿なのかな? 神様ならこのくらい余裕っしょ! さぁ。 よく見ときなぁ。そして心に決めなぁ? ここでの心の穴は・・・そこが見えない闇になるよ」
瞬間の出来事だ、クロークスに纏われていた黒い雷がさらに出力を増しバチバチと音を立てる。
「ダリア、見て・・・腕輪!」
フィーニスがクロークスの左手首に付けられた腕輪を指差した。
言われた通り腕輪に目を通すと、端から徐々に黒く変化していく。
「あちゃー・・・黒等級になるのかぁ・・・やっぱり姉弟って感じかぁ。 あれ、血は繋がっていないんだっけ?」
ニコニコと笑いながらアルゴがそう呟いた。
その笑い声に気づいたクロークスがこちらを睨む。
「おや、あのガキはちょっとやばそうだね」
アルゴはそう呟いた。
二人いたはずのアルゴはもういない。
いつのまにか動き、いつのまに破壊したのか。
動きが一切見えなかった。
「どうすればいい?」
俺がそういうと、アルゴは少し考える。
「まぁ。抑え込むから大丈夫大丈夫! あーし神様だし!」
そう言ってアルゴは俺たちの前に立つ。
「さて・・・久々に戦っちゃおうかなぁ。 クソガキ・・・ううん。 クロークス・・・」
アルゴはそう呟いて拳を構える。
意外だ、彼女は格闘で戦うタイプには見えないが・・・。
「クロークス・・・痛い目見ても泣くんじゃないよ?」
アルゴは小刻みに飛びながら爪先で白い地面を叩く。
「さぁ!始めようかぁ!」
その声と同時に、世界が構築される。
岩や砂が視界に広がる。
神は理から外れ、力を行使する。
これから始まるのは、神と人間の一騎討ちだ。




