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クロークスが彼女を睨む。
「お前・・・何人殺した⁉︎」
「殺してはいません。・・・パーツを取り外しただけです」
彼女は淡々とそう言った。
「殺してるだろ! それだけの数だ。繋ぎ合わせるためだけに何人殺した!」
「ですから、殺していません。博士も故障しているだけです。パーツが見つかれば動き出すはずです」
彼女は確かにそう言った
機械に命の概念はない。
だから、話が通じないのだ。
「何ふざけたことを言ってんだ!」
そう叫びながらクロークスが立ち上がり、遺体の横たわるベッドを強く蹴る
ガタンとベッドが揺れ、カラと高い音を立てながら遺体が少し跳ねた。
彼女はその行動に驚き、クロークスを睨む。
「何を・・・するんですか・・・」
「何したか自分で考えてみろ!」
狭い一室に重い空気が漂う。
俺は視線を逸らし、遺体を見つめた。
この博士は・・・
その時、ある事に気づく。
骨そのものにも削がれたような痕跡があるのだ、それに、つなぎ合わされた皮膚にインパクトを奪われ、骨そのものに多少の肉が残っているのに気が付かなかった。
「おい」
「なんだ!」
「違う。女の方」
俺の呟きにクロークスが反応するが、それを否定して彼女に声をかける。
「はい」
「博士はいつ死んだ?」
俺はそう質問した。
少し、ほんの少しだけ嫌な予感がする。
「1ヶ月ほど・・・もっと最近かもしれません。影の集団が現れて逃げるように博士とこの街にきました。 それが何か?」
「寒い環境で・・・この場所の環境じゃすぐには白骨化しない・・・お前・・・やったな?」
俺は彼女にそう告げた。
彼女の瞳が細くなり俺を睨む。
「ダリア!何がわかった⁉︎」
クロークスが彼女を睨んだまま俺に話す。
「こいつ。博士の皮膚や肉も削ぎ落として付け替えようとしたんだ」
瞬間、クロークスが立ち上がり彼女の胸ぐらを掴み壁に強くぶつける。
「お前まじで何やってんだよ!」
「離してください!」
彼女はパンとクロークスの腕を振り払う。
瞬間、彼女が付けていたネックレスがちぎれ、床に落ちる。
落ちたネックレスには綺麗な青い宝石が付いていた。
何かに似ているような・・・
どこまでも透き通るような青い宝石。
綺麗だ。高価なものではなさそうだが・・・かなり古い物にも見える
「・・・なんで」
突如クロークスがそう呟いた。
あぁ、そうだ。クロークスの瞳の色に似ている。
「なんで姉貴のペンダントをお前が持ってるんだ!」
瞬間、クロークスの全身に雷が纏われる。
怒りに比例するように雷の線は大きくなっていった。
「それは、博士からのお守りです!」
彼女がそう叫んだ。
クロークスの体に纏われた雷が徐々に小さくなる。
「・・・は?何言ってんだお前」
力無くクロークスが呟いた。
静寂が流れる。
俺は遺体を再度確認する。
クロークスのお姉さん?
「思い出しました。博士は弟を探していると、毎日のように言っていました。 クロークス。どこかで聞いたことのある単語。検索に時間がかかったけど、やっと見つけました」
彼女はそう言った。
「嘘だ・・・」
クロークスが彼女の服を離し、力無く座り込む。
「どうしましたか?具合が悪いですか?」
機械は情緒がないからな。仕方ない。
クロークスは肩で呼吸をする。
初めはゆっくりと深呼吸をしていたが、時間が立つにつれ呼吸が浅く、荒くなり、吐き出してしまう。
彼女はクロークスの背中を撫でながら口を開く。
「もう少し。もう少しでパーツが全て集まるんです。そうしたら、また博士は動き出します」
そう言った。
クロークスは彼女の手を振り解き、叫ぶ。
「人間は死んだらもう動かないんだよ!」
「そんなことありません。博士は、壊れたものは修理をすればまた動き出すと言っていました」
彼女は笑いながらそう言った。
俺はその2人を見ながら同情し、何より・・・憐れんだ。
「本当だ」
気づいたら俺はそう呟いていた。
「人間は壊れたら戻せない」
「博士は壊れた物は全て治ると言っていました」
彼女は寂しそうにそう話した。
「そうだな・・・人間にはその人専用のパーツがあるんだ。多少かけている分にはまだ大丈夫かもしれないが、今の博士は・・・無理だ」
俺がそういうと、彼女はゆっくりと頭を振る。
「大丈夫・・・大丈夫なはずです!きっと動き出します!」
「心臓はあるか?この人の心臓だ。 眼球は?皮膚は?内臓は?神経は?血管は?・・・・魂は?どこにやった?最初と最後・・・とくに最後のは、この人のじゃないと絶対に動かないぞ」
俺がそう話すと、彼女の視線は遺体に向く。
その視線は、機械とは思えないほど、人間らしかった。




