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クロークスはゆっくりと立ち上がり、彼女を見つめる。
「冥府に入る方法は?」
「わかりません」
クロークスは彼女にそう問うと、彼女は首を横に振った。
「なんで彼女に聞く?」
俺はクロークスに言った。
「姉貴は馬鹿じゃない。 冒険者をしていた時もそこそこ優秀だったと聞いた。傷を負った状態でここにきて、何もせずに死んだ? ありえない。何かしたらの目的があってきたんだ・・・」
そう言ってクロークスは考え始める。
ドールミストに来る理由は一つしかない。
「お姉さんもクロークスが死んだと思っていた?または死んでるかと思って確かめようとした?・・・お姉さんの目的も冥府に行く事か・・・」
そう呟くとクロークスは頷いた。
確かに、ありえない話じゃない。
「となると・・・何かを調べているはずだ。自身の死が目前に迫っていても、俺が中に入れる情報を見つけ出すはずだ」
クロークスはそう話しながら再度遺体のあるの建物にズカズカと入る。
棚に並んでいる本や、街クエの上にある本に目を通す。
「冥府に入る方法・・・死者しか入れないなら・・・」
クロークスはそう言いながら埃の被った本を漁る。
その姿を見つめ、俺たちも考える。
世界の理の壁は越えられない。
生きている人間は死んではいない。
死者しか入れないなら入る術はない・・・
仮死状態なら・・・
いや、リスクがデカすぎる。
仮死のつもりがそのまま逝くんじゃ意味がない。
「クロークス。 死者の世界に行く方法はないんじゃないか?」
「・・・なに?」
俺の言葉にクロークスが目を細める。
「死者しか入れない。通り道がないんだろう?仮死状態なら可能性はあるかもしれないと思ったが、俺たちには狙って引き起こすだけの能力がない」
「必ずあるはずだ。姉貴は螺旋の霧を越えた。俺たちも越えた。次は冥府に入る番だ」
彼はそう言ってまた机を見る。
「人は毎日死んでる。 死者に会いたいやつなんて数えられないほど大勢いるはずだ。でも、冥府に入る方法は見つからない。 ないからじゃないのか?」
俺はそういうが、クロークスは机の上の本を読んで、積む。
何段にも重なった本が、彼の真剣さを物語る。
「クロークス・・・」
「うるせぇなぁ!!」
名前を呼ぶと、彼は怒鳴り、積んであった本の塔を薙ぎ倒す。
「このために旅を続けた!このためにここまで来た!今更諦めらんねぇよ!」
クロークスの悲痛な叫びが反響し、響き渡る。
「そうよなぁ。マジ諦めらんないっしょ・・・!人間て、やっぱりそうじゃなきゃダメっしょ!」
瞬間、背後から声が聞こえて振り返る。
気配を一切感じなかった。
軽く砕けた口調。聞き覚えがあるが思い出せない。
視界に何かを捉える。
赤い髪に大きな胸。小柄な体の女。
「ありゃありゃありゃ。あちゃー記憶をちょっといじったから覚えてないかぁ」
女はそう言って俺に近づく。
額を人差し指でトンと叩くと、失われていた記憶が戻り、激しい頭痛が引き起こされる。
俺は頭に手を当て、しゃがみ込む。
「・・・っ」
それを見ていたクロークスが俺の身体に手を置き、口を開く。
「ダリア!どうした。何された⁉︎」
痛みからか、汗が垂れ、床に落ちる。
フィーニスは俺と赤髪の女を交互に見つめていた。
頭を抑えながら女を睨む。
「そんなに睨まないでよぉー く・そ・ガ・キ達ぃ〜」
キャピっとしながらそう言った女を知っている。
俺は一度会っている。
冥府でしっかりと話している。
たいして美味しくもない黒い液体を飲まされたのを覚えている。
「・・・冥府の神・・・アルゴ」
「あはぁ。あーしのこと思い出したぁ?」
人差し指を顎に当て、アルゴは笑って見せた。
「なんでここにいるんだ・・・」
痛む頭を抑えながらアルゴに問いかける。
「なんでって・・・冥府に来たからでしょ?」
その言葉を聞いた瞬間、周辺の景色が真っ白く変化する。
「いつのまに⁉︎」
フィーニスは驚いた様子で周囲を見て、クロークスはアルゴを見つめる。
「螺旋の霧を越える方法があるなら言ってくれれば良かったろ」
「だって聞かれなかったしぃ?結局竜人の連中が転移させたんでしょ?」
俺の問いにアルゴはそう答え、踵を返して歩き出す。
「で?ガキたちは何しにここにきたんだい?まぁ。生者が死者の国に来る時点で大体察しはつくんだけどねぇ〜」
そう言いながらアルゴは振り返り、こちらを。
具体的にはクロークスを見つめる。
見つめられたクロークスは息を漏らし、口を開く。
「ティタ。と言う名前の女性は来たか? その人と少し話がしたい」
クロークスがそういうと、アルゴはニヤリと笑った




