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ブォォンと空間すらも切り裂くような音を響かせながら大剣が踊る。
「パーツ?なんの話だ⁉︎」
俺は彼女が言った言葉を理解できずに問い返す。
すると、彼女はゆっくりと俺に指を差した。
「あるじゃないですか・・・パーツ。知っていますか?物は修理しないと動かないんです。修理するためにはパーツが必要なんです。博士には、パーツが足りないんです」
瞬間、大剣の一本が消え、目の前に現れる。
すでに刃はこちらを捉えていた。
短剣で受けるが、短い刀身では衝撃を吸収出来るわけもなく、足が地面を離れる。
重い金属音がドールミストの静かな街中に響き渡り、建物を破壊しながら弾き飛ばされた。
脆くなった家屋は手で押せば壊れてしまうほどだ。
どれほどの年月放置されていたのか、想像もつかない。
「クッソ・・・いって」
俺がゆっくり起き上がると、霧の中から一際大きな獣が現れる。
「ダリア!大丈夫⁉︎」
その正体はフィーニスだった。
鼻を使い、俺の体を支える。
「大丈夫。なんだあれ?」
「わからない。でも・・・生き物の匂いがしないの」
瓦礫から力強く足を抜き、首をコキコキと鳴らす。
生き物の匂いがしない・・・
だが動いていると言う事は。
「自立型人形か。初めて見た」
霧の中からゆっくりと彼女は姿を表す。
緑色の透き通った目を光らせ、俺たちを見つめた。
「パーツをください」
「だからんなもんないって!」
俺が叫んだ瞬間に剣が動き出す。
だが、俺たちを捉える前に彼女の身体が吹き飛んだ。
「マジでいてぇェェ・・・俺じゃなかったら死んでたぞ!」
「クロークス⁉︎」
彼女に攻撃を与えたのはクロークスだった。
クロークスは彼女に喰らわせた右足をピョンピョンと跳ねながら押さえる。
「あれ・・・痛い⁉︎ 蹴ったのは生物じゃないのか?」
「馬鹿、人間じゃない!機械だよ!」
痛がるクロークスにそう伝えると、彼はニヤリと笑い、雷を全身に纏う。
いつもより出力が高く、バリバリと線状の光さえ目視出来た。
はるか遠くから爆音が鳴り響き、瓦礫が巻き上がる。
大剣が浮かび上がり、彼女の姿も視界に入る。
瓦礫を踏み砕き、こちらを睨む。
「パーツをください」
勢いよく走り出し、クロークスに攻撃を仕掛けた。
爆音と共に瓦礫が高く舞い、金属音が鳴り響く。
「あれとどう戦えって言うの?」
フィーニスがそう呟いた。
機会なら命がない。
殺せる相手ではないと言う事だわ、
「フィーニス・・・博士を探せ」
「どうするつもり?」
「人質にする」
その言葉を聞いて、フィーニスの眉が少し歪んだが、状況が悪いためか、すぐに頷き走り出した。
だが、足音に彼女が気づいてしまう。
大きな大剣が一本、追走を開始する。
「させるかよ!」
俺は短剣を構えたまま、大剣の前に飛び出し防御する。
刀身を滑らせ、まだ破壊されていない家屋にぶつけた。
轟音と共に家屋が崩れ、剣が空間に吸い込まれる。
「よし」
立ち上がった瞬間、眼前に大剣が現れ、刃が振り下ろされる。
左肩から刃が滑るように食い込み、脇腹に抜ける。
衝撃で身体が飛び、血が溢れ出す。
不幸中の幸いか、食い込んだのは切先。
派手に切られたように見えるが、内臓には届いてはいなかった。
だが、その時だ。
「ダリア! 見つけた!」
フィーニスが戻ってきてしまった。
獣化の状態の彼女は鼻が聞く。
異質な匂いを嗅ぎ分け、早く見つけられたのだろう。
だが、俺の前には大剣。
その近くに現れたフィーニスに刃が振られるのは必然だった。
フィーニスの身体が舞い、血飛沫が上がる。
「フィーニスちゃん!」
「フィーニス!」
クロークスの叫びと、俺の声が混じり空に吸われる。
獣から徐々に人の姿に戻るフィーニスからは血が溢れている。
すでに動かないのか・・・?
大剣からポタポタと滴り落ちる赤い雫がタイムリミットのようにも思えた。




