14
太陽が真上にまで登り、じりじりと身体を焼く。
汗がほほをつたり、地面に落ちる。
「あっちぃぁァァァァァ!」
脳みそまで沸騰しとろけてるのか、クロークスはテンションの高い叫び声を上げる。
「うるさい!静かにしてよ!」
暑さにイライラとしたフィーニスが強く叫んだ。
瞬間、周囲に異様な空気が漂う。
それを完治したかのように、2人は戦闘態勢に移行する。
「何・・・」
「わからない・・・」
周囲を見渡しながら探るが、わからない。
まだ森の中だ。
姿は見えないが、確実に何かがいる。
それも一体二体の話じゃない。
「狩人よ。帰れ。 誰の許しを得て境界を超えている?」
突如として森の中に低い女性の声が響く。
その言葉を聞き視線を下に向けると、ナイフのようなもので線が刻まれており、その前の上には魔石のようなものがある。
「人除けの魔道具か?」
俺はクロークスに小声で聞く。
だが、小さく首を振った。わからないのか・・・
人除けとは完全に人を、生物を寄せ付けないわけじゃない。
感覚的に本能に不安感を出す魔道具だ。
すごい簡単に言うのであれば、深夜に街灯が一つもない細道に足を踏み入れるような。そんな不安を強制的に放出させる精神攻撃系の魔道具だ。
つまり、なんか行きたくないな・・・と言う無意識の不安を炙り出す。
だから、絶対に進む。止まれないと言う確固たる意思がある生物には効果はない。
「再度問う。誰の許しを得て境界を跨いでいる?」
その言葉に俺はゆっくりと短剣に手を伸ばす。
「戦うつもりはない。ウィングロストの竜人と話がしたい。危害を加えるつもりはない」
そう言ってみるが、警戒は解かれない。
「目的を話せ」
「竜人と話したい。螺旋の霧と最近現れた影について聞きたい」
すると数秒後、木々が揺れ奇妙な集団が現れた。
体には竜のような鱗がびっしりとあり、背中には小さな翼が、シルエットだけ見れば完全に人間だ。
違う場所と言えば、翼があり、鱗がある点だけだ。身につけている衣服やアクセサリーも人間が扱うようなものばかりだ。
青い鱗を体にびっしりと生やした女が姿を表す。太い尻尾がゆらゆらと揺れ、竜なのだと再認識する。
「我々も襲われた身だ。協力しよう」
そう言って彼女はこちらに来る。
次々と現れ、最終的には30人ほどだ。
「あまり構えないでくれ。我々も気が立っていた。謝るよ」
竜人の女は優しく笑ってそう言った。
短剣に伸ばしていた手を戻し、クロークスとフィーニスに視線を送る。
「着いてきてくれ、ウィングロストはすぐそこだ」
そう言われ女性についていくと、言葉通り森からすぐに抜け開けた場所に出た。
「ギラ! それは誰だ⁉︎」
村の中から緑の鱗を生やした男がこちらに大きくてを振る。
青い鱗を生やした彼女は、どうやらギラと言う名前らしい。
ギラは男に大きく手を振り、口を開く。
「久々の客人だ!失礼のないように頼むぞ!」
そう言っていた。
俺たちは街の中で一番でかい屋敷に招待され、客室でギラと会話をする。
「座ってくれ」
そう言われ、長いソファに腰をかける。
「紹介が遅れたな。私はギラ。街のみんなを取りまとめている者だ」
そう言って足を組み出す。
「俺はダリア。それと、フィーニスとクロークスだ」
その紹介にフィーニスたちは軽く会釈をする。
〜地に落ちた島 ウィングロスト〜
「どこの町もかなり気が立っていると聞いた・・・特にウィングロストは余所者を受け付けないとも。かなり話が違うな?」
「あぁ、それは古い連中だ。私たちは竜人で知識は豊富だが、知識しかない。戦えないから他者を避けるが・・・影が現れてからはそうも言えない」
ギラは溜息を漏らしながらそう話した。
「・・・戦えない?」
「私たちは冒険者にはなれないんだ。だから寵愛を受けることは出来ない」
理由はわからないが、戦えない。または戦闘力が低いことは十分に理解した。
「さて、聞きたいことは何かな?」
「螺旋の霧の越え方を知りたい」
俺がそう言うと、ギラは少し考える。
「冥府のクソ、アルゴからの招待状は持っているか?」
「クソ?」
そういうと、ギラはゆっくりと立ち上がり、少し離れた机にあるティーポットを手に取り、何かをカップに注ぎ始めた。
「冥府と言うか・・・神は大抵クソだ」
「何かあったのか?」
機嫌悪そうに話すギラ。
その理由が気になり、俺は問い返す。
「何かあった・・・か。 あったと言えばあったし・・・君たちも現在進行形で騙されてるとしたら?」
紅茶を啜りながらギラはそう言った。
そこで話し始めたのはクロークスだ。
「待ってくれよ。恩恵を授け、人間の生活を助けてるのは神だろ」
「寵愛はどれも協力だ。起死回生のチャンス。仲間を助けられるかもしれない。 何かを成し、現状を変える。強大な寵愛は、大気を揺らし、分子を操る・・・世界のルールそのものを捻じ曲げてしまうような寵愛・・・君たちで言うところの恩恵が、代償無しに使えるとでも?」
ギラはティーカップをおいてそう言った。
その声は一段と低く、狭い部屋に響いた。




