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彼女は寂しそうに遺体を見つめる。
「・・・魂は・・・取り返せば動きますか?」
「違う。全部必要だ。魂だけじゃ・・・まて、魂を取り返すって、博士はどうして死んだ?」
俺は彼女にそう言った。
「真っ黒い影・・・見つかって、殺されました。いいえ、正確には失血死でしょうか」
「レイド・・・」
彼女は目を細めて俺を見る。
「博士は・・・もう動きませんか?」
「あぁ。動かない。何をどうしても、動かない」
その言葉に、彼女は再度遺体を見つめ瞬きをする。
「・・・そうですか」
彼女はあっさりと受け入れ、通常通りの顔に戻る。
「あなたたちはこれからどうしますか?」
「だってよ、クロークス」
彼女の問いに、俺はクロークスを呼ぶ。
ここに来たいと言い出したのは彼だ。
だから、俺は彼に問う。
「冥府に行く。姉貴は死んでた・・・目的は変わってない」
クロークスは鼻を啜りながら、ゆっくりと立ち上がる。
「了解。冥府に行く方法を探ろう」
「あぁ・・・」
俺が言うと、力無く返事をしてフラフラと歩き出す。
「大丈夫か?クロークス」
その問いに彼は足を止める。
こちらに一切顔は見せない。
「大丈夫だ。外の空気吸ってくるわ」
彼はそう言って出て行った。
「今・・・あなたは何に対して大丈夫と声をかけたのですか?」
彼女がそう話し出した。
「人は身体を鍛えられても中身は鍛えられない」
「・・・中身・・・心ですか?」
機械の彼女はそう問い返した。
やはり、わからないか。
「そうだ」
「ですが・・・心が強い。悲しみに強い人はいます」
彼女はペンダントを拾いながら、それを握り話した。
「強くなったわけじゃない。慣れたんだ。それは強さとは違う」
そう話すと彼女は首を傾げる。
「心は強くなりませんか?」
「あぁ。強くならない。悲しみに対しては特に」
その言葉に、彼女はクロークスが出て行った方を見つめる。
そのままゆっくりと口を開いた。
「心は強くならない・・・理屈・・・ですか?」
「・・・現実だよ」
そう言って、俺たちも外に出る。
外には、地面に座り空を眺める白髪の少年がいた。
「クロークス」
俺の呼びかけに彼は何も答えなかった。
それどころか、すこしも反応がない。
今はきっと、顔を見られたくないのだろう。
肩が少し震え、空を見ていた顔は俯いてしまう。
俺はゆっくりと近づき、後ろから肩に手を添える。
「冥府に入る方法を見つけて・・・。お姉さんにちゃんと別れを言おう」
そういうと、クロークスは小さく、何度も頷いた。
「もしかしたら、レイドの情報もあるかもしれない」
「あぁ・・・」
弱々しく返事をするクロークスの肩を叩き、俺は立ち上がる。
「そうだ。影は何か言ってたか?」
俺は機械の彼女を見つめ、そう問う。すると彼女はゆっくりと頷き、口を開いた。
「はい・・・物凄く軽装でした。盗賊のような。短剣を主な武器としていました。足が早かった。恐ろしいくらいに。・・・あと、ティタ。と名乗っていました」
それを聞き、俺はクロークスを見る。
「クロークス。聞き覚えは?」
「・・・姉貴の名前だ」
確かにそう言った。




