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ShadowSraid  作者: 鬼子
死者の楽園編
53/98

3

≪view:ダリア≫


 呼吸を整えながら瞳から光が消える彼女を見る。


 直後、フィーニスとクロークスに目を向ける。


「大丈夫か?」


 姿勢を低くしながら彼女たちに言った。


「大丈夫も何も・・・ダリアだってひどい傷じゃんか!」


「冒険者ならこれくらいは大丈夫だ」


 クロークスは俺の傷を見ながらそう言った。

 彼もかなりのダメージを受けていて、立つことすらままならないはずだ。


「まて、今ポーションを渡す・・・」


 俺はそう言ってポーチを漁る。

 だが、べチャリとした感触が纏わり付いた。


 全部割れてる・・・クソ。


「どうした?」


「ポーションが全部使えなくなった・・・」


 そう言いながら舌打ちをする。

 するとクロークスがポーションを取り出す。


「ラス1・・・フィーニスちゃんに使おう。それなら渡す」


「・・・了解」


 クロークスからポーションを受け取り、蓋を外す。

 赤等級で、回避が上手かったか・・・

 身を翻し守ったのか・・・真実が何かはわからないが、彼はたった一本のポーションをフィーニスに使うと言ってくれた。


 フィーニスの口に当て、ゆっくりと流し込む。

 ゴクリッと喉がなる音が何回か響き、フィーニスの傷がゆっくりと塞がって行く。


「・・・まて。このポーション・・・」


「そう・・・超特別なやつ〜。感謝しなよぉ?」


 クロークスはニヤニヤしながらそう言った。


 俺たちの知るポーションとは、細胞を活性化させて傷を早く治すように促す。

 とついでに鎮痛効果がある程度だ。


 だが、それもかなり高価な物で、一般人が手にする事は基本ありえない。


 今回クロークスが俺に使わせたのはポーションの中でも最上級。

 回復の術がかけられたポーションだ。

 

 基本、回復の魔法は物体・・・液体には効果を発揮しない。

 それができて仕舞えば、それは『回復』ではなく『修理』に近いためだ。

 魔法と言うのは夢はあるが、無意識に働く壁は越えられない。


 人間を修理するとは言わないだろう。


 それなのに、どこぞの誰かが回復魔法を溶け込ませたのか、このポーションには傷を塞ぐ効果がある。

 作られたのか、自然発生したのかは定かじゃない上に、現段階で見つかっているのは片手で数えられる程度・・・なぜクロークスがこれを持っている?


「いいのか?」


「あぁ。いいよ。それに、今更ダメって言っても遅いだろ」


 クロークスはニヤリと笑いながらそう言った。


 フィーニスがゆっくりと口を震わせる。


「・・・ダ・・・リア?」


「よし、意識が帰ってきたな? フィーニス。早速で悪いんだが動けるか?」


 俺がそう言うと、フィーニスはゆっくりと体を起こし、頭に手を当てながら周囲の状況を確認する。


「アイツ・・・死んだの?」


「いや・・・ヒールモード?とか言うのに入ったらしい。 博士とやらを見つけて人質にする。それでやっと勝ちだ」


 俺がそう話すと、フィーニスは倒れている彼女を一瞥してから立ち上がる。


「ありがとう・・・クロークス」


「いいってことよ」


 クロークスもフラフラとしながら立ち上がる。

 フィーニスがすぐに獣化を開始した。


「2人とも乗って。その方が早いでしょ」


 そう言われ、フィーニスの背中に乗る。


「しっかり捕まってなさいよ!」


 そう言って走り出した。


 走る事数分。

 ある家屋の前に着く。


 周囲の家屋と比べて、かなり綺麗だ。

 あの機械の彼女が手入れをしていたのだろうか。


 異常なまでの異臭と、異様な雰囲気が漂う。


「ここよ・・・」


 人の姿に戻ったフィーニスが鼻を摘みながらそう話す。


 俺は歩き出し、恐る恐る扉を開ける。

 モワッと湿気が籠ったような空気が溢れ出し、気持ち悪くなる。


 深呼吸をして家屋の中に足を踏み入れた。

 中も綺麗で、掃除はされている・・・

 だが、彼女はパーツ集めに必死だったのか細かい場所までは手が回らなかったらしい。


 部屋の隅には蜘蛛の巣や埃が溜まっている。


「博士ってのは?」


 俺がそういうと、フィーニスは奥の部屋を顎で差した。


 その部屋に入ると、異種が強くなる。

 書物の詰まったタンスに裁縫セット

 埃を被った机や、死者について描かれた本。

 ありとあらゆる物が古く、取り残されていた。



 そしてベッドには博士と思わしき人物が横たわる。


 肩まで布団がしっかりかけられてあるが・・・

 すでに白骨化していて死後何年も経っているのが容易に想像できた。


「死んでるな。かなり前に」


 クロークスがそう言って様子を伺う。

 だが、彼は首を傾げ、布団に手を伸ばした。


「・・・クロークス?何をするつもりだ」


 疑問に思い問うと、クロークスは俺を睨んだ。


「臭すぎる・・・白骨化してるのにここまで匂うものか・・・?」


 そう言ってクロークスは布団を剥がした。

 現れたのは恐ろしい光景だ。


 頭部より下は何やら布のようなもので覆われている。

 結合部に糸が見えることから、何かを繋ぎ合わせたのだろう。

 俺は背後の机に乗っていた裁縫セットを見つめる。


「ダリア・・・」


 すると、クロークスの呼びかけが耳にはいり視線を戻す。


「どうした?」


「これ・・・全部人間の皮だ・・・」


 クロークスがそう呟いた。


「本当か?」


「あぁ。それに・・・」


 クロークスは腰から採取に扱うナイフを取り出し、博士と思わしき人物の腹に突き立てる。


「クロークス!何してる⁉︎」


 俺の声は無視し、彼はそのままナイフを滑らした。


「・・・ご丁寧に内臓まで・・・狂ってるぞアイツ」


「・・・博士から離れてください」


 その瞬間、気絶・・・

 いや、ヒールモードに入っていたはずの彼女の声が響く。


 突然の出来事に心拍数が跳ね上がり、戦闘態勢に移る。


「お前・・・」


 部屋の入り口で目を光らせる彼女を見つめながらクロークスが静かに呟いた。

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